●はじめに

 

前回、口臭と舌の汚れ(舌苔)についてお話しました。
  第3回は、お口の細菌の増加(口臭のもと)が全身へどのような影響を及ぼすのか、特に高齢者の肺炎とどのような関連があるかについても触れながら、「高齢者の口腔ケア」を解説します。
  高齢者の身体機能や口腔の特徴を理解し、正しい口腔ケアの方法を身につけましょう。


≪高齢者と肺炎≫

  日本ではなんと肺炎が、死亡原因の第4番目であることは意外に知られていないのではないでしょうか?    特に65歳以 上の方では、トップを占める感染症なのです。
  就寝中、嚥下反射は低下しているため、知らない間にお口や咽頭の細菌が肺へ吸引されやすく.なります。  一般的には、気道などの毛の働 きで排除されたり、気管支や肺に細菌が入り込んでもマクロ ファージなどに食べられてしまいます。
  ところが、高齢者や手術後で体力の低下のため感染に対して防御能力が落ちた場合、 細菌は肺で増殖してしまいます。

  また、食べ物をうまく飲み込めない場合は、胃液が逆流したり食べ物のかすそのものが異物となって肺炎をおこしてしまいます。
  また老人性肺炎の原因菌を調べてみると、歯周病の原因細菌であることが多いのです。
  したがって、口腔清掃が良くないと肺炎を発症する確率はきわめて高くなるのです。
  さらに、これらの細菌は咽頭の粘膜を保護している蛋白質を分解する酵素をつくるため、風邪のウイルスの浸入をしやすくします。

次のページへ
(1/5)