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レポート(2001.8.13)

第6回HEQ研究会 358名が参加

 さる8月4日、金沢市文化ホールで開催された第6回HEQ研究会(当番世話人:金沢大学がん研究所・腫瘍外科教授 磨伊正義先生)は、医師111名を含む358名の参加の下、盛会のうちに終了した。一般演題(12セッション35演題)のほか、教育講演、ランチョンセミナー、特別講演、パネルディスカッションというプログラムで、午前8時45分から午後5時半まで休むことなく熱心な討論が繰り広げられた。以下に、小川滋彦・嶋尾仁両先生の司会によるパネルディスカッションの概要を紹介する。

世話人:磨伊正義 先生
左:小川滋彦 先生
右:嶋尾 仁 先生
高橋 裕 先生
松本雄三 先生
高橋美香子 先生
中留いち子 先生
阿部 徹 先生
稲川利光 先生

 

●パネルディスカッション「内視鏡治療とその在宅管理、そしてインフラ整備」
各演者およびテーマは次の通り(敬称略)。

1.北陸三県におけるPEG実施状況の調査結果
 北陸PEG・在宅栄養研究会/小川医院院長 小川滋彦、他

2.病病連携におけるDay Surgery PEGの経験と問題点
 東海大学大磯病院内科 高橋 裕、他

3.胃瘻ネットワーク研究会の発足とPEGネットカンファレンスの開催

 胃瘻ネットワーク研究会/亀田総合病院内視鏡室 松本雄三、他

4.胃瘻トラブルマニュアル作成の試み~こんな時どうする??

 鶴岡協立病院内科 高橋美香子、他

5.地域における胃瘻造設患者の看護ネットワークへの検討

 昭南病院ケアコーディネーター 中留いち子、他

6.経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の役割 在宅復帰を果たすために

 -都市部の大規模病院と農村部の小規模病院の比較から―
 中通総合病院消化器科 阿部 徹、他

7.胃瘻造設の適応とフォローの在り方について

 (長期的な経過からみた位置考察)
 NTT東日本伊豆病院リハビリテーション科 稲川利光、他

<在宅管理を可能にするには>
ディスカッションでは、まず在宅管理移行率の高い大曲中通病院の阿部徹先生、NTT東日本伊豆病院の稲川俊光先生らが、その理由を述べられた。
「介護の力というのが一番大きな要素であると思います。それから秋田(注:中通総合病院=都市部大規模病院)の場合は脳血管障害で入院されていた方がいったん退院され、そのあと嚥下障害のために誤嚥性肺炎を起こしたりしてかなり重症になって再入院され、その結果胃瘻を造るという方が結構いらっしゃるのです。そういう方は全身状態もかなり悪くなっているので、家族の方に介護力があったとしても引き受けられないというケースが多くなっています。

一方大曲(注:大曲中通病院=農村部小規模病院)は、かなり早い時期に胃瘻を作っています。その際、実際に作る先生と主治医の先生が大体同じですし、ケースワーカーが間に入って退院後のケアの話をしますので、不安を取り除くことが出来ているのではないか、そういった、医療‐看護の体制の整備が高い在宅移行率につながっているのではないかと考えています。」と安部先生。

 リハビリ医の立場からは、「やはり病院の立場が違うと思うのです。我々はなんとか自宅に帰すためにリハビをしているという一つの大きな方向性があるということです。回復期のリハビリ病棟といってもかなり重症な方が多く、ADLがほぼ全介助の方が100%に近い。そういう状態の人を在宅に移行するとき、PEGを施行して食事介護の部分だけでも負担を軽減してあげれば、在宅が可能だろう、ということでアプローチしていますから、普及率は高くなると思います。もうひとつは、復帰したあとの訪問看護でのフォローあるいは病院で行っているデイケアの体制です。これは同じ病院の中でやっていますから、通所リハの方も外来の方も、ある程度フォローできます。要するにフォローの体制が可能であるということが在宅移行に向けて進めて行ける素地になっていると思います。」と稲川先生。

また、病病連携を行っている高橋(裕)先生は、術後の在宅ケアは提携病院に任せているが、注意点として、術後1週間以内の早期合併症やトラブルの予防・対応について、今までの経験に基づいた細かな内容の申し送りしているとのこと。そういった対応を抜きにしては、在宅に結びつく病病連携は成り立たない、ということであろう。

<急がれる施行・ケアの標準化>
ここで司会者であり発表者でもある小川先生が「パネリストとして」発言。在宅患者を引受ける開業医がPEGに積極的でないことについて、それぞれの病院でそれぞれの対応をしているため、自分の知らないタイプが使われているとどう対応するのかわからない、また特定保健医療材料の保険請求等をきちんと理解していないという理由で尻込みしていることが考えられる、と述べられた。

他院で造設された胃瘻カテーテルの交換を依頼されることが多くなったという高橋(美)先生は、受入体制が不備なままPEGが急速に導入されていることで、造設する側にも受け入れる側にも様々な問題が生じていることを指摘された。
「突然外来受診で交換を依頼されても、私は患者さんの基礎疾患も服用している薬の情報も主治医の先生から頂いていないのです。患者さんが来て初めてカテーテルをみて、すぐには対応できないタイプだったこともありましたので、最近は事前にそういった情報を流してから来院されるようお願いしています」とのことだが、交換が必要であることが知らされていない、保険で認められている交換時期であるにも関わらずフィーディングチューブを自費で購入、さらには胃瘻であるという理由で家族に過重な負担を強いるといった問題がみられたそうだ。

今後、どこでも使える標準的なマニュアルが必要であるとの思いから、今回は保険請求の可否も含めたカテーテルタイプ別マニュアルを作成し発表されたが、PEGの急速な普及が混乱を起こすことのないよう、施行・ケアの標準化こそ急務であると思われる。

<PEG情報を広めるネットワーク作り>
司会の嶋尾先生からは、医師へのアプローチや院内・院外でのネットワーク作りをどのように行っているかという問いかけがなされた。
 医師会や病院主催の医療フォーラムでのアピールを行っているが、高齢の開業医にとっては介護はかなりの負担ということであまり受け入れられていない、また老健施設や実際に介護しているデイケアのナースからの相談には個別の指導をおこなっているのが現状、という高橋先生。「個別の対応は無駄が多いのですが、草の根的に一人でも理解者が増えればいいかなと思ってやっています」

 胃瘻ネットワーク研究会は、ドクターおよびコメディカルへの啓蒙による標準化したケアの提供を目指し発足された組織である。松本先生は、胃瘻造設後のケアについての情報が実際にケアに関わるスタッフへ伝わっていないことが結果的に胃瘻のトラブルにつながっていることから、PEGの啓蒙においてはケアが重要であり、そのための情報提供を行う場としてPEGネットカンファレンスを開催していることを報告された。

昭南病院のケアコーディネーターであり曽於地区全体のネットワークを組織しチームアプローチを進めている中留先生からは、「そもそも胃瘻は医療サイドの都合で造るのではなくて、患者様のために造るわけです。造った以上きちっとケアをして差し上げる、そのことが介護の負担軽減につながり患者様の状態改善につながってQOLを高めることができる、それが本来の目的だと思います。ですから一つの施設ではなく多くの施設の方々がそういう点に目を向けていただきたい、という発想から組織しました。具体的には、胃瘻を造設されておられる各施設に担当者を設定し、その方々と一緒にディスカッションしながら企画を立てていくことを計画しています。当院ではご家族にも声をかけ、参加できるような内容も考えているところです」との報告があった。
 
<質の伴った施行数の増加を期待>
最後に小川先生が、「PEGを選択したご家族に対して、確実に栄養が取れて体力が回復すること、少なくともそういう気持ちで医師は施行したのだという、リハビリに向けた強いポリシーを伝えないと、単に施行数だけ増えたという話になってしまう」と発言された。
今回のパネルディスカッションでは、近年、施行数の急激な伸びに伴って明らかになってきた施行・ケアの問題点をどう克服し、患者・家族のための医療を提供してゆくか、多くの課題が提示された。PEGを希望するすべての人がどこでも同じレベルの医療を受けられるよう施行・ケアにおける標準化を進めるとともに、情報の公開・共有がいかに重要であるかを、改めて考えさせられるディスカッションであった。

(編集部:岡崎)