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摂食・嚥下機能の評価や障害のレベルにあったリハビリテーションや口腔ケアの重要性が叫ばれる一方、「どこで、誰に相談すればいいのかわからない!」という声が、患者だけでなく、医療・福祉関係者の間でも、まだまだ多く聞かれます。

ここでは、神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会の取り組みを紹介します。

Ⅲ摂食・嚥下機能向上のための取り組み
5.摂食・嚥下障害の評価と対応
~医療・福祉現場の取り組み~


神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会(相模原地区)

PDN通信 28号 (2009年7月発行) より

(所属・役職等は発行当時のものです)

地区内の摂食・嚥下関連情報一覧を!

2009年5月16日(土)13:30より、ソレイユさがみ・セミナールーム(相模原市)にて、神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会 相模原地区のセミナーが開催された。

表 後援団体
  • ・ 神奈川県栄養士会第7ブロック支部相模原市栄養士会
  • ・ 神奈川県看護協会相模原支部
  • ・ 神奈川県歯科衛生士会相模原支部
  • ・ 在宅医ネットよこはま
  • ・ さがみ居宅医療・介護研究会
  • ・ 相模接骨師会
  • ・ さがみはら介護支援専門員の会
  • ・ 相模原市医師会
  • ・ 相模原市歯科医師会
  • ・ 津久井お口を想う会

神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会 相模原地区の代表世話人、宮下剛先生(森田病院・言語聴覚士)は、開会の挨拶の中で、「相模原地区において、どういう施設がどのように摂食・嚥下リハビリテーションに関わっているのか、患者サイド以前に我々医療・介護従事者同士ですらわかっていない。本研究会を通して、ご自身の施設ではどのような関わりが可能か、また周辺の他施設がどのような関わり方をしているか、そのような情報をひとつにまとめ、共有していこう」と呼びかけられた。

イメージとして電話帳のタウンページを例に挙げ、口腔ケアや嚥下機能評価、嚥下リハビリテーションなど目的ごとに施行している施設に関する情報が分かるようなものを目指したいと、当研究会の将来構想を述べられた。

後援団体 () をみても、本研究会の趣旨に賛同し、地域ぐるみで取り組んでいこうという意識の高まりが感じられる。

主催者の予想を超える200名以上の参加者が会場を埋め、医療・福祉の垣根や職種の壁を越え、終始熱心に講義に聴き入っていた。

経口摂取を重視した栄養投与経路の選択

「医療と福祉の現場で行う摂食・嚥下障害の評価」のテーマで講演された横浜浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科・若林秀隆先生は、従来の「栄養療法と投与経路のアルゴリズム」を「経口摂取を重視した栄養投与経路」にアレンジし、先ず「摂食・嚥下が安全かつ可能か?」からスタートする樹形図を示された(図1・2)。無用な(適応外の)経管栄養を行わないための第一のチェックポイントといえよう。

摂食・嚥下障害を正しく判断するためのスクリーニングテストのそれぞれの意味と具体的な方法、テスト時のポイントなどのお話と並行し、専門領域の知識や技能は身につけるだけでなく、どう現場で成果を出すかが問われていることにも触れられた。

図1 栄養投与方法のガイドライン 図2 経口摂取を重視した栄養投与経路
左)図1 栄養投与方法のガイドライン         
右)図2 経口摂取を重視した栄養投与経路

病態の正しい理解と病状の進行に沿ったサポート

「神経難病患者の摂食・嚥下障害に対するSTの関わり―ALSを中心に」では、北里大学東病院リハビリテーション部STの安田菜穂先生が、ALSの病態の概説、ALS患者の嚥下評価の実施状況などを解説された、ALSの摂食・嚥下障害の特徴として、呼吸不全と並行して進行することを挙げ、代替栄養の必要性にも言及された。

ALSの進行とともに経口摂取が困難になってくるため、体力が低下する前(口から食事を摂れている段階)にPEGが施行されることが多いように思う、と安田先生。

介護する側のサポートも見落とさない

「在宅・介護現場での摂食・嚥下障害の対応」は、歯科川崎院・自立支援型デイサービスリハビリストホーム歯科医師、川崎正仁先生がご講演。

まず始めに、医療者は治療の中断者を出さないよう、対応には注意が必要であることをお話された。

例えば、予約をしていた患者家族から、病状が悪化したので受診できなくなったという電話を受けたときのケース。ありがちな対応は、「ではまた落ちつかれましたらご連絡下さい。お大事に」。しかし疾患や病状によっては、その後、外来受診ができなくなるであろうことも推測し、「ご自宅への訪問歯科診療も可能ですので、ご自宅のかかりつけの先生に連絡してお伺いするようにいたしましょうか?」とつなげば、治療を中断しなくてもすむことになる

また、嚥下に必要な筋肉が萎縮していれば、それを弛緩するためのマッサージが必要で、PTやマッサージ師に報告・連携し、介護者にもその状況を説明した上で正しいマッサージの方法を指導しなければならない。関連する多職種との連携無しには、患者の全身状態は把握できない、と指摘。

さらに、「患者本人の機能を改善していくと同時に、介護者(家族)のQOL維持・向上のためのサポートにも、多職種の連携は欠かせない。介護をする側のQOLも考慮し、介護に喜びを感じられるように、それぞれの職種がその専門性を発揮してサポートすること、それが介護をされる側のQOLの向上にもつながる」と語られた。

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PDN通信 28号 (2009年7月発行) より

(所属・役職等は発行当時のものです)