今回のセミナーのテーマは“胃ろうの適応を考える”ことでした。
「グループワーキング」ではまず参加者の皆さんに「NST検討会」を模擬体験していただきました。1グループ 7~8名程度の施設も職種もばらばらの小グループに分かれていただき、高齢で嚥下障害のある症例に対して栄養状態と嚥下機能の評価を実施して適切な栄養投与の方法を検討し、胃ろうの適否(適応)についてグループでディスカッションしました。各グループにはファシリテーターがついていましたが、グループによってはファシリテーターそっちのけで活発な意見交換が繰り広げられるなど、真剣に患者さんのQOLを維持する方法を考えていました。NST活動を初めて経験される方もおられましたが、セミナー後のアンケートでは他施設や他職種の意見や考え方を直接聞くことができてとても良かったとの感想が多数あり、非常に有意義な時間となりました。
「特別講演」ではPDN理事長の鈴木裕先生に「日本人の死生観を問う」と題して終末期医療において今、何が問題で、何を議論し考えていかなければならないのかという非常に難しいテーマを、穏やかな口調で、そしてやさしくかみくだいてお話ししていただきました。食べられなくなったときに胃ろうにするかしないかその適応を考えるということは、AHN(Artificial Hydration and Nutrition:人工的水分・栄養補充法)を行うのか行わないのか、すなわち「死を選択するのか?それとも生きるのか?」ということを議論することになるのですが、今の日本人はそのことに危機感を抱いていないことが問題であるとご指摘されました。参加者の皆さんが真剣に考えられるあまり会場の雰囲気が重く厳かな感じになるときもありましたが、鈴木先生のやさしい語りかけるようなお言葉は、出口の見えないトンネルの中であっても進むべき道に導いてくださっているような印象であり、一筋の明るい光が見えたような気持ちになりました。
これからも胃ろうという有用なツールを上手に使用して、たとえ終末期にあっても患者さんが幸せに過ごせるように、真剣に考え真摯に接していこうという気持ちを新たにした充実したセミナーとなりました。