今年で4回目となる当院の公開講座は、昨年の記録的な集中豪雨に続き、今年は、台風4号の影響で数日前から突風と雷雨に見舞われました。講師の先生方(綿谷先生は予定より1日繰り上げて、東口先生は前日、唯一欠航とならなかった1便の飛行機での大分入り)の足に影響があり、開催をも危ぶまれましたが、当日は、晴天となり、参加者400名を迎え無事に終了することができました。
今年のテーマは「NSTとPEG ~口腔ケアから栄養まで~」でした。
これまでの公開講座で「PEGは足の不自由な方の車椅子同様、装具である」事が周知されたため、今回の講演内容はさらに発展形でお願いしました。
講師の綿谷修一先生は、歯科医師かつ日本が誇る訪問口腔ケアの第一人者であり、在宅口腔ケアのみならず病院のICU(集中治療室)に至るまでの歯科訪問を29年継続され、在宅NST研究会の重鎮といわれています。
講演では、長年在宅で口腔ケア、歯科治療を行った経験で得た情報や工夫が盛りだくさんでした。自宅や他院における訪問治療で、歯科医師である綿谷先生が、歯科治療に重ねて、口腔ケア、摂食機能療法を行われており、口の中の専門家が、直接アドバイスをするシステムは、嚥下性肺炎の予防や嚥下摂食機能訓練や栄養サポートの上でとても重要であり、理想だと感じました。さらに嚥下訓練は摂食のみならず脳の活性化から内臓の機能亢進までが期待できるそうです。また、症状別口腔ケアの実践や先生自ら100円ショップに出向かれ、作成された症状別の歯ブラシや口腔ケアグッズの数々は、会場を沸かせ、「もっと聴きたかった」という意見が多くありました。
東口髙志先生はNHKスペシャルでもご存知のように米国のNSTを日本に導入し普及させた先駆者で数多くの著書でも有名です。 講演では、終末期を迎えた患者様の現状では、本来の病気で亡くなる方は少なく、多くは栄養トラブル(栄養不良や嚥下性の肺炎)で亡くなっていることをお話しされました。
「癌の患者様は癌で看取る。栄養不良状態やトラブルでは看取らない。」「栄養不良状態を一気に立ち上げ、悪液質になったら“ギアチェンジ”して適切な栄養投与とする。」等、ダイレクトに心に響く言葉がたくさんありました。
終末期を迎えた患者様が笑顔で苦痛も少なく過ごすために、口から食べられること、口腔ケアを充実し、嚥下性肺炎にならないことは特に重要だと感じました。スライドに登場した“緩和ケアコミニュティドーム”等で過ごす患者様は、みな笑顔で素敵でした。
綿谷先生と東口先生とのコラボレーションは今回が初めてで、お互いに初対面ということでしたが、東口先生が、数十年前、在宅での栄養サポートの取り組みを始めた時に、在宅での口腔ケアの指標がなく、参考にするために集めた資料が、綿谷先生のものだったということを公演中に気づいたそうです。
「口から始まる栄養サポート」、この根底に「患者様が、良くなること、望むことは何でもしてあげたい」という情熱が共にあり、医師や歯科医師やあらゆる職種を超えて、全て繋がっていくということを感じました。
ご講演の綿谷修一先生、東口髙志先生、参加して下さった皆様、協力していただいたメーカー、業者の方々に感謝致します。
第4回公開講座の模様及び各先生へのご質問の回答は、
大分健生病院ホームページでもお知らせする予定です。