HOME > トラブル&ケア > 経腸栄養剤の固形化

ドクター   三大トラブル<漏れ・嘔吐・下痢>の予防には
            経腸栄養剤の固形化も効果あり。
情報提供:
名古屋市 ふきあげ内科胃腸科クリニック 蟹江治郎先生
金沢市  小川医院 小川滋彦先生



図1 液体栄養剤を使用した経管栄養管理における問題点  経腸栄養剤が瘻孔周囲から漏れることがある(図1)のですが。蟹江先生はどのように工夫されていらっしゃいますか?

 経腸栄養剤に食品として市販されている『粉末寒天』を混ぜ、経腸栄養剤を固形化して注射器(カテーテルチップ)で注入する方法をお勧めします。固形化することにより,液体の経腸栄養剤に比べ,瘻孔から漏れにくくなります。



 栄養剤を固形化することのメリットは他にもあるのですか?

 液体の経腸栄養剤に比べ,胃から食道への栄養剤の逆流が減少するため,嘔吐や嚥下性肺炎の予防効果があります。
またこの固形化により,経腸栄養剤の胃内停滞時間が一般食品と同じになるため,液体経腸栄養剤で見られる下痢の頻度が少なくなります。
さらに、注射器を利用した一括注入が可能なため、注入時の座位保持の必要がなく体位交換の継続ができますし、介護者(医療従事者)の負担の軽減も期待できます。(図2)
図2 経腸栄養固形化の効果



 注射器にいれて投与するようですが、どのような手順で行うのでしょうか?

 寒天を混ぜた経腸栄養剤を液体の段階で注射器(カテーテルチップ)に充填し,冷却により固めたものを投与します。以下にその手順を示します。

〈蟹江先生による経腸栄養剤固形化ならびに投与方法〉

  ・経腸栄養剤:栄養剤の種類は問いません。
  ・粉末寒天:『かんてんクック』(伊那食品工業株式会社:長野県)  

①患者さんにとって必要な水分を量の冷水に寒天を混合します。
②水を煮沸し寒天を溶解します。
③人肌の温度に温めた経腸栄養剤を寒天溶解液と混合します。
   (水分200mLに対して1g程度の割合が目安です)

温めた経腸栄養剤を寒天溶解液と混合します
④③で作った経腸栄養剤を50mL注射器(カテーテルチップ)に吸引します。経腸栄養剤を50mL注射器(カテーテルチップ)に吸引します。
⑤冷蔵庫にて固めて保管します。
⑥固めた経腸栄養剤は投与前に室温に戻します。
固めた経腸栄養剤は投与前に室温に戻します
⑦注射器を胃瘻チューブの注入部に装着し、一括で注入します。
⑧必要な量だけ注射器による注入を繰り返します。
⑨空の注射器で10mL程度の空気を注入し、チューブ内の経腸栄養剤を胃内に押し込めます。
空の注射器で10mL程度の空気を注入し、チューブ内の経腸栄養剤を胃内に押し込めます。


注意1:冷蔵庫で保管して頂ければ翌日でも使用可能です。
(市販の杏仁豆腐をイメージして下さい)
注意2:経腸栄養剤の種類によっては固形化しにくいことがありますのでご注意下さい。
注意3:寒天の種類は問いません。
注意4:経腸栄養剤注入時も座位保持は特に必要ありません。

太郎先生の経腸栄養剤固形化のHPはこちらから


使用製品紹介:『かんてんクック』
販売元:伊那食品工業株式会社
〒399-4498 長野県伊那市西春近5074番地
TEL(0265)78-1121
かんてんクック


 食品の寒天以外にも栄養剤を固形化させるものがあると聞きましたが、小川先生はどのようになさっていらっしゃいますか?

 経腸栄養剤に「粘度調整食品」を反応させ、経腸栄養剤の粘度を増す方法をお勧めします。 
投与した粘度調整食品にひき続き経腸栄養剤を注入すると、胃の中で栄養剤がパテ状になり瘻孔とカテーテルの間の隙間を埋めて、それ以上、外へは漏れてこなくなります。
これは粘度調整食品に含まれる『ペクチン』という物質と、栄養剤に含まれる『遊離カルシウム』による反応を応用しています。


<小川先生による経腸栄養剤固形化ならびに投与方法〉

・経腸栄養剤:ツインライン(大塚製薬)/K-3S(キユーピー株式会社)
・粘度調整食品:REF-P1(キユーピー株式会社) 

①最初に粘度調整食品をカテーテルチップ等で、ゆっくりと手押し(ボーラス)で注入します。
②その後40分以内に経腸栄養剤(400mL)を通常どおりに注入します。
③栄養剤注入後30分は微温湯を注入しないでください。


注意1栄養剤は薄めないでください。増粘効果が得にくくなります。
注意2:経腸栄養剤の種類によっては粘度増強しないことがありますのでご注意下さい。
注意3ツインライン使用の場合は、REF-P1一袋に対し、300mLが適当です。



使用製品紹介:粘度調整食品『REF-P1』
発売元:キユーピー株式会社
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-4-13 お客様相談室 
TEL 0120-141122

粘度調整食品『REF-P1』

★ご紹介した製品は、蟹江先生、小川先生がお使いになっているものであり、他メーカーからも同様の製品は発売されております。