●口腔ケア Q&A

在宅で口腔ケアをするときの注意事項を教えてください。
要介護者に対して愛情を感じる人なら、どんな形でもやってあげることはプラスであると思います。それは口腔のさまざまな機能の一つに感覚器としての機能があり、単に刺激を与えるだけでも意味があるからです。
しかし一般の方が熱心のあまり、要介護者に痛みなど苦痛を与えていることも少なくないようです。やはり、定期的に歯科スタッフによる確認をしてもらうことも必要ではないでしょうか。
在宅で介護を担当される方には、お口を見ることに慣れていただき、次の項目に注
意して行っていただきたいと思います。
※ 口腔ケアを行う場合、感染予防の観点から必ずゴム手袋をすることが望ましい。 
(1) 歯の破折、歯肉の腫れ、出血、膿
(2) 口腔粘膜の傷、口内炎
(3) 口腔の乾燥の程度
(4) 舌苔の状態
(5) 義歯にかかわる痛みなど
(6) 食事の量や味覚、嚥下の状態
   
口内炎が頻繁にできます。その時の口腔ケアは?

口内炎について適確に対処することは歯科医にとっても簡単なことではありません。口内炎は細菌、真菌、ウイルスなどの感染やその他の感染症以外の薬物、アレルギー、白血病、放射線などによってもおこります。対処する方法がそれぞれ原因により異なる場合もありますが、いずれの場合も口腔を清潔にすることが最も重要です。
その際、清拭に用いる薬剤が冷たいと疼痛を強く与えてしまうため、体温に近い温度に暖ためた刺激の少ない薬剤などを、スポンジブラシなどに含ませて清拭をすることがケアの中心になります。
ただし強酸性水を使用するときには、暖めすぎると(40度以上)塩素が分解して消毒効果が失われてしまいますので、温度には注意が必要です。
頻繁に口内炎が生じる場合は医療処置として対処する必要があります。

   
PEGで代替栄養をとっています。口腔からはなにも摂っていないのですが、口腔ケアの必要がありますか?
口腔を経ずに栄養を補給しているため口腔ケアは忘れがちになりますが、口腔の清潔を保ち肺炎のリスクを低下させることと、経口摂取の再開の準備のため、またコミュニケーシ ョン手段としての機能維持が主な目的になります。
特徴としては食物との摩擦がなく唾液の分泌が少ない為、舌の汚れが目立ちます。抗菌剤配合のリンスなどで湿らせながら舌苔の除去を中心にケアして下さい。
   
いつも歯を食いしばっているのですが、口を開かせるコツがあったら教えてください。

<開口したくない場合>
拒否行動や過敏反応の場合が多いようです。日常の気管内吸引や口腔内は吸引によって痛みや違和感を強くかんじていることが、原因と考えられます。
口腔ケアや日常の場面で、強い接触痛や違和感を与えないようにするため、ガーゼバイトブロックなどを使います。
<開口できない場合>
顎の関節の異常などで開口できない場合には、最小限の開口位で口腔ケアが出来るようくうふしましょう。小さな歯ブラシなどを使用すれば、基本的に1センチ程度の隙間の確保で口腔ケアは可能になります。

   
往診してくださる歯医者さんを捜すには、どこに問い合わせたらいいのでしょうか?
各地区の歯科医師会(市役所や区役所でも対応してくれます)へ問い合わせて下さい。最近では、ほとんどの地区で対応してくれます。しかし歯科医の口腔ケアに対する取り組み方はかなり個人差があります。

 

口腔内は細菌的に本当に汚れやすいところなのです。歯科医はどうしても局所的なものに目をむけすぎていて全身と口腔細菌という認識が少なかったようです。
  今後はPEGなどの医療の安全な施行のためにも、「口腔環境を整えることは歯科スタッフの責任である」という考え方をしなくてはいけませんね!
 

●参考文献
L Flores-de-Jacoby, L,Tsalikis :アトラス歯周病の細菌学 .1998クインテッセンス
丸山 美津子、岸本 裕充、黒岩 恭子、他:最新口腔ケア.2001.照林社
南雲 正男 :口内炎 口腔乾燥症の正しい口腔ケア. 2001.医薬ジャーナル
斎藤 厚:嚥下性肺炎の起炎微生物と治療対策. 2001,日本障害者歯科学会誌
町頭 三保,他:強酸性電解水の口臭抑制効果 1999,日本歯周病学会誌
生田 図南:カンジダ除菌で歯周病が治る.2001,デンタルフロンティア
中道 敦子:糖尿病と歯周疾患.2000,デンタルハイジーン
柿木 保明:臨床オーラルケア.2000日総研
竹邊 千恵美,石米温代:全人医療に取り組む歯科衛生士を育てる1998デンタルハイジーン