●教育講演
演者の野中倫明先生 |
野中先生は、御自身の胃ろうとの出会い(小児から高齢者まで)を示しながら、先天性食道閉鎖症や胃食道逆流症(GERD)と胃ろう造設についての関連を症例を挙げて解説された後、木村病院でのPEG症例を紹介。胃内圧の上昇に伴う胃食道逆流で肺炎を繰り返していたため、胃ろうを経由して空腸栄養チューブに変更したことで在宅療養が可能になった方、TPNによる栄養投与と減圧胃ろうの併用でがん末期をご家族・知人と過ごして永眠された方などの経過を通して、以下のようにまとめをされた。
<当院PEG症例のまとめ>
- ・PEGの施行に当たり、その適応については事前に慎重に検討されなくてはならない。
- ・PEGは十分なるインフォームド・コンセントの下に、過剰な期待を持たせることなく、患者及び家族にとって有用な手術でなければならない。
- ・PEG施行後のGERDやSMA症候群などに迅速に対応しなければならない。
- ・栄養投与のみならず、消化管減圧としてのPEGも、有用な場合がある。
司会の長谷部正晴先生 |
続いて地域医療連携についても言及、問題点やPEG施行が不可能な状態で搬送されてきた症例を挙げながら、『状態の良いときに胃ろうを造っておけばよかったのに…』という後悔を残さないためにも、胃ろうの適応、造設時期の判断と地域連携の必要性を強調された。
そして、『患者の家庭状況や社会的背景に注意の上、密接な医療連携の上に、在宅療養の可能性、老人保健施設入所の可能性を探る必要性がある』と述べられ、医学的な適応の視点のみでPEGを施行し、地域医療連携の不備が一部の患者・家族に苦痛を与える結果にならないように、と結ばれた。まさに、前回の講演で長谷部先生がテーマとされた『まず、害の無いように』という医療の鉄則は、密接な地域医療連携体制にも当てはまるようだ。