患者と医療者のための情報誌「PDN通信」第69号のご案内
PDN通信第69号 編集後記 PDN理事長 鈴木 裕
巻頭言で秋山先生が強調された「次世代医療は、市民参加型医療であると提言します」に私も共感します。平成23年に日本老年医学会のステイトメント「高齢者の摂食嚥下障害に対する人工的な水分・栄養補給法の導入をめぐる意思決定プロセスの整備とガイドライン作成」は、国民を巻き込んで高齢者の生き方、死に方を考える日本の医療の分岐点に係わったように思われます。胃瘻は正しく使われれば、日本においては他の栄養補給法(経鼻胃管からの経腸栄養や高カロリー輸液)に比べて患者さんの全身状態を改善し、ご家族の負担や医療費を軽減します。しかし、患者さんを幸せにしているかどうかはよく分からないのが現実です。少なくとも高齢者医療には、従来の生存率や医療費だけで議論できない時代に突入したのです。
私は予てより胃瘻の適応を議論するには、疾患とその重症度を考慮すべきと主張してきました。癌医療に当てはめれば、白血病と膵臓癌を同じ尺度で適応の議論はしません。アルツハイマーの末期と改善の見込みのある脳溢血を同じに考える人もいないはずです。早期癌と進行癌も同様です。胃瘻の適応を考える時、少なくとも疾患とその重症度を考慮しなければ正しい議論ができないのです。今回、小川先生にアルツハイマー病を病期に照らし合わせて適応を議論して頂きました。今後、NPO法人PDNは、PEG在宅医療学会と連携して、疾患とその重症度を考慮した胃瘻の適応を模索したいと考えています。
胃瘻は、ただ単なる栄養ルートではなく、栄養学的、経済学的、生命倫理的な問題を常に考え、患者さんやご家族にも医療チームとして参画する次世代医療の始まりの狼煙なのかもしれません。
最後に、執筆の先生方の読み応えのある原稿、ありがとうございました。
定期購読について
バックナンバーや単品購入をご希望のお客様は、メールにて直接お問い合わせ下さい。
※現在公開中のPDN通信は、創刊号~第10号まで。順次追加していく予定です。