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入院中もよく出歩きました

●食べられないことへの不安
主人は左上顎癌で、平成6年9月26日に、富士市立中央病院に入院しました。10月と12月に化学療法を行い、12月22日に、腫瘍の切除手術を受けました。手術後、12月28日、翌平成7年の1月26日、2月16日の三度にわたり、それぞれ数日間の抗癌剤の投与があり、ここで体重が10キロも減ってしまい、体力的にも心配でした。
3月末には再発の話が先生からあって、4月中は痛みと口からの摂取ができなくなることへの不安が、メモに残されています。どういうものなら食べられるだろうかと、自分で料理の本まで買って、見ていたのもこの頃でした。

●PEG施行後の経過
主治医は二宮先生で、癌であることは本人も気づいていましたが、時間をかけて事実を正確に伝えて下さっていたので、主人は二宮先生を信頼しきっていました。ですから、先生から5月の再手術に備えてPEGを勧められたときも、迷うことなく受け入れましたし、それは私も同じでした。それで4月19日にPEGを施行して、栄養状態をよくしておいて、5月2日に左上顎全摘、腹直筋皮弁による再建術を受けました。これは前回の手術よりも時間がかかった大きな手術だったのですが、5月22日には早々に退院することができました。これには主人も私も本当に驚きました。私から見ても、手術前の状態、手術後の経過がよくて、元気になっていくのがわかりました。とにかく本人が一番嬉しかったでしょう。

自宅では、食べたいものを食べられるだけ口から食べて、不足分はPEGからツインラインを補っていましたが、7月にはPEGを抜くことができました。
その後8月に再々発、9月12日の受診の際、二宮先生から詳しい病状説明があり、11月2日、再びPEGを施行して、また入院となりました。

とはいうものの、外泊許可を貰って、午後には家に帰ってきて、朝、病院に戻るということが多く、27日には退院して、忘年会にも出席しました。
12月21日には最後の入院となり、平成8年1月に入ると左頬の痛みが強くなって、ほとんどPEGに頼るようになり、2月23日に永眠いたしました。

●PEGの何が良かったか-妻として思うこと-
PEGにして良かったと思ったのは、まず管理が簡単で、その日の体調に合わせて食事の組合せ(口からかPEGからか)ができたことです。そのうえ外見も気にならないので、一緒に東京まで親戚のお見舞いに行ったり、暇だからと買い物に出たり、自由に外出していました。今まで通りお風呂に入れたことも嬉しかったですね。

それから12月中旬に、鎮痛剤を飲むことができなくなったとき、注射という方法もあったでしょうが、主人が少しでも痛い思いをするかと思うと、付き添っている私もとてもつらいので、PEGから薬を入れられたことも、長所の一つに挙げたいと思います。

施術者:故 渡井 啓二
左上顎癌

筆者:渡井 陽子(妻)