● はじめに
  前回は口臭の原因や種類、一般的な口臭の検査や診査についてお話してまいりました。
今回と次回の2回にわたり、実際に当院で行っている口臭治療例を紹介させていただき、また高齢者や特に嚥下障害のある方のお口の特徴や口臭予防方法について説明したいと思います。


≪口臭はいわば生理現象?≫
  よく「あなた、お口くさいわよ!胃が悪いんじゃないの?」何の疑いもなくこのような会話が聞かれます。しかしよほど胃の病気が進んでいなければそんなことはないわけです。普通食道は水の通っていないゴムホースのような状態ですので、ゲップのときにのみ胃の臭いが呼気に出てくると考えて良いからです。口臭のほとんどの原因は口の中にあります。

  口腔はさまざまな飲食物の摂取や酸素の取り入れなどのガス交換、また会話のため音声を発する器官でもあります。さらに何百億という細菌が存在し、休みなく新陳代謝がくりかえされる場所でもあります。にんにく等に代表される匂いの強い食べ物や、進行した内科的な疾患など匂いの物質が血液に溶け込み肺から呼気へ含まれたり汗に混じったりするような口臭以外は、お口の中の微生物の活動によって生じます。

  口内で剥がれ落ちた細胞や唾液や食べ物の滓などに含まれる蛋白質が細菌によってアミノ酸などに分解されますが、嫌気性菌(空気の嫌いな細菌)は硫黄を含むアミノ酸を分解して極微量でも激しい悪臭を発生させるメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物を作ります。このガスが呼気にまじり口臭となります。


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