飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる186

京都府 飛田洋さん(75歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

■ハンサ・無責任/二行きめる個人の見解

《後期高齢者と妄想》平成30年8月1日(水曜日)


 55歳で脳梗塞を発症し75歳で後期高齢者の仲間入りを果た
した。先日来、ペグの装着から18年に成ろうとしている、と書いたと
ころ20年になる、と妻から訂正を受ける始末。

 簡単な引き算も出来ぬか、と流石に文科系と、主治医に笑わ
れていそうな寝た切りが屁理屈一発、申し上げます。

 

 寝たきり寝た切りと、自分を卑下して書いておりますが、高齢に
なり、うたたねをしても昼寝はしていないので、自称自分の居場所
で居た切りをしています。

 居た切りは24時間、自由な時間がありますので、ひまつぶしに
色々と考えます。妄想に近いものです。

 働き盛りの頃は理想空想であっても、考える間が惜しく働き出し
てた性格で、後期高齢者になった今は妄想で、ひまつぶしを楽し
んでます。誰にも迷惑・危害を与えておりません。


 例えば原発事故による汚染土、草木、水の一括永久保存。

沖縄米軍を北海道過疎地域にドーム連鎖都市を建設し誘致。

幼児虐待三度以上摘発されると親権を剥奪し国営施設で育て
認められた子のない夫婦に親権を与える策。

川底を数度に分けて深くして想定外の水害をなくす。

都市政策を専攻してたからかハワイの火砕流を防ぐ砂防ダムを考
えたり、童心に戻り秘密基地を描いたり建築家でないのに我が家
の改築間取りを空想,いや妄想して、退屈凌ぎのひまつぶし。

 

そこで  《居た切りと 屁理屈パワーの 高齢者》  なーんてね

■ ハンサ・無責任者の川柳風《二行詞》


・雨晴れは 居た切りだから 関わらぬ
           温度湿度が それが問題

・川柳か 社会風刺か 愚痴ぼやき
           ながく寝て居りゃ 色々あるさ

・自転車で 日本列島 こころ○
           なつかしきかな 思いでたどる

・同じこと 何度も聞くな くりかえし
           こたえる俺に あせりを呼ぶよ

・ベッド柵 揺らす人あり 地震かと
           身構えさせる ペグの最中

・背はちじみ 腹は出て来る 腰痛む
           ながく使えば 金属疲労

・地震あり 洪水ありの この土地の
           自然ゆたかな 恵みを想う

・今日のヘマ つぎは犯すな メモとれよ
           ごめんなさいが 組合つくる

・転換の 出来ぬ言葉に 出合うたび
           記憶ちがいと 迷う弱さよ

・ああ云えば こう言う男 誰だっけ
           顔は浮かぶが 名前出てこぬ

・真夏日だ 熱中症だ としよりだ
           釈迦に説法 耳にタコイカ

・リクエスト 受けてくれそは 頼むけど
           見込ないのは 相手にならぬ

・仕事して 汗かく人と 比べるな
           俺は居た切り 寝た切りなのだ

≪不思議な縁≫

≪思い出綴り≫


『一』
俺の職業    聞くでない
狭い一間に   甘んじた
 何もわがまま  言うでなく
 別に困らす   事もない
安らぐ時を   くれていた
不思議なえにしは  今いずこ

『二』
父娘おやこみたいな  雰囲気は
都市まちの景色に  溶け込んだ
 歳は離れて   いたけれど
 妙に呼吸は   合っていた
嘘はタブーの  ない仲で
不思議な縁に  今逢えぬ

『三』
どんな話題も  お任せの
妙に合ってた  フィリング
 五年十年    十五年
 星は流れて   月移り
夜の夢でも   忘れてる
不思議な縁が  今恋し



親に心配    かけるひと
暑い寒いと   騒ぐ奴
いろんな奴が  いたけれど
奴も色々    思い出綴り


猫派なのよと  媚びる人
犬に限ると   歩く人
いろんな人が  いたけれど
人も色々    思い出綴り


あれも欲しいと せがむひと
遠慮するねと  拒む女
いろんな女が  いたけれど
女は色々    思い出綴り


山へ来いよと  招くひと
海で遊ぼと   誘う友
いろんな友が  いたけれど
友も色々    思い出綴り


≪話をいじり≫

≪好きな女性≫


『一』
話をいじくり  書いている
 物に順番    順序あり
 月が昇れば   日が沈む
俺が俺がの   出番消え
 お役ご免の   時来たる
 栄枯盛衰    世の習い

『二』
話をいじくり  書いている
 者に配置が   配列が
 親が来た道   子が巡る
鳶が鷹産む   椿事より
 背中追う子が  稀になり
 蛙の子供は   夢の中

『三』
話をいじくり  書いている
 人に生い立ち  老い先が
 釘は目立たず  背伸びせず
瓜のつるから  茄が出る
 期待外れの   現実よ
 落ちる奈落の  哀しさよ


『一』
好きな一人の   女性ひとだから
初心貫徹     通してる
 屋根裏住まい   卒業し
 妻を迎えた    過去の日々
親父お袋     小姑と
 もめる事なく   暮せてた

『二』
好きな一人の   女性だから
大事に見守り   続けたよ
 大人数でも    こだわらず
 苦労してたの   思い出す
僕は幸せ     過ぎたから
 介護受ける身   こんな身に

『三』
好きな一人の   女性だから
今でも心は    変らない
 記憶も薄いが   あの頃の
 若さから来る   つきまとい
今の時代じゃ   許されぬ
 立派な犯罪    ストーカー


主治医より一言

《後期高齢者と妄想》

 医師になって38年なので、小生の医師人生の半分以上を飛田さんとともに歩んでいるのですね。驚きです。いつ頃、引退しようとそろそろ考えている自分にとって居た切り老人さんの飛田さんの考え方には、ただただ脱帽です。自分のしたい事を常に空想したり、夢に抱く事は大事な事でボケ防止にもなりますね(笑)。(岡野拝)