患者と医療者のための情報誌「PDN通信」第83号のご案内
PDN通信第83号 編集後記 PDN理事長 鈴木 裕
フランスのマクロン大統領は4月3日、安楽死や自殺ほう助などを含めた終末医療の在り方に関する法案を今年夏ごろまでにまとめるよう政府に要請した。ヨーロッパではオランダ、スペインなどが安楽死を合法化し、スイスは自殺ほう助を認める一方、フランスでは患者の意思を尊重して延命治療を止める「尊厳死」のみが認められている。われわれは、国や州で見解が大きく異なる内容に対して、欧米という大きな範疇で一括りにして議論する傾向がある。今回、取りあげた小児の栄養に関しても、イギリスの英国小児勅許学会ガイドライン『小児の生命維持治療を差し控えること、または中止すること』の意義とその分析で、栄養補給およびその他の治療は、その植物状態が永続的と考えられる患者においては、中止することができるとある。この一文のみを取りあげれば、イギリスでは高齢者と同様に小児の治療の差し控えや中止が日常的に行われていると勘違いしてしまう。結論に至るまでのプロセスが端折られて一部を強調することは極めて危険である。われわれ日本人は、長い間欧米の医療を参考にしてきたが、都合の良い一部を抜粋して欧米ではと議論することは危険である。欧米においては高齢者に胃瘻の適応はないとか、子供の延命も行わないなどといった偏った議論は是非とも避けなければならない。日本の将来と文化を十分に考慮した日本の生命倫理を模索することが望まれる。
(2023年4月24日発行)
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※現在公開中のPDN通信は、創刊号~第10号まで。順次追加していく予定です。
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