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特別寄稿(2001.10.23)

「脳血管障害について」

中国労災病院脳神経外科
三原 千惠(旧姓:山中 千惠)


1.脳血管障害とは

脳血管障害には、表1に示すように多くのものがありますが、一般的によく知られているのは「脳卒中」という言葉だと思います。「卒中」とは、もともと古い中国の言葉で、「突然意識を失って倒れること」をさし、脳に原因がある場合を「脳卒中」というようになりました。
実際には、突然起こる脳血管障害のことで、出血性病変と梗塞性病変があります。

表1:主な脳血管障害
出血性病変
1)クモ膜下出血(脳動脈瘤破裂、脳動静脈奇形など)
2)脳内出血(高血圧性脳内出血、脳室内出血、など)
閉塞性病変
1)脳血栓(動脈硬化性)
2)脳塞栓(心原性、頚部頚動脈病変など)
その他
1)もやもや病
2)血管奇形(海綿状血管腫、静脈性血管腫など)
3)特発性頚動脈海綿静脈洞瘻
4)その他(硬膜動静脈奇形など)


1)出血性病変
  代表的なものはクモ膜下出血と高血圧性脳内出血で、いずれも重症例では死に至ることがあったり、遷延性意識障害(植物状態)や片麻痺(半身不随)などの重篤な神経の後遺症を残す深刻な病態です。

  クモ膜下出血の多くは、脳動脈瘤の破裂で起こりますが、脳動脈瘤自体はほとんど症状がなく、破裂して初めてその存在がわかるという恐ろしい病気です。図1はクモ膜下出血のCT写真で、白く5角形に写っているところがクモ膜下出血下腔の出血です。図2は脳動脈瘤の血管撮影で、血管の間に瘤状に膨れているのが脳動脈瘤です。脳動脈瘤ができるはっきりとした原因は不明ですが、日本人に多い点やクモ膜下出血の家族歴がある人に多い点から、これらの先天的な要因に、喫煙や・高血圧・ストレスといった後天的な要因が加わって起こるといわれています。最近わが国では、「脳ドック」といって、健康なうちにMR検査を行い脳動脈瘤を発見し、破裂する前に治療するシステムが普及しています。

  高血圧性脳内出血は、名前のとおり高血圧のある人に多く、長期間の高血圧が血管の動脈硬化性病変を起こし、ある時細い血管が破綻するために起こると考えられています。したがって、予防のためには普段の血圧管理がと大変重要であるといえます。図3は高血圧性脳内出血の代表的なCT画像で、脳の中に出血した部分が白く写っています。


図1
図2
図3
クモ膜下出血のCT写真
脳動脈瘤の血管撮影
高血圧性脳内出血のCT画像



2)閉塞性病変
一般的には「脳梗塞」として知られていますが、脳血栓と脳塞栓があります。図4のCT写真で、脳の黒くなっている部分が脳梗塞の部分です。
 脳血栓とは、動脈硬化性病変に基づく細い血管の閉塞で、生命の危険や意識障害を伴うことは少なく、片麻痺や失語症などの神経症状を呈するもので、通常「脳梗塞」といわれるものの多くはこの脳血栓です。原因の多くが動脈硬化なので、歳をとること(加齢)、生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症など)、生活習慣(飲酒・喫煙・運動不足・ストレスなど)が、動脈硬化を進める危険因子ということになります。

  一方、脳塞栓は、脳の太い血管(主幹動脈)が閉塞することによって、広範囲の脳が障害を受けるもので、原因の多くは心臓の不整脈や頚部の頚動脈狭窄などからの血栓がとんで、脳の主幹脳動脈が閉塞することといわれています。広範囲な脳浮腫や出血性脳梗塞を引き起こすことが多く、死亡や遷延性意識障害の危険性が非常に高いものです。予防するには不整脈の治療や、頚部頚動脈の検査(超音波検査やMR検査)を受ける必要があります。

図4
脳梗塞ののCT写真

 

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