飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる175

京都府 飛田洋さん(74歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

 ■ハンサ・無責任/二行きめるの《個人のペグ》


 梅雨が明け、下旬に入りPCに向い、取りかかる事になった。

以前から、一行何文字か、質問しているのに、未だ回答がない。

数か月は試行錯誤で書いて来た。七五語調で書き慣れた作詞
ぶん句(二行詞)と違い、苦手な文章に四苦八苦しながら挑んで
来た。最近戦意喪失と云うか、やる気が失せ厄介な意欲喪失
だ。


 とりあえずペグについての個人情報で、お茶を濁す事にする。

そう云えば、おなじみのペグ交換が今月辺りでなかろうか?

 17年前、手術後、ペグでない時代の栄養補給は点滴だった。

ところが一度、点滴針を抜くとナース泣かせの細い血管で何人か
失敗すると医師が駆けつける有様、何だかんだと家族で話したの
であろう。その頃の私は、声が出せないから、聞こえぬ、意思伝達
不能と処理されていた。そのくせ、説明を受けてたのか不明だが
初めての胃カメラに悪戦苦闘中、一報でペグの取付が気の付か
ぬ間に完了していた。病室に戻ってからも、体のどこかに何か袋が
取り付けられたと思ってた。何日目かに防水シールを腹に貼られ、
風呂に誘導されたときは驚いた。何の説明も私になかったからだ。


 ボタン式のペグだと知ったのは自宅療養に入り、交換の後
現物で主治医が構造説明されたので随分疑問が解明された。

お蔭様で入院中は二時間おきに床ずれ防止に体位交換だったが
今は一切せず、咽た弾みに便乗して自分の意思で大きくバウンド
少し左右にずれるぐらいで、現在はほとんど上を見上げ寝ている。

 去年の暑さで、背中一面に汗疹が広がってたらしいが、去年を
知るナースの感想だと、今年はまだ走りらしい。それでも床ずれに
移行せぬのは、ペグからの栄養補給のバランスの良さだろう。 完

■ ハンサ・無責任者二行きめるの《新・二行詞》


・ 辛いとか口に出せないこの辛さ 辛さ悲しさ時が解決


・ 候補者の資質も知らず風評で 選び決めてる都議選あわれ


・ 手早さと手抜は違う介護風呂 声に成らぬが肌は感じる


・ 言訳は私にとって減らず口 雉も鳴かずば撃たれまい


・ 餓死挑む事もまた夢夢の夢 それも出来ない運命嘆く


・ 日本語も話せぬ者に韓国語 殺生どっせ主治医どの


・ 仕切り屋の彼女不在でヘマ多発 若さ売りでは私に不向き


・ 突然死願うけれども適わない 何のため生き迷惑かける


・ 支持率は勤務評定通信簿 おごる平氏が浮かんで消える


・ 床ずれは関わりないが汗疹には 痛しかゆしの季節到来


・ 秀吉も龍馬も知らぬ五十六も 這えば歩めと進む世の中


・ 物言えば唇寒しと言うけれど 上にたつほど壁に耳あり

≪寝付けない≫

≪余裕ゆとり≫


『一』
一度起きたら  二度寝駄目
惨めな習慣   癖になる
 困った事に   昔より
 後遺症かな   寝付けない
夜のとばりで  あろうとも
夜明の前で   あろうとも

『二』
父や母さん  兄さんや
友人知人   夢も見ぬ
 参った事に  以前より
 後遺症だな  寝付けない
記憶の糸は  健在で
面影なしは  切ないよ

『三』
辛い出来事  まだあるよ
頭も熱くて  堪らない
 弱った事だ  話より
 後遺症だよ  寝付けない
深夜女房に  頼むけど
辛抱出来ぬ  ほどなのさ


『一』
余裕ゆとりで  余裕ゆとりで
 玄関TVを   鑑賞だ
  俺は寝ながら  見張り番
皆が忙しく   動くから
 そんな係を   引き受ける
  何かある時   知らせるよ

『二』
余裕ゆとりで  余裕ゆとりで
 玄関TVの   お守り役
  作詞しながら  見張り番
皆が何処かで  仕事なら
 少し心配    減るだろう
  中止しながら  見てるから

『三』
余裕ゆとりで  余裕ゆとりで
 玄関TVの   相棒さ
  怠けみたいな  見張り番
世間の動きを  注視して
 刺激探索    ネタにする
  稼げないけど  凹まない


≪腹を冷やすと下痢するよ≫

≪世間知らずであるけれど≫


『一』
腹を冷やすと  下痢するよ
寝冷の予防も  大事だよ
 タンスの肥やし 貰い物
 腹に巻いてる  だけなのさ
自然な姿    寝姿で
 誰も気がつく  思い出す

『二』
腹を冷やすと  駄目だから
腹巻代りの   バスタオル
 四折りだけで  お茶濁す
 その場しのぎの 珍作は
一寸見ならば  喝采の
 誰もうなづく  手抜きだよ

『三』
腹を冷やすと  下痢を呼ぶ
風邪にも警戒  必要だ
 迷惑かけぬ   覚悟して
 一人ぽっちの  引き篭り
忘れる程の   着た切りで
 誰も恐れず   生きている


『一』
世間知らずで  あるけれど
俺は生きるぞ  落込まぬ
文句苦情は   回れ右
不平不満は   扱わぬ
 現実離れで   生きるより
 見えない心で  生きていく

『二』
世間知らずで  あるけれど
俺は生きるぞ  凹まない
運の悪さを   諦めて
不幸不運は   謝絶中
 命があるだけ  幸せで
 上にゃ上いる  不幸せ

『三』
世間知らずで  あるけれど
俺は生きるぞ  後少し
迎え参らず   仕方なく
不便不自由と  道連れだ
 住めば都と   納得の
 終の棲家で   明け暮れる


主治医より一言

ハンサ・無責任/二行きめるの《個人のペグ》

飛田さんのパソコンの悩みが事務局の方のアドバイスで1日も早く解決される事を祈っています。ところで以前に研修医を指導している時に飛田さん宅を予備知識を与えずに訪問診療に連れて行った際にどうせ意識がないと思い込んで話しかけもせずに診察した後で大恥をかいていたのを思い出しました。見た目で判断する先入観の怖さですね。又、1番の床ずれ防止策は、安定した栄養管理だと飛田さんを通じて実感しています。今後とも色々と御教示のほどをお願いします。