飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる201

京都府 飛田洋さん(76歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

■ ハンサ・無責任者の川柳風一途な《二行詞》


①・聞いた見た 知らない事を 知ったけど
            確かめられぬ この身の辛さ

②・ごめんねと 口先びとの 多いこと
            同じしくじり 何度やらかす

③・年寄りは 耳がわるいは へんけんだ
            工事現場か 今日のこの風呂

④・まなぶ気が 有ると無いとで 大違い
            積り積れば おどろくことに

⑤・逆らえば 血圧上げて したがえば
            女子と小人 調子に乗せる

⑥・寝不足で 愛車を停めて 仮眠取る
            癖になってた 伏見の土手よ

⑦・懐メロの 酷いアレンジ 聴かされる
            味を殺して 良さを消してる

⑧・ややこしく 格差ひろげる 消費税
            失政とがめる 内閣いじめ

⑨・頭とか 背中洗いにゃ こだわるが
            ほかは任せる 口出しはせぬ

⑩・処理水の 一石二鳥の アイデアが
            伝え切れない 二案は口惜し

⑪・野次馬で 色んなことに 興味ある
            浅く広くに 知りたい見たい

⑫・気にするな 気にしてるから 気にかかる
            どこ吹く風と 知らぬが仏

⑬・もの言えば 釣りがくるのを 知らされる
            言わぬが花よ さわらぬ神よ

≪引き篭もり≫

≪良く言うわ≫


『一』
社会問題    悩みとか
 意外と多い   引き篭もり
事情原因    色々で
 平気の兵佐の   例もある
出るに出られぬ
 俺はネアカの   引き篭もり

『二』
私の青春    時代には
 話題にならぬ  引き篭もり
個人情報    様々で
 余計なお世話だ 気にしすぎ
寝た切りゆえの
 俺はネアカな  引き篭もり

『三』
統計学での   分類じゃ
 確かに立派な  引き篭もり
思い考え    各々で
 深掘りするな  好き好きだ
静かに暮らす
 俺はネアカな  引き篭もり


『一』
ぶさいくなくせに
よれよれ爺と   良く言うわ
 若く見えても   どっこいどっこい

 戸籍上では    古女房
  泣くも笑うも   背伸びをしても
  早い話が     五十歩百歩

『二』
ぶさいくなくせに
よたよた爺と   良く言うわ
 俺とおまえは   どっこいどっこい
 金の草鞋と    泥草履
  泣くも笑うも   膨れてみても
  誰に聞いても   五十歩百歩

『三』
ぶさいくなくせに
よぼよぼ爺と   良く言うわ
 ドジとヘマなら   どっこいどっこい
 合わせ鏡よ     やじろべえ
  泣くも笑うも    老いぼれ同志
  ゆずりあいだよ   五十歩百歩



≪悪しからず≫

≪冴えてぬ頭≫


『一』
俺は演歌も   書きたいが
窓は締切    刺激なく
明日見込めず  悪しからず
下手の二倍の  思案中
お前は現れ   邪魔するが
それで迷惑   受けている

『二』
騒ぎ起こして  死ぬるより
生きる限りは  文字遊び
明日見込めず  悪しからず
金を稼がぬ   詞を書くと
お前は常に   金の虫
大人しいなら  目をつむれ

『三』
私自身の    ひらめきも
視野の範囲も  歎かせて
明日見込めず  悪しからず
不満不足の   詞の類い
お前は毎度   詰るけど
そんな気持は  毛ほどない


『一』
冴えてぬ頭   言われても
 俺は知らない  無関係
ご覧のような  有様で
腹立ち押さえて  聞いている
 御覧のとおりの
 こんな運命に  泣けて来る

『二』
冴えてぬ頭   推理だし
 俺はとにかく  関わらぬ
声まで出せぬ  麻痺の身じゃ
難儀は知るけど 手が出せぬ
 御覧のとおりの
 役に立たない  買いかぶり

『三』
冴えてぬ頭  殊更に
 俺に言うのは 言いがかり
墓場に近い  老人は
憤慨ふんがいするだけ 云い出さぬ
 御覧のとおり
 更に私は   気が弱い


主治医より一言

《引き篭もり》

引きこもりの由来は、アメリカ精神医学会の診断基準におけるSocial Withdrawl(社会的撤退)の英語訳だそうです。平成になってから「仕事や学校に行かずかつ家族以外の人と接触せず、6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態」を引きこもりと云うようになったようです。そう云う意味では、飛田さんは家族以外の他業種の方との交流も常に多くあり、当てはまりませんね(笑)。(岡野拝)