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PEGで復活。96歳の母

下山 忠(埼玉県所沢市)

昨年7月、それまで要介護2で、それなりに歩くこともできた母が、96歳の誕生日の1週間後、心臓病で倒れました。
心臓ペースメーカー手術で命を取りとめ、治療が始まりました。
入院中は、病院のスケジュール通りにしか治療/介護ができませんでした。
したがって、本人が覚醒していなければ、食事訓練もリハビリもできなかったため、回復は望めませんでした。
このまま、静脈注射を続け、いずれは死ぬのかと思った時もありました。
しかしなんとか介護で長生きをさせたいと思い、在宅介護をするためにはPEG(いろう)の造設が必要だと判断しました。


どこまで回復できるかは、賭けに等しい状態でした。
もちろん、治るなどとの医師の保証はありませんでした。

8月にPEGを造設し、9月末に退院。
それから要介護5となり、在宅での介護が始まりました。
認知症状があるため、昼夜逆転や妄想、咆哮などもあり、ほとんど24時間介護に近い状態でした。
退院直後はすべてPEGからの栄養摂取でしたが、幸い、嚥下の力がありましたので、覚醒時に合わせて、口からPEG用の栄養を飲ませたり、嚥下の訓練をさせました。
徐々に経口からの量を増やし、2ヶ月後にはおかゆなども食べることができるようになり、PEGと経口を並行して摂取できるまで向上。

そして退院してから約6ヶ月。
いまでは食事や薬は3食、すべて経口からとなり、煮魚や細かくした肉なども食べます。
朝晩の食事は、総入歯を装着して食べさせています。
オムツからリハビリパンツとなり、ポータブルトイレで排泄もでき、一人でよろよろとながら歩けるようになりました。
もちろん、母には嚥下の力や消化器官がしっかりしていたということが幸いしたと思います。
PEGは2月末、チューブ型/バンパー型から、ボタン型/バンパー型に交換。高齢のため、残しておいた方が良いとの医師の判断で残しましたが、交換以降、1度も使用していません。


最近はPEGに対していろいろな議論もあるようです。
私も不要な延命措置としてPEGを使うことは考えていません。


しかし、今回の経験で在宅介護の大切さ、すばらしさを痛感しました。
PEGや技術などにたよるのではなく、家族がそばにいて本人の状態に合わせて介護することで、高齢者でもここまで回復することができます。
少しでも皆様の参考になればと思います。


今回は、病院はもちろん、在宅ケアクリニック、訪問看護、ヘルパーさん、通所デイサービス、入浴サービス、介護用品業者さんおよびケアマネージャさんなど、多くの方々に支えられてここまで回復いたしました。本当にありがたいことだと感謝しております。

※ 後日、「<PEGで復活。96歳の母> その後」という体験談をお送りいただきました。