飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる211

京都府 飛田洋さん(77歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

■ハンサ・無責任者の独断と偏見 《二行詞》

2020年9月1日(火曜日)

①・傘ささず 道行く人見て 雨降りと
                 ばれてる嘘に 騙されますか
②・ぬるい風呂 夏のことだし 気にかけぬ
                 どうせカラスの 行水だから
③・目には目を 黙っているが 歯には歯を
                 今に見ておれ 後でほぞ噛め
④・暑いとは 言わぬ勝負の 賭けをした
                 遠い日のこと 思い出してる
⑤・マスクして 風呂の世話する 大変さ
                 夏場乗り切れ 無事を願うよ
⑥・コロナ禍で 昔のままじゃ いられない
                 今のままでは 無理が生ずる
⑦・八月は 暑いものだと 決まってる
                 自粛していろ 外には出るな
⑧・目覚ましの 切れぬ音聞き ひとしきり
                 よぎる不安と しんぱい怖れ
⑨・省エネと 違う浪費を しないだけ
                 勿体ないが そもそもなのさ
⑩・惜しまれて 去る人逝く人 さまざまだ
                 俺の生き死に 知る人ぞ知る
⑪・塵積もりゃ 樋もつまるし あふれだす
                 手入れおこたる 人の暮しよ
⑫・コロナかな 熱中症かな どちらかな
                 お呼びが来るかな 特別な夏

≪しんどいな≫

≪寝ては駄目≫


『一』
しんどいな   しんどいな
生きて行くのは しんどいな
 地震颱風    ウイルスコロナ
 為替変動    年金不安
しんどいけれど 頑張らなくちゃ
悩んでいても  はじまらぬ

『二』
しんどいの   しんどいの
今朝は起きるの しんどいの
 ホラースリラー 見ていたかしら
 怖い夢見て   うなされていた
しんどいけれど やらなきゃ済まぬ
手抜は出来ぬ  あかんのや

『三』
しんどいぞ   しんどいぞ
生きて行くのも しんどいぞ
 噂じゃ楽な   寝た切り暮し
 単調退屈    不愉快不便
しんどいけれど 流れにまかせ
頑張りまっさ  やりまっさ


『一』
寝ては駄目だと 自覚して
眠気が襲う   心地良さ
 テレビの筋が  展開が
 つかめなくなる 怖れあり
  寝ては駄目駄目 寝ては駄目
  此処は我慢だ  頑張ろう

『二』
寝ては駄目だと 言い聞かす
徹夜の予定   計画だ
 試験日真近   尻に火が
 点いてからだと 見られない
  寝ては駄目駄目 目を覚ませ
  此処で踏ん張れ 正念場

『三』
寝ては駄目だと 蔭の声
白川夜船    高いびき
 テレビの会議  テレワーク
 油断召さるな  ご同輩
  寝ては駄目駄目 寝ては駄目
  カメラレンズの 眼が怖い



≪昔がこいし≫

≪前向き暮し≫


『一』
戻れないけど  戻ってみたい
 昔懐かし    昔がこいし
野望隠した   昔がこいし
 東京夢見た   学生時代
演歌狂いが   黙々と
 演歌無緑の   寝た切り暮し

『二』
戻れないのに  戻ってみたい
 昔懐かし    昔がこいし
時間つぶしと  言い訳まぜて
 四角四面な   言葉で綴る
題材求め    四苦八苦
 記憶頼りは   悲しい暮し

『三』
戻れないけど  戻ってみたい
 昔懐かし    昔がこいし
理屈屁理屈   母親譲り
 小言半ばの   説教主流
説を認めて   受売りの
 老いの寂しい  寝た切り暮し


『一』
文句ついでの  愚痴ぼやき
 聞き役だけで  二十年
怒る気持も   認めるが
毎度聞くのは  堪らない
 人より前向き  なのだけど
 へこみたくなる 時もある

『二』
何だかんだと  お邪魔虫
 抗議出来ずに  二十年
悪さしたい気  わかるけど
下手な行い   許せない
 人より前向き  なのだけど
 弱音本音が   顔を出す

『三』
昔がたりを   奪われて
 今を生かされ  二十年
俺は出来ぬと  投出すは
そうさ人間   放棄だよ
 人より前向き  なのだけど
 相手違いが   困らせる


主治医より一言

《しんどいな》

 しんどいは、心労、辛労が変化し、“しんど”となり、それが形容詞化したとの事で主に関西人が使うようです。 関東では“疲れるな”だそうです。それにしても今年の1月31日にこれを書いておられる飛田さんの先見の明には感服します。(岡野拝)