経腸栄養剤マップ

福井県立病院 内科医長・NST Chairman 栗山 とよ子
  
経腸栄養剤マップ V1.33現在市販されている主な経腸栄養剤を、横軸にカロリー密度(kcal/ml)、縦軸に蛋白含有量(g/100kcal) 順に配置しました。個々の患者の必要熱量・蛋白量・水分量に適した経腸栄養剤の選択にご活用ください。 ツインライン ペプタメンスタンダード 明治インスロー ディムス リソースグルコパル レナジーbit リーナレンLP リーナレンMP リーナレンD インパクト 明治メイン アイソカル2kNEO ヘパスII アイソカル1k アイソカルBAG2K カームソリッド アイソカルサポート 明治YHフローレ PGソフトエース 明治メイグット 明治メイフロー リソースペムパル PGソフトEJ ラコール CZ-Hi アイソカル プラス EX ハイネゼリー ハイネ ヘパスII レナジーU ラコールNF配合経腸用半固形剤

 経腸栄養剤は、消化吸収の窒素源の形態によって成分栄養剤消化態栄養剤半消化態栄養剤に、また取り扱い形式からは医薬品と食品に分けられます。


 成分栄養剤は、窒素源がアミノ酸のみで構成され、ほとんど消化を必要とせずすべての成分が化学的に明確な組成からなっています。製品によっては脂肪の含有量が極めて低いため、2週間以上単独で使用する場合は必須脂肪酸欠乏予防のために経静脈的に脂肪乳剤を投与する必要があります。


 半消化態栄養剤は現在100種類を越える製品が医薬品・食品として発売されており、患者に合わせた選択が比較的可能です。栄養学的にもバランス・栄養価ともに優れており、消化機能に問題がなければこれを選択すべきです。

 また、病態別栄養剤として、糖尿病、腎疾患、肝疾患、呼吸不全に対応したものや免疫賦活栄養剤(高度侵襲期や低栄養患者の術前・術後に投与)が市販され、さらに蛋白質・食物繊維・ビタミン・微量元素などの含有量を強化したもの、脂質の組成を工夫したものなど特徴を持たせた栄養剤が各種発売されています。


 選択に当たってまず対象症例の消化・吸収能を評価し、不十分であれば成分栄養あるいは消化態栄養剤を選択します。消化吸収能に問題が無ければ半消化態栄養剤を選択しますが、次に特殊な病態別栄養剤を使用すべき病態か否かを判断します。但し、必ずしも診断名に則した栄養剤を処方する必要は無く、かえって一般的な半消化体栄養剤の方が栄養改善のために有利なこともありますので個々の状態で選択します。

 次に水分制限の必要性の有無を確認します。一般に1kcal/mlに調整され、水分含有量は80~85%ですが、心不全や閉塞性換気障害患者など、水分制限が必要か注入量を増やしたくない場合は1.5~2.0kcal/mlに調節されたものを選択します。さらに蛋白含有量の多少を選択します。一般的な半消化体栄養剤にはカロリー比として12~22%(3~5.5g/100kcal)の蛋白質を含有し、個々の栄養状態・代謝亢進の程度にあわせたものを選択することができます。

 なお、1,000kcal以下の投与では、エネルギー・蛋白必要量は必要量を充足していても微量元素・ビタミンが必要量を満たさず、長期化すると欠乏症を引き起こす可能性があるため、これらを強化した栄養剤を使用するなど注意が必要です。


 半固形栄養剤は、特に誤嚥性肺炎防止や褥瘡の発症・悪化防止に有用であり、さらにボーラス投与が可能なため介護者の負担軽減にもつながります。現在数社より粘性・物性の異なる半固形栄養剤が発売されています。性質上、投与には20Fr.以上のチューブ径が必要です。