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PDN通信24号(2008年7月号)   経腸栄養療法成功のために
栄養アセスメント、経腸栄養剤の選択にPDNホームページを活用

福井県立病院 内科医長・NST Chairman 栗山 とよ子
NPO法人PDN 事務局長         神谷 進  
  

はじめに

栄養は生命維持のために最も基本的かつ不可欠な要素です。特に入院患者では、栄養状態が悪いと治癒機転が遷延し、免疫能の低下から縫合不全・感染症などの合併症の頻度・程度が増加することが知られています。 ところが現実には入院患者の約40%、在宅・施設入所者の約30%に栄養不良が存在すると報告されており、これが入院期間延長・医療費上昇の一因ともなっています。
 一方医療制度面からは、CRG・PPS(定額払い制度)を採用する病院が増加し、治癒遅延や合併症の発症は病院の費用持ち出しを意味します。コストとともに医療の質を落とさず維持するためには入院中の適切な栄 養管理が必須であり、その方法の一つが、各職種でチームを組んで栄養治療に取り組む栄養サポートチーム; N S T(Nutritionsupport team)です。
 NSTは1970年にアメリカのシカゴの病院で開始されて以来その有用性が評価されてほぼ全世界に活動が広がり、日本においても近年急速に増加して2008年1月現在約1400の病院で稼働中です。

 

栄養スクリーニングとアセスメント

  

栄養療法を成功させるための第一段階は患者の栄養状態を的確にスクリーニングし、栄養障害が疑われ栄養管理の必要性のある患者をもらすことなく拾い上げることです。
 第二段階は、症例個々の栄養必要量・投与方法・投与内容を決定し、定期的にモニタリングしながらアセスメントを繰り返し、変化する患者の病態や代謝状態に対応した栄養管理を行う事です

栄養管理プログラムの活用法

・医療機関で
 このたび、PDNホームページ内で、個々に対応した栄養アセスメント・栄養必要量の算出、経腸栄養剤の選択、選択した栄養剤の合計栄養量などを簡易に算出できるプログラムが活用できるようになりました。 たとえば、適切に胃ろうを造設しても、栄養投与量の設定や経腸栄養剤の選択・投与方法が不適切なために消化器症状や嚥下性肺炎を引き起こしたり、栄養状態が十分に改善しないなど、せっかくの胃ろうが有効利用 されない症例が少なくないように思われます。
このプログラムは主に経腸栄養を主体として作成したものですが、利用していただくことで、順調に経腸栄養治療を開始・継続する手助けになればと願っています。 また算出した栄養アセスメントは記録・印刷が可能であり、個々の栄養管理実施加算の資料として利用できるものと考えます。
 今回開設したPDN栄養管理プログラムには、栄養管理に伴う理論や手技の若干の解説と、多種多様な経腸栄養剤の成分表・選択のアルゴリズムも含まれます。
 ・在宅で
 本プログラムは在宅で胃ろうのケアをされている介護者の方も念頭において作成していますので、家族の方にも有効に活用いただけるものと思います。
 例えばこんな時…Aさんは、在宅でご家族が中心となって胃ろうでの栄養管理を行っている80歳の男性である。
家族の丁寧な対応や精神的に落ち着いた環境の中で、日に日に栄養状態、全身状態が改善してきた。ある日、いつもより元気のないAさんを見て、訪問リハビリ担当者が現在の1日あたりの栄養投与量が不十分ではないか気 になると言い出した。 家族は「退院後から今日まで、医者に指示された量(1200㎉)を規則正しく投与している」という。幸い昨日のデイケアで入浴時に身体測定をしてもらったばかり(身長170㎝、体重60㎏)。早速PDNホームページ内の栄養管理プログラムにあてはめて、適正な栄養量が確保されているかを調べてみることになった。結果、在宅ではご家族の目が行き届くことにより投与時のトラブルがほとんどなくなり、確実に栄養補給がなされていることで体重が増え、活動量も増えている(活動係数1・2→1・3)ため、必要カロリー量があがっている(1560㎉)ことがわかった。
明日の訪問診療時にこのデータを提示して、栄養剤を変えるか、投与量を増やすかを相談することになった。

PDN栄養管理プログラムの使い方

PDN栄養管理プログラムのメニューを選択するとEXCELが開きます。使用方法はA1セルにカーソルを移動すると表示されます。
 通常、栄養アセスメントは定期的に繰り返して測定します。 この場合はこのEXCELを事前にパソコンに保存し、保存したファイルを使用します。この時、患者名を含んだファイル名とすることをお奨めします。
『栄養必要量の算出』の使い方
①患者情報入力  氏名・男女・生年月日 患者IDは省略可 年齢は自動計算される
②身体計測値入力 身長・体重・TSF・AC
身長・体重の測定が困難な場合は膝高  身体計測ボタンで説明あり
③係数入力 活動・傷害係数・脂肪比率  傷害係数 ボタンで説明あり  必要に応じて体重選択・蛋白必要量・水分投与量入力
体重選択は一般に理想体重と比べて少ない方を選択
▼現在の栄養状態の評価  BMI、理想体重比により肥満度体脂肪消耗の基準値との比較 筋蛋白栄養障害の評価
▼栄養必要量の自動算出  一日の投与エネルギーの算出 蛋白・脂肪・糖質・水分・ビタミンミネラルの必要量算出
④結果の印刷
『経腸栄養剤選択』の使い方
①栄養剤マップ・ボタンで一覧表示 ▼消化・吸収能評価で分類選択 評価フローに沿って栄養剤選択
②リストから選択した栄養剤を クリック ▼「栄養剤」登録表を索引 
③栄養剤の摂取個数を入力商品概要の単位表示を参考に一 日の摂取量から個数を決める
④同一分類から2種類目の栄養 剤選択は全体の中から選択 ▼不足欄で栄養量を判断する
⑤結果の印刷
⑥測定経歴の保存(任意) 履歴 ボタンをクリック
⑦EXCELの終了 (保存し ますか→いいえ)