PEGの交換 |
「交換には車椅子でどうぞ!」とのM医師の言葉だったが、介護や体力的なことも考え、寝台車を予約した。いざ、当日となり、運転士が押して来たストレッチャーの高さに困惑。リクライニングも上下もできないため、危うく妻の腰を痛めるところだ。母に向かい側から支えてもらってなんとか乗った。母には吸引機(充電式)、付属するチューブをまとめたもの、友達には尿器、タオルケットなどを手にしてもらう。妻に、ストレッチャーの上で、アンビューバックを押してもらいつつ、寝台車に乗るとまるで緊急事態。妙に心臓の鼓動が早くなる。 またもや、胃カメラを食べなければならない。うまくごちそうさまと言えるだろうか とても不安だ。あっという間に高松赤十字病院へ到着すると、訪問に来てくれている部の看護師長さんと看護師さんが出迎えてくれた。エレベーターを待つ間もなく、内視鏡室へ入るとM医師が声をかけてくれた。「さて交換頑張ろうな。ストレッチャーのままでかまんけん」モニターと処置台の間に乗り入れると、内視鏡担当のI医師は、高さを合わせるため、それとなく、箱の上に立ってくれた。口を開けると微妙な光を放ちながら、胃カメラが入ってきた。 はじめは口の中でもごもごしていたが I医師の「タイミング会わせられるかなぁ」との言葉に反応してごっくんしたら自分でも驚くほど調子よくするすると入り、気がついたらPEGの交換は終わっていた。M医師曰く「すごく上手やった。5分で済んだよ。」キシロカイン味の痰が口と気管に溢れ、言葉にはできなかった。妻に吸引してもらいながらぼくはただ頷いた。 PEGの交換は痛みもなく、周囲から見たほど暴力的ではない。喉のカニューレと変わらない。ただ、不器用なぼくにとって、胃カメラは辛い。その夜 ラコールを注入しながら初めての一日を振り返った。もっと楽な方法で位置確認ができるといいのに…。もう少し胃カメラが細ければ…。いや、PDNの談話室でどなたかが発言していたように、PEGからカメラが入るのなら楽かも。在宅でも交換が楽にできる社会システムがあるのなら…etc. いろんなアイディアが浮かぶものの、残念ながら研究開発をするパワーは一個人であるぼくにはない。ただ、医療の進歩を願い、勇気ある業者や病院、現場スタッフたちの活躍を祈ること、患者として受けた恩恵を社会に伝えていくことしかない。 |
施術者:泉 岳志35歳(筆者:患者本人)
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