◆ 手作りの会場
写真1.老健ならではの座席 |
PDNセミナーとしては初の試みである、老健でのセミナー。通常、デイサービスに使用されているフロアを開放していただき、施設のスタッフの皆さんの手作りの会場が設営された。
正面には天井からつるされた白い布のスクリーン、その両脇は色とりどりの折り紙で作られたたくさんの花が壁を飾る。参加者はスクール形式の座席ではなく、いつもデイサービスで使用しているレイアウト(写真1)を応用して、1テーブルを4~6人で囲むように工夫され(写真2)、お隣さんと初対面でも話しかけやすい雰囲気となっていた。トイレや喫煙所の案内も壁にわかりやすく掲示され、施設の方が参加者一人ひとりを席に誘導してくださった。
写真2.テーブルを囲んで |
週に一度施設内に開店する喫茶室からは、コーヒー、お茶などの飲み物とお菓子を提供していただき、飲食厳禁の会議室やホールで開催されることの多いPDNセミナーとしては異例?のアットホームな雰囲気。
シニアセンターの佐原幹夫施設長(写真3)より、胃ろう造設者の受け入れをめぐり『実は一番胃ろうのことを学びたいと思っているのは、私をはじめ当施設のスタッフなんです』という参加者目線での御挨拶をいただき、セミナーがスタートした。
写真3.佐原幹夫施設長 |
参加者だけでなく、PDNスタッフも講師の先生方も展示参加された企業の皆さんも一体となったセミナーを演出してくださった都筑シニアセンターの皆さんに、この場をお借りし改めてお礼を申し上げたい。
敷居の高くなりすぎないセミナーを地域で開催しよう
神奈川県内のPDNセミナーは、県全体を対象地域とした横浜での年2回のセミナーのほかに、8つに分けた地区ごとのセミナーを年に1度は開催しようということになり、川崎・横須賀につづき今回の横浜北、さらに小田原・湘南の各地区で開催や企画が進んでいる。
写真4.赤羽重樹先生 |
講師を引き受けてくださった赤羽重樹先生(写真4)は、年2回の神奈川セミナーでも講師や症例モデルの作成などでご尽力いただいているが、「今回のセミナーは、参加された方の施設も職種も従来のセミナーとは異なり、介護施設の栄養士さんやケアマネさんも多く参加されている。まさにそういう施設、そういう職種の方にこそ胃ろうを正しく理解していただきたい。それは、胃ろうを造ったことで御本人や御家族が不幸にならないよう、身近な地域での連携をはかるためであり、また胃ろうに関わる職種がお互いの悩みを共有することで、お互いが支えあう体制を築くことにつながる」と本セミナーの趣旨を説明された。
写真5.麻植有希子管理栄養士 |
参加者が多くなるほど、普段から聞いてみたいと思っていることや疑問に思っていることを手を上げてたずねることをためらいがちだ。せっかくその道のプロが講師として目の前にいて、同じ悩みを持つ仲間が隣にいるのだから、臆することなく意見を交換できるあまり敷居の高くならないセミナーを企画したい、と赤羽先生。
講演1は当施設の管理栄養士でもある麻植有希子先生(写真5)。『栄養って何?』から始まり、低栄養状態に対する栄養士の取り組みや、胃ろう造設者へのかかわり、御家族でもできる栄養評価(ツメや皮膚の状態)などを解説され、口から食べることを忘れずに支援しようと呼びかけられた。最近話題になっている栄養剤の半固形化については、実際にレモンティーを固めたゼリー(写真6)が参加者全員に配られた。
写真6.試食用レモンティーゼリー |
講演2・3は赤羽先生がご担当。あまりお目にかかることの無いであろう胃ろう造設時の、内視鏡増も含めた動画には、みな伸び上がってスクリーンを注視していた。
医学的な側面、また社会的な側面から胃ろうの適応を捉え、『造設すると良い』ではなく『造設して良かった』に導くために、これからが始まりである、と結ばれた。
質疑応答の時間もたっぷりとり、寄せられた質問に講師のお二人が丁寧に解説された。