患者と医療者のための情報誌「PDN通信」第65号のご案内
PDN通信第65号 編集後記 PDN理事長 鈴木 裕
胃ろうが社会問題として認識されるようになってから約10年が経過しました。過去を振り返ると、生命をできるだけ長く延ばすことが医療の最大の目的でした。確かに1950年代は平均寿命が50代だったのですから、命を延ばすことを最重要視したのは頷けます。しかし、昨今では平均寿命は男性80歳、女性85歳を超えました。医学や医療技術の進歩が平均寿命を延ばしたのは疑う余地はありませんが、同時に今までになかった新しい考え方、すなわち生命の質や自己決定などを考える学問、生命倫理学が胎動してきたのは自然の流れのような気がします。
丸山先生の“今、再びPEGの適応を問う”は、胃ろうに纏わるもやもや感を払拭してくれる内容でした。そもそも、胃ろうの良し悪しを議論するのに、病気や重症度を考慮しないのは問題外です。生命倫理はしっかりとした医療に裏付けられているのが前提です。
患者さんの佐藤弘二さんの“生きることを決心した日”は読み応えがありました。患者さんの葛藤と心の叫びは、私たち医療従事者は肝に銘じなければなりません。
私の尊敬する岡田先生の“地域のみんな(多職種)で支える在宅胃ろう患者”も共感しました。地域包括ケアシステムの構築なしで、在宅医療は語れません。
藤本先生の“「咀嚼」と「嚥下」の両方に関わる歯科医の新しい取り組み”も目から鱗です。“モノを食べるという当たり前のことが、医療界で見直されています”この当たり前のことが議論されていること自体が、何とも不思議で時代を反映しているように思われます。また、リハ栄養の白石さんの記事も興味深い内容でした。“経口摂取は、最良の栄養療法”、その通りですネ。
高山先生は、臨床医と数学者のふたつの顔を持った珍しい医師です。“命の話をしよう 将来の日本を見据えた看取り”は、そんなに遠くない将来、日本の大きなテーマとなっていることでしょう。
大井先生の“「まだ食べられる時期」は貴重な時間”も考えさせられる内容でした。人は必ず死を迎えます。その絶対避けられない事実への心構えを学んだような気がします。
三村先生、長谷先生、大場さん、溝川さんの記事も大変興味深く読ませていただきました。紙面の関係からコメントできないのが残念です。
最後に、大津さんの、“介護職員でも医療行為を行うことができる”は是非、医療者に読んでいただきたいです。知っているようで知らない内容です。大津さんは(年齢は近いのですが)、母のような存在です。記事に大津さんのお人柄が伺われます。
今回の65号の内容は、本当に読み応えがありました。執筆者の先生方に感謝いたします。
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