愛する人を生かしたければ胃瘻を造りなさい(丸山道生・著)
「口から食べられないとき」=「死ぬとき」ではない。
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近年、悪物にされがちな胃瘻 。
しかし、「口から食べられないとき」が、すべて「死ぬとき」ではない。
胃瘻によって助かる命はたくさんある。
誰しも年をとれば、口から食べられなくなる日がきます。そのとき、医師から選択を迫られるのが「胃瘻」の問題。最近、この胃瘻が「自然な死を邪魔する」、「非人間的だ」などと槍玉に挙げられるばかり。
しかし、「そうではない」と反論するのが胃瘻の専門医である著者の丸山道生氏。点滴がわずかなカロリーしかとれない、合併症を起こしやすいのに対し、腸を使う胃瘻は免疫を活性化させたり、合併症を減らす大きな長所があります。
胃瘻の基礎的な知識も持たず、利点を無視して、「胃瘻をよくない」といっているのが今の風潮。そこで専門医である著者が胃瘻の基礎的な知識や長所をやさしく解説。「胃瘻を造ったときの平均余命は2年半」、「だらだら生きるわけではなく、その人の持っている寿命しか生きられない」など、胃瘻の本質を紹介します。
はじめに
第1章 胃瘻とは何か? 正しく理解していますか?
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私と胃瘻との出合い
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食べられない子どもの栄養補給法として誕生
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口から栄養がとれなくなったら、どうするのか?
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腸を使わないと免疫力が下がって、全身が弱る
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短期間なら鼻から、長期なら胃や腸に直接が原則
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胃瘻は内視鏡で簡単に造れる
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胃瘻って、どんなもの?
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胃瘻からどんな栄養を入れるか
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点滴ではなく胃瘻が優れているこれだけの理由
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医学的な胃瘻の問題はほぼ解消されている
第2章 なぜ、胃瘻が悪者にされるようになったのか
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胃瘻が必須、胃瘻で助かる命が実はたくさんある
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事故や拒食症で胃瘻を使う場合も
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認知症が進行している場合はどう考えるべきか?
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「人間の尊厳に関わる」というのが、胃瘻バッシング派
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「意識がない人に栄養を入れているだけ」は真実?
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胃瘻について誤解しているのは、素人だけではない
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「終末期」とは? 「老衰」か「栄養不足」か?
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胃瘻にしてもすべての栄養を経管にする必要はない
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胃瘻造設のためのガイドライン作成が必須
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胃ろうを造ると、どれぐらい生きられるのか?
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認知症の種類、進行度によって、予後は変わらない
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「造る?」「造らない?」。迷ったら、まず経鼻胃管を
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胃瘻をしてもその人の寿命しか生きられません
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「胃瘻を外したい」と思ったら、点滴に切り替えを
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海外では、「胃瘻」はどのように考えられているのか
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私の考える理想の胃瘻とは
第3章 体験談に学ぶ胃瘻の考え方・使い方
体験談1 大田美津子さん(仮名・86才)の場合
胃瘻を造ってくれる病院を探して相談。積極的に嚥下リハビリを行っています
体験談2 中野勝さん(仮名・78才)の場合
胃瘻を造り、リハビリをしたおかげで おはぎやおにぎりを食べられるように
体験談3 野中安喜子さん(仮名・101才)の場合
胃瘻を造って7年半 母が生きていてくれることが、私の生きがいです
体験談4 西山直行さん(仮名・74才)の場合
胃瘻から自分で栄養注入。嚥下リハビリをがんばって、胃瘻を卒業
体験談5 中村明弘さん(仮名・74才)の場合
食べる量が減って、一日中ぼーっとした状態に。胃瘻で栄養補給をしたら、頭もシャキッとした
体験談6 佐々木勝さん(仮名・92才)の場合
胃瘻を造って2年半。元気な父の姿を見て、「もっと長生きして欲しい」と強く思います
体験談7 浜崎織江さん(仮名・80才)の場合
在宅ケアに疲れて胃瘻を後悔した瞬間も。問題を胃瘻を造りっぱなし……にすることなのかも
体験談8 河田英一さん(仮名・85才)の場合
結局、胃瘻は造りませんでしたが、「体力が戻る可能性のある人は胃瘻を検討しても良い」と思うように
第4章 胃瘻についてここが知りたいQ&A
Q.誰でも胃瘻は造れるの? 造れない人はいる?
A.胃のない人は造れません。腸に重大な病気があると造れないことも
Q.どこの病院でも、胃瘻は造ってもらえるの?
A.施設によっては、「造らない」と決めていることも
Q.胃瘻を造ってもごはんは食べられる?
A.食べられます。口から食べるリハビリに適しています
Q.在宅介護で、胃瘻は使えますか?
A.管理は難しくないので、大丈夫です
Q.胃瘻を造っても、お風呂には入れる?
A.シャワーも入浴も、問題ありません
Q.胃瘻の交換のたびに入院するの?
A.在宅でも、外来でも交換できます
Q.栄養を入れるのに、どのくらい時間がかかりますか?
A.「1時間で200ccぐらい」がふつうです
ほか8項目