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PEG造設3周年記念エッセイ 「心機一転」

寝台タクシー、三社三様

 2006年8月29日。随分と福祉サービスも制度化されたが、タクシー会社の寝台車利用ひとつ取っても簡単ではない。
 A社は何台も福祉車両を持ち、ストレッチャーも安全だ。が、予約を仕切る係員の対応が乱暴なので、キャンセルした。B社は親切だが、いいお値段。C社はA社 の客が流れているのか、病院へ着くとすぐ、重なっている予約者のもとへ向かってしまう。病院のストレッチャーへ移り、しばらくすると処置台へ、交換が済むと再び抱きかかえ。何度も乗り降りするうち、妻が腰を痛めてしまった。
 今回は、車椅子に乗り、リフト付きタクシーで行くことにした。Sタクシーは、ワゴンタイプを改造してリフトを付けたユニークな車両だ。車椅子は一台しか乗れないが、固定シートの数が多く、家族と一緒の外出や小旅行に向いている。処置の間、待っていてくれるとのこと。運転手の態度と値段はかなり親切 で、安心して利用できる。

 

鼻からの内視鏡はすんなり。でもきつくなると交換も痛い

 内視鏡室の前で、いつもと何か違うなぁと思った。そうだ。目線だ。超近眼のボクだが、横になるときはメガネを外しているため、部屋全体や機械、スタッフ の方々の表情さえ見えなかった。車椅子からの眺めは何もかも新鮮。看護師さんたちは処置の後片付けや準備をしたり、書類を書いたり、ところ狭しと一生懸命働き、ピコピコとデジタル表示が点滅している。
 しばらくして、M医師が声をかけてくれた。鼻から入れる胃カメラをレンタルしてくれたとのこと。「今、人気あるマシーンらしいけど、楽ならええな!」。最近、太ってきてPEGが食い込んでるのですが…。伝えると、見て確認して決めることになった。
いよいよ、鼻に麻酔ジェルが詰められ、チクチクと少しの違和感を伴ってファイバースコープが入って来た。咳き込み感も無く、アッと言わぬ間に食道の入り口に届き、このまま入るかなと思ったら、唾液が溢れて来てモニターから映像が消えた。内視鏡担当医の指示で、口の中を吸引してもらったところ、再び見えた。すぐに胃まで到着し、内部の状態を確認。今までより長いPEGにすることになった。抜いた瞬間、おなかの脂肪に押されてきつかったせいか、血が飛び散り、痛みが駆け巡ったが、比較的、苦しまず短時間で交換完了した。
 自宅に帰り、いつまでも痛みを強く感じた。車椅子に座り、栄養を注入していると耐えがたく、M医師に相談した。PDNに紹介されていたこよりが、外部ストッパーと皮膚の間のクッションになるし少量の漏れなら吸い取ってくれるので良いとのアドヴァイスをしてくださった。さっそくやってみると嘘のように痛みは消え、じくじくしていたPEG周辺もきれいになってきた。数日間、痛みのせいでベッドに上がるとぐったりしていたが、一件落着してホッと一息。元の生活に戻れた。平成の一休さんとPDN、担当のM医師に感謝を込めて。礼!
                                      2006年10月20日

施術者:泉 岳志35歳(筆者:患者本人)
   進行性筋ジストロフィ症(DMD)
PEG歴3年