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簡易懸濁法による投薬の工夫

監修:昭和大学 薬学部 倉田なおみ先生胃ろう手帳第三版より転載)

 胃ろうを造った方は、薬も胃ろうから入れることになります。この場合、錠剤のままでは胃ろうを通過しないため、従来は錠剤をつぶして水に溶かして注射器に吸い上げ、カテーテルから注入していましたが、袋から出すときにこぼしたり、カテーテルを詰まらせたり、全量が注入できないなど多くの問題が起こっていました。また、錠剤の種類によってはつぶして粉状にすると効果が減少したり、逆に効果が強くなってしまい副作用が起こりやすくなることもあります。専門的な知識がなく錠剤をつぶすことは、大変危険な行為なので避けるべきです。

 そこで誕生したのが、錠剤を粉砕したりカプセルを開封しないでも薬を経管投与できる簡易懸濁法です。処方された錠剤やカプセル剤をそのまま約55℃の温湯に入れて10分ほど放置して撹拌すると、多くの薬が自然に崩壊・懸濁して、注入器に吸い取り注入することができます。(10分以上の放置で崩壊しない場合には、錠剤に亀裂を入れてから温湯に入れます)。具体的には、下の写真のような容器を使用するとこぼすことなく簡単に注射器に吸い取れますが、カップなどに錠剤を入れて崩壊・懸濁させてもかまいません。

 簡易懸濁法は薬の安定性を投与直前まで保持でき、錠剤に印字された番号で薬品の確認ができ、中止変更時の対応が容易となり、経管投与できる薬品数も多くなり治療の幅が広がるなど多くのメリットがあります。

 ただし、この簡易懸濁法が向かない薬もありますので、必ず医師や薬剤師の指導の下に行いましょう

●例:水剤瓶を使用した投薬法

①1回分の薬を60mLの水剤瓶に入れます。カプセル剤もそのまま入れます
②約55℃の温湯を約20mL以上加え、蓋をしてよく振り10分位放置します。55℃温湯の作り方
③水剤瓶の中で溶いた薬を、専用の注射器に吸い上げ注入します。例:水剤瓶を使用した投薬法