飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる 124 (2)

京都府 飛田洋さん(69歳)

後遺症かも

寝っぱなし


『一』
後遺症かも   わからぬが
頭が痒くて   たまらない
 入浴する度   あらうのに
 下手な洗髪   でもなくて
ノミも虱も   おらぬのに
頭が痒くて   たまらない

『二』
後遺症かも   知らないが
頭で記憶が   消えて行く
 夢でもお袋   逢えないし
 顔も忘れて   しまったが
家族写真も   見当たらず
頭で記憶が   消えて行く

『三』
後遺症だと   決まりだね
頭が熱くて   たまらない
 冬でも枕に   アイスノン
 毎度何度も   かえないと
何も想いが   ひらめかぬ
頭が熱くて   たまらない

『一』
寒い寒いと   言うけれど
俺はお蔭で   寝っぱなし
外の空気に   ふれないし
町の様子も   見ていない
正直言えば   みなさんの
暑い寒いが   わからない

『二』
寒い寒いと   言うけれど
俺は布団で   寝っぱなし
風邪を戴く   こともなく
風の冷たさ   知らないね
質問されて   この時季の
暑い寒いが   分からない

『三』
寒い寒いと   言うけれど
幸か不幸か   寝っぱなし
動き不足の   ぶさいくで
赤ら顔した   よだれくり
話題が辛い   ありさまで
暑い寒いが   わからない


百%の受身

ベッドの主


『一』
百%の     世話受けて
面倒かけてる  生活じゃ
言われるままで されるまま
使い古した   プライドが
意見が通る   ものじゃなく
触わらぬ神に  祟りなし

『二』
百%の     介護され
抵抗できない  身の上じゃ
文句の一つ   言われない
時代遅れな   ポリシーを
言わぬが花と  言うよりも
触わらぬ神に  祟りなし

『三』
百%の     満足は
平凡ですから  出来ぬけど
感謝はいつも  忘れない
今の現実    わかるなら
油を背負い   生きるより
触わらぬ神に  祟りなし


『一』
声を出せずに  体でわらう
そんな動きを  貴女は指摘
 ベッドの主の  喜怒哀楽は
 いつか自然に  身についた
それが本音で  ありまして
何処に建て前  ひそんでる

『二』
貰い泣きでも  涙でくもる
そんな変化を  貴女は理解
 ベッドの上の  喜怒哀楽に
 打算なんかが  あるものか
悲し過ぎれば  泣くけれど
嬉し過ぎても  泣いている

『三』
怒りピークは  体でこうぎ
そんな仕草に  貴女は嘆く
 ベッドが長く  喜怒哀楽は
 多少オーバー  気味でして
悪意なんかは  まるでなく
遠慮知らずは  あしからず

★ 仕草~しぐさ


俺の居場所はここなのさ

明日あしたと言うけれど


『一』
たった十日の  留守ですが
違うベッドで  寝てました
若いナースの  世話よりも
俺の居場所は  ここなのさ
 緞子みたいな  カーテンで
 外は見にくい  部屋だけど

『二』
人の出入りが  あり過ぎて
なれぬ事ゆえ  酔いました
独りぼっちが  閉じこもる
俺の居場所は  ここなのさ
 何だかんだと  こじつけで
 時間つぶして  明け暮れる

『三』
これは旅だと  云い聞かせ
違うベッドに  おりました
終の棲み家と  きめている
俺の居場所は  ここなのさ
 ベルの合図で  かけつける
 家族いるだけ  しあわせさ

★ 緞子~どんす


『一』
明日あしたと  言うけれど ★1
明日食えると  かぎらない
そこで予定を  見てみると
無理な願いは  出来ないよ
食べる楽しみ  ないなんて
こんな悲しい  ことはない

『二』
何でこの世に  いるのかは
何も知らない  わからない
明日の希望に  燃えてたが ★2
明日に向えず  老いぼれた
思い出すたび  たどるたび
悔いが残るが  嘘じゃない

『三』
明日あしたと  言うけれど
明日来るかは  わからない
後のまつりの  口惜しさを
後で知るのは  みじめだな
明日の見込も  ないままに
明日は明日の  かぜが吹く

★1 明日~あした

★2 明日~あす 


主治医より一言

<<俺の居場所はここなのさ>>

 10日間の大学病院での入院生活でしたが、やっぱり自宅が1番と実感されたのではないでしょうか。今後も病気の早期発見、早期治療に努め、入院されないように努力しますので、宜しくお願いします。