患者と医療者のための情報誌「PDN通信」第85号のご案内
PDN通信第85号 編集後記 PDN理事長 鈴木 裕
また、戦争が勃発しそうです。イスラム組織「ハマス」への報復として、イスラエル軍はパレスチナのガザ地区に対して激しい空爆を行っています。イスラエル軍によりますと、これまでにイスラエル側では少なくとも900人が死亡し、およそ2700人以上がけがをしたほか、100人以上がハマスの人質になっているということです。一方、パレスチナの保健当局は、ガザ地区でこれまでに770人が死亡し、およそ4000人がけがをしたとしていて、双方の死者はあわせて1600人以上にのぼったと述べています。この状況から日本の外務省は「イスラエル軍が今後、本格的な軍事作戦を行うことが見込まれるなど、ガザ地区を巡る治安情勢は予断を許さない状況にある」と発表しました。
われわれ人類は、痛ましい過去の経験から、武力をもってひとを殺すことはどんな理由があっても容認されるものではなく、戦いに勝った側が、真理で正義とする考え方は誤りであると結論付けたはずです。しかし、現実的には武力による戦いはなくなるどころか逆に増えている感すらあります。個人的な殺人は罪になります。しかし、どういうわけか国家的な大量殺人になると容認されます。しかも、戦いに勝った側はお咎めなしで、負けた側だけが大きな反省を促されるのです。勝てば官軍は変わっていません。この誰でも分かる矛盾が、今だ世界の秩序に反映されていません。
話を医療に移します。医療が医師のパターナリズムで成り立っていた時代は終焉を向かえ、患者の自己決定権とインフォームド・コンセントの尊重という考えが、20世紀後半に台頭し、脳死、臓器移植、遺伝子治療、さらに尊厳死、安楽死といった問題の解決の倫理的基盤をなしてきました。今回は、薬剤師を中心に取りあげました。医療の考え方の変遷と同様に薬剤師の役割もここ数年で大きく変わろうとしています。薬を調剤することは変わらず重要な仕事です。しかし、薬学の知識と経験を持った薬の専門家が医師の腰巾着ではなく医療の一端を担うことは医療の発展に大きく貢献するはずです。原稿を読んで嬉しい気持ちになりました。これから薬剤師から目が離せません。
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