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Chapter2 経腸栄養
5.半固形化栄養剤 2.臨床的な知識①胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法


千里リハビリテーション病院 合田文則

合田文則

記事公開日 2011年9月20日

1.概念と原理(表1図1

図1 胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法の機序 合田文則(2006年)
図1 胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法の機序 合田文則(2006年)
  • 半固形化栄養材短時間注入法とは、口から胃にいたる過程でなんらかの障害がある患者さんに対して、できるだけ生理的な状態で胃内へ食塊や栄養材を入れる機能的バイパス術である。
  • 生理的な食物(半固形化栄養材)の摂取により胃本来の運動機能を発揮し、生理的な消化吸収が得られる方法であり、その結果、液体栄養剤でみられた本来、起こることのない医原性の合併症、すなわち液体栄養剤症候群(Liquid Formula Syndrome)を防ぐことができる新しい医療栄養法である。
  • 健常人が1回で食べる量を、健常人が口の中で噛み砕いてできる半固形の食塊にして短時間で摂ることにより、胃の適応性弛緩を惹起し、正常な胃貯留能と胃排出能が得られる消化管生理学に基づいた方法である。
表1 液体栄養剤症候群の定義 合田文則(2011年)

液体栄養剤症候群 (Liquid Formula Syndrome)

胃瘻からの経腸栄養において患者に起こる様々な合併症や精神的・肉体的な苦痛が液体栄養剤の注入に起因するもの

一次性液体栄養剤症候群 (Primary liquid formula syndrome)

栄養材に粘性がなく、非生理的な注入に起因する合併症

1) 瘻孔周囲への漏れなど皮膚症状(液体栄養剤に粘性がないことに起因)

2) 胃食道逆流に伴う誤嚥性肺炎などの呼吸器症状(液体栄養剤に粘性がないことに起因)

3) 下痢などの消化管症状(液体栄養剤の急速な消化管の通過に起因)

4) 耐糖能異常(経腸栄養時の過血糖)など内分泌異常(長時間の液体栄養剤注入に起因)

続発性液体栄養剤症候群 (Secondary liquid formula syndrome)

液体栄養剤の合併症対策に起因する症状

5) 廃用性萎縮、褥瘡

6) ADL・QOLの低下

7) 精神的、霊的な苦痛など

1.1 半固形栄養材とは

  • 半固形semi-solidとは、液体と固体の両方の属性をもつ物質で、液体より固体に近い半流動体と定義され、粘性があり自由に変形することを特徴とする。チキソトロピー性とレオロジー性を持ち、高粘度状態(ゲル)と低粘度状態(ゾル)に変化できる特性をもつものである。
  • 半固形化に用いられる半固形化剤には、高分子多糖類としてゼラチン、ペクチン、グアバー、寒天やでんぷん、さらに卵黄、ヨーグルトなど実に多くある。各々の半固形化剤には物性上の長所短所があり、単独あるいはこれらの組み合わせにより適切な粘度がえられるものを選択する。
  • 半固形栄養材の種類には、市販の半固形栄養剤、液体栄養剤に半固形化材を添加するもの、食事をミキサー化するミキサー食がある。

1.2 胃瘻からの半固形化栄養材の定義

  • 胃瘻からの短時間注入法で胃の生理的な運動と消化機能を発揮できるように粘度が調整された栄養材。その粘度は、胃内の食塊の生理的な粘度が望ましい。粘度の目安は、B型粘度計 (20℃、3~6回転/分)で20,000mPa・秒である。
  • 粘度を食物繊維など半固形化剤で調整した市販の半固形化栄養剤には、色々な粘度の商品があるので注意する。低粘度の自然滴下する栄養剤は液体栄養剤として扱い、持続あるいは間欠的注入法を用いる。

1.3 遵守すべき半固形化栄養材の粘度、注入量、注入時間

  • 半固形栄養材は、粘性摩擦力があり胃内ですべることない十分な粘度(20,000cmP・秒)が必要である。低い粘度では十分な効果が得られないばかりでなくトラブルの原因となる。
  • 1回の注入量を減らしたり、注入時間をゆっくりすると胃の適応性弛緩が得られずトラブルの原因となる。十分な量(300~600ml)を短時間(5~15分)で注入する。

1.4 半固形化栄養材短時間注入法に適した胃瘻カテーテル

  • 内腔が広く、チューブが短いものが注入しやすい。
  • チューブ式では20Fr以上あれば問題ない。
  • ボタン式ではボーラスチューブを用いるが、接続部の内径が狭いものや接続部のゆるいものは注入困難である。
  • パルーン式では胃の煽動運動とともにバルーンの位置異常をきたすことがあるので、注意が必要である。

1.5 胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法の適応と禁忌(表2

表2 適応と禁忌

適応

  • 器質的にも機能的にも正常な胃であり、正常な消化管運動や消化吸収能をもつ患者

特に有用な適応

  1. リハビリテ-ションの時間確保のため注入時間を短縮したい患者
  2. 誤嚥や嘔吐を繰り返す患者
  3. 吸収障害を伴わない下痢を繰り返す患者
  4. 瘻孔への漏れがある患者
  5. 頭頸部領域癌などによる閉塞のために胃瘻となった患者
  6. 安静が保てず注入時間を短くしたい患者

適応にならないもの

  1. 器質的に胃に異常のある患者(高度の食道裂孔ヘルニアのある患者,胃切除後の患者など)
  2. 機能的に胃に異常がある患者(機能性ジスペプシア)
  3. 消化吸収障害のある患者

禁忌

  1. 食道切除後の胃管に造設した胃管瘻(代用食道であり胃の貯留,排出の機能がないばかりでなく、噴門機能もないため禁忌である.腸瘻チューブを併用し.液体栄養剤を緩徐に注入すべきである)
  2. 胃全摘出後の腸瘻および腸瘻の患者(胃の貯留能がないため禁忌である.腸瘻では液体栄養剤を緩徐に注入すべきである)

1.6 胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法のメリット(図2

図2 半固形化栄養材短時間注入法のメリット 合田文則2006年
図2 半固形化栄養材短時間注入法のメリット 合田文則2006年
  • 液体栄養剤による経腸栄養法では胃内のスヘリが生じ、栄養剤が本来の方向に進まず誤畷性肺炎などの重篤な合併症を起こしている。その予防策として緩徐な長時間投与を推奨されたために胃瘻患者の予後やQOLの低下、介護の負担増、医療費の高騰をきたしてきた。
  • 胃内ですべらない粘度の半固形化栄養材を短時間で注入することにより、栄養材が消化管運動にともなって本来の方向に進むため、以下のような効果があり、胃瘻患者のQOLの向上と尊厳を高めることができる。
  1. 胃食道逆流による誤嚥性肺炎やスキントラブルが防止できる
  2. 下痢、タンピンク症状が防止できる
  3. 高血糖や消化管ホルモン分泌異常が予防できる
  4. リハビリテーションやADLの時間が十分確保できる
  5. 体位保持時間が短くなり褥瘡が予防できる
  6. 介護者の負担が軽減される
  7. 介護者の労働時間短縮やミキサー食導入により経済効果が得られる
  8. 在宅への移行が容易になる

2.胃瘻からの半固形化栄養材短時間注入法の実際

2.1 胃瘻への栄養材注入のアセスメント(情報収集と実施の判断)

2.1.1 胃瘻利用者の記録の確認
  1. 年齢、体重、病名を確認
  2. 胃瘻の種類(メーカー サイズ)と交換予定日を確認
  3. 胃瘻からの注入によるトラブルの既往を確認
  4. 前日の利用者の状態(記録)の確認
  5. 栄養材の注入方法、種類と量、注入時間、指示変更の確認
  6. 薬剤の種類と量、注入方法を確認
2.1.2 胃瘻利用者の観察、確認
  1. 手洗いの後、利用者を訪室 本人を確認
  2. 利用者の状態の確認
  3. 胸部や腹部の観察
  4. 胃瘻部皮膚の確認

以上に問題があれば、実施について医療スタッフを含め検討する。

2.2 胃瘻への栄養材注入の実施

半固形化栄養材 市販の半固形化栄養剤(テルミールPG ソフト)の場合

2.2.1 必要物品
図3 半固形化栄養材短時間注入法必要物品
図3 必要物品
  • ビニール袋、膿盆、カテーテルチップ、ハサミ、 テープ、マジック、ティシュなど
  • 市販の半固形化栄養剤(テルミールPGソフトなど)
  • 栄養剤専用の連結チューブ(PG連結チューブなど)
  • 加圧バッグ(PG加圧バッグ)
  • ボタン型の場合:専用の連結カテーテル(減圧用と注入用)
  • 薬剤の注入がある場合:薬剤、55度の白湯など
  • 水分補給がある場合:半固形化水ゼリー (PG ウオーターなど)あるいは白湯
  • カテーテル充填をする場合:酢水あるいはpH4前後の水ゼリー
2.2.2 半固形化栄養材や胃瘻栄養注入セットの準備
  1. 手洗い
  2. 半固形化栄養剤先端の硬化した部分を少し破棄する
  3. 半固形化栄養剤の注入回路の準備。栄養剤専用の連結チューブを栄養剤バッグに接続する
  4. チューブ内に空気が入らないように半固形化栄養剤を満たす
  5. 薬剤の調整
    簡易懸濁法により調整する。調整のタイミングは注入時間にあわせる
      ①55℃のお湯をカップに20mL 準備する
      ②錠剤やカプセル剤を、そのままカップのお湯に入れる
       10 分間の放置で崩壊しない錠剤は、錠剤を荒く砕いた後、お湯に入れる
      ③最長10 分間放置する
      ④カテーテルチップ注射器に、攪拌後の懸濁液を吸い上げる
      ⑤胃瘻カテーテルから懸濁液を注入する
2.2.3 胃瘻からの液体栄養剤注入の開始時のケア
  1. 栄養剤を開始することを説明する
  2. 座位あるいは30度から60度の仰臥位に体位を整える
  3. 胃瘻カテーテルを開放し、空気抜き・胃内残量を確認する
  4. 胃瘻カテーテルと接続
     ①ボタン型カテーテルでは、注入用専用連結カテーテルに変更、
      チューブ型カテーテルではそのまま接続する
     ②加圧バッグに半固形化栄養剤バッグをセットし送気球で加圧バックの圧を
      150 mmHg 以上300 mmHg 以下に調整し加圧する
      300 mmHg で注入できないときは注入を中止する
  5. 注入開始後、瘻孔周囲からの漏れがないか確認。ティシュこよりも新しいものに交換する
  6. チューブ類を整理し邪魔にならないようにする
2.2.4 胃瘻への栄養材注入中のケア

開始時と終了時には血圧を測定。注入中は、以下の点を観察する。通常5~15分で終了する。

  1. 症状の変化の観察(顔色や変化、苦悶の表情、呼吸状態、熱感、冷汗、悪心・嘔吐、息切れ、意識低下)
  2. 体位の確認
  3. 栄養剤の瘻孔からの漏れがないかの確認
  4. 異常行動の観察
2.2.5 胃瘻への栄養剤注入の終了時のケア
  1. 栄養剤バッグが平らになったら、加圧バックから取り出し、残りを用手的にねじって注入する
  2. 水分補給:半固形化水ゼリーの指示がある場合は、同じ要領でひきつづき加圧バックで注入する
  3. 内服薬の注入:内服薬のあるときは、あらかじめ簡易懸濁法で懸濁した薬剤を胃瘻カテーテルからカテーテルチップを用いて注入する
  4. カテーテルの洗浄
  5. 酢水あるいは水ゼリーの充填:チューブ型カテーテルでは、pH4以下に調整した酢水(酢:水=1:10)
  6. あるいは水ゼリーをカテーテル内に充填し細菌の増殖を予防する
  7. カテーテルの栓をする:チューブ型カテーテルでは、酢水や水ゼリーがカテーテル内に充填している状態で栓をする。ボタン型では専用連結カテーテルをはずし、栓をする

2.3 胃瘻からの栄養材注入後のケアと片付けおよび記録

2.3.1 胃瘻への栄養材注入後のケア
  1. 症状の観察:顔色や変化、苦悶の表情、呼吸状態、熱感、冷汗、悪心・嘔吐、息切れ、意識低下を観察する
  2. 胃瘻部の観察とティシュこより等の交換:ティシュこよりをはずし瘻孔周囲への栄養剤の漏れがないか観察。胃瘻カテーテルの回転を観察し新しいティシュこよりに交換する
  3. 半固形化栄養材の終了後には体位を保持は不要である
2.3.2 胃瘻栄養器材の片付けと洗浄
  1. ボトルなど器材:食器と同じように中性洗剤で洗浄する。流水ですすぎ食器乾燥機などで乾燥する
  2. チューブやバッグなどの器材:チューブ内は栄養剤などが詰まっているため、ブラシを用い内部に残渣が残らないように中性洗剤で洗浄する。その後、0.01%次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン)につけて消毒し、使用前に流水で十分にすすぎ使用する
  3. 残渣がどうしても取れないときは新品に交換する
2.3.3 栄養材注入実施の記録

栄養材注入実施を記録する。記録する項目は

  1. 実施時間
  2. 栄養剤の種類と量、水分の量
  3. 利用者の状態(全身状態と胃瘻部の状態)
  4. 開始時の胃内残量
  5. 実施者名

3.半固形栄養材短時間注入法における日常のケアの相違点
(液体従来法と比較して)

●変わらない点
  1. 口腔ケア:不顕性肺炎の原因になるため毎日の十分な口腔ケアが必要である。
  2. スキンケア:瘻孔部は汚れたら拭くといった基本的なスキンケアが必須である。
  3. 胃瘻カテーテルの管理:カテーテル内に残渣が残らぬよう管理する。酸性に調整された食酢や水ゼリーをカテーテル内に充填することも有用である。また定期的なカテーテル交換も行う。
  4. 栄養材の管理:細菌汚染防止のために栄養材は開封後8時間以内に使用し、小分けや作り置きや残ったものの再利用は行わない。
  5. 経口摂取および咳反射の増強:言語療養士のもと積極的な嚥下訓練を行うことQOL改善に有用である。制限はない。
  6. 入浴:何も貼らずに入浴可能である。制限はない。
  7. 運動・リハビリテーション:積極的な運動・リハビリテーションはQOL改善に有用である。制限はない。
●異なる点
  1. 栄養材注入量・注入速度の調節:液体従来法では、胃運動の低下による胃食道逆流および誤嚥性肺炎やスキントラブル、消化器症状の予防の観点からできるだけ緩徐に注入することが推奨されてきたが、半固形化法では 栄養材により十分に胃が伸展することにより胃の運動を惹起することが目的であるため十分粘度がある栄養材を短時間で十分量注入する。
  2. 注入時の体位:液体従来法では30度の仰臥位で注入し、注入後1時間程度姿勢を保持することが推奨されてきたが、半固形化法では、腹部を圧迫しない体位であれば30度の仰臥位でも90度の坐位でもよい。また注入後の安静は不要であり体位の制限はない。
  3. 胃蠕動運動促進薬の使用:液体従来法では、胃の適応性弛緩が得られないため胃の運動低下がみられ胃蠕動運動促進薬が使用されたが、半固形化法では不要である。
  4. 胃酸分泌の制限:液体従来法では、正常な消化管ホルモンの分泌が行われないため、時に胃酸過多になる患者が存在したが、半固形化法では栄養材の摂取に応じて正常な消化管ホルモンが分泌されるため胃酸分泌抑制薬は不要である。胃酸分泌抑制薬は空腹時に胃内のpHを酸性に保つこと阻害し胃内での細菌の繁殖をおこすため、潰瘍性病変のない患者では禁忌である。

文献

  1. 合田文則:“胃瘻からの半固形短時間摂取法ガイドブック”医歯薬出版、東京、2006
  2. 合田文則:“胃ろうPEG管理のすべて 胃ろう造設からトラブル対策まで”医歯薬出版、東京、2010
  3. 合田文則:“胃ろうPEGケアのすべて 見てわかるDVD付”医歯薬出版、東京、2011

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