飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる178

京都府 飛田洋さん(74歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

■ハンサ・無責任/二行きめる個人の

《子はかすがい》 平成29年12月1日(金曜日)


 目に入れても痛くない子と言うが実際に愛くるしい子であった○

父子の珍ドライブで駐車場へ着きしばらく歩いて競馬場へ到着○

流石の私も混雑する馬券売り場へ連れて行くわけにいかず付設
の公園へ連れて行き砂場が集合地点の自由行動○二歳たらず
相手で指切りして親子の別れ○米国なら差し詰め児童虐待か
育児放棄である○

 急いで馬券を購入すると息子とイベント広場で仔馬を見せたり
遊ばせたものだ○淀城の跡は良く行ってやはり広場で運動させて
いた○息子のお気に入りは伊丹空港で時間のある時は飛行機を
見せに名神を走った○買い物がある時はくずはモール街に寄り道

付設のゲームをさせていた○平日は近くの仕入れにも荷物持ち同
行させていた○聞き分けの良い子で買い物中にも困らされた記憶
は少ない○玩具売り場付近に来ると《見るだけ》と駆け出して行き
ケース前に居てる子を探し出すと《見てるだけ》と何度も聞かされた
ものだ○たまに欲しがる日もあったが誕生日にとか正月とか云うと
我慢の出来る子であったから何処でも連れて行けた○

 一度電車に乗せる気で大阪の取引先に同行させたオフィスビル
のエレベーター付近で待たせて私は営業○交渉が終わり担当者
から喫茶店でもと誘われ実は連れがいると断ると御一緒にと畳み
かけて来た応じて外へ出るとパパと子供が駆け寄って来る○紹介
して行こうとすると奥さんはと聞き返された○この子だけですと説明
すると驚かれた○まさか子連れセールスなんて出来ませんからね○

 とにかく息子との講堂は色々有って思い出すだけで楽しい退屈
凌ぎになっているが子供や妻に過去を話せないのは口惜しい○

 

そこで 《楽しかった事にのみこの先相手にするか》 なーんてね

■ ハンサ・無責任者二行きめるの《二行詞》


・日記兼ね時事ネタ書いて来たけれど 月日ずれこむ二行詩哀し


・懐メロを聞いてパソコンひまつぶし 一寸だけだが楽しく過ごす


・マスクする決まりの季節でみな綺麗 お互いのため予防の為に


・聞きなれた音で何にも気にするな 匂いわからぬ言葉に出せぬ


・歯をむいて怒る犬にも我似たり 意志つたわらず増すは苛立ち


・廃刊し七年過ぎて未だ飽きず 懲りずの詞でパソコンしきり


・すすぐのと洗うのでは手間違う こだわり爺さん痺れを切らす


・他人の金使い気まぐれ旅を行く 憧れますね寝た切りの暮らし


・真夜中に吸引頼み目がさめて それから今日も寝るに寝られず


・ミサイルで知らない人が死ぬかもね 即死だったら俺は恐れぬ


・便利過ぎ危険すぎてる世の中よ ネット出来ない我はしあわせ


・脱税も租税回避も義務のがれ 褒めてやれぬなラッパ吹くなよ


・まな板の鯉にも似たり我が運命 煮るなり焼くなり好きにしてくれ


・食事中すみませんねと言われても ペグをしてるの気にもしていぬ

≪極楽とんぼ≫

≪老々介護≫


『一』
バカはご存知  お家芸
 常の騒ぎは   子守歌
おわかり通り  寝たきりの
 天下ご免の   極楽とんぼ
動き乏しい   暮しだが
 俺はそれでも  幸せさ

『二』
弱い者には   味方する
 そんな姿勢は  損ばかり
おわかり通り  寝たきりで
 欲が見られぬ  極楽とんぼ
声を失い    忘れても
 俺はどうにか  幸せさ

『三』
正義気取に   背伸びして
 下手な世渡り  人生だ
おわかり通り  寝たきりは
 天下一品    極楽とんぼ
夢と無縁の   暮しでも
 俺はもちろん  幸せさ


『一』
よぼよぼじじいと  何気なく
よれょればばあが  叫んでる
 呼ばれる事は  平気だが
 返事せぬから  認めてぬ
俺は口論    する前に
 情けないほど  愛してる

『二』
よぼよぼ爺と  昔から
よれょれ婆は  腐れ縁
 遊びの如く   戯れて
 それを大人で  受け止める
夫婦喧嘩に   成らないと
 犬も尾を下げ  避けて行く

『三』
老いぼれ爺を  十と七
よれょれ婆が  介護する
 お互い様と   おたがいに
 歳をとるのが  気にならぬ
丸くやるのが  晩年の
 残り僅かな   取り組みさ


≪テーマ探しに明け暮れる≫

≪開店休業≫しています


『一』
三つ四つの   子でないが
何かを求め   三千里
 売れないうたを  書き続け
 一人遊びで   世捨て人
  捨て目捨て耳  地獄耳
  テーマ探しに  明け暮れる

『二』
味のある句は  節を呼び
新たな行を   創り出す
 わからぬ言葉  内容は
 時代世代の   泣き所
  ポップポスター 読み漁り
  テーマ探しに  明け暮れる

『三』
一人ひとりの  夢の色
十人十色    七曲り
 稼げぬ詞を   道連れに
 上り下りの   山坂路
  野暮な横やり  アドバイス
  テーマ探しに  明け暮れる


『一』
雨の駅裏    寂れた酒場
赤ちょうちんが 泣いている
 下手な字で書く 看板なけりゃ
 通り過ぎそな  たたずまい
おんな一人が  訳ありで
《開店休業》  しています

『二』
北の駅には   木枯しばかり
憎いおとこは  のぞかない
 恋し愛しと   心で叫び
 ノイズ交じりの ラジオ聴く
おんな一人が  止り木で
《開店休業》  しています

『三』
夜の駅には   まだらな傘が
早い最終    既に出た
 今夜こそはの  馳走をアテに
 愚痴とぼやきの ひとりごと
おんな手酌で  今日も呑み
《開店休業》  しています


主治医より一言

《老々介護》

 小生の10年先の患者さん達を診ながら、家に帰ると どんどん家内に優しくなってきています(笑)。人の字のごとく 常にお互いを支え合って生きていると云いながら、晩年は、男性が妻の世話(介護)になっているケースが多いですね。