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Chapter2 経腸栄養
4.経腸栄養に用いられる製剤および食品6.増粘剤、ゲル化剤


岡山済生会総合病院 内科 医長 犬飼道雄

犬飼道雄
記事公開日 2011年9月20日

2015年10月23日改訂

増粘剤やゲル化剤は、嚥下障害患者における摂食・嚥下リハビリテーションや胃瘻患者における半固形栄養などでしばしば用いられる。本稿では胃瘻患者における半固形栄養で用いられる増粘剤やゲル化剤等について概説する。

1.はじめに

増粘剤やゲル化剤は主に液体栄養剤の粘度を上げる目的で使用される。以前はこの形状変化を固形化、半固形化、ゲル化、ゾル化、増粘化、粘度増強などさまざまな用語で表現していた。しかし2007年9月に栄養材形状機能研究会が発足し、通常の液体栄養剤に対して形状を変化させた栄養材を『Semi-Solid(半固形化)』と総称することが決定し、現在では栄養剤の形状変化を半固形化で標準化するよう啓発活動が行われている。

2.半固形化剤の分類

半固形化する方法としては、寒天やゼラチン・全卵などの食材で調理する方法と市販の半固形化剤を利用する方法がある。しかしゼラチンは寒天に比べて粘度が高い反面、体温など比較的低い温度で融解するため胃内で容易に液体になる。また全卵は必要な粘度にするには難しく、衛生上の管理やタンパク量増加による熱量増加の問題がある。したがって食材による調理は寒天が主体となり多くの症例報告がなされている。(表11)

表1 寒天
表1 寒天)

市販の半固形化剤は、リキッドタイプと粉末状タイプがある。

リキッドタイプは、常温で混ぜるだけで簡単にすばやく半固形化できるメリットがあるが、原則的に水やお茶を半固形化することはできない。(表21)

表2 リキッドタイプ
表2 リキッドタイプ

粉末タイプは常温で水に混ぜてから液体栄養剤と混ぜるため、ひと手間増えるデメリットはあるが水分を同時補給できるメリットがある。(表31)

表3 粉末状タイプ
表3 粉末状タイプ

半固形化剤でも嚥下食に用いられるものは、液体栄養剤を高粘度にすることは難しいため使用には注意が必要である。

半固形化剤の原料として、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、デンプン、グアーガム、キサンタンガムなどがしばしば使用されている。デンプンやデキストリンのみでできているものは粘度が低下しやすく水分のしみだしがあるため、最近の商品はさまざまな種類の原料が組み合わせて用いられている。

3.代表的な半固形化剤

3.1 寒天

寒天は紅藻類を中心とした海藻から得られる天然多糖類で、熱水により抽出を行う食品である。一般的に調理用として流通している寒天は“粉末寒天”であるが、100℃の熱湯で2分間煮沸する粉末寒天(商品名:寒天クック、伊那食品工業)と80℃以上の湯で攪拌する即溶性粉末寒天(商品名:手づくりぱぱ寒天、伊那食品工業)にわかれる。

寒天を使った半固形化の方法として蟹江2)は、煮沸または80℃以上の湯に攪拌して溶解した寒天に、あらかじめ人肌程度に温めておいた液体栄養剤を加え、よくかき混ぜ、固まらないうちにシリンジで吸引し、清潔な場所において固めるとしている。100mlの水を固めるために必要な寒天は1g程度で、経腸栄養剤では200mlに1g程度が目安の硬さに適当であるといわれている。寒天は安価である一方、この方法におけるポイントや問題として、経腸栄養剤の種類や濃度によって寒天の量が異なる、加熱が必要である、調理自体に手間や時間がかかり、さらに固まるまでの時間がかかる、シリンジの数と置く場所が必要である、加熱によりたんぱく質やビタミンなどが失活する可能性がある、作り置きができないなどがある。また寒天自体にも吸水性・便秘や脱水、栄養吸収障害、ヨード含有量などの解決すべき問題も多い。

3.2 REF-P1

REF-P1はペクチンを水に溶解・殺菌した商品で、カルシウムイオンと反応して液体栄養剤をゲル化させる。REF-P1自体は粘度が低いので、8Fr以上のチューブであれば経鼻胃管であっても投与可能で、また胃内だけでなく小腸での半固形化の報告も多くある3)。使用方法はREF-P1をまず注入し、チューブ内で液体栄養剤と反応するのを防ぐ目的で20mlの水を注入した後、チューブの先端が胃内であれば60分以内・小腸内であれば30分以内で液体栄養剤を注入する。多くの栄養剤に対して簡単に混合するだけで固形物が調整できるリキッドタイプの半固形化剤で、加熱の必要がなく攪拌するだけで液体栄養剤が半固形化し冷やすと硬さをますなどの特徴がある。

4.半固形化剤による液体栄養剤の半固形化における問題点

半固形化剤を用いて液体栄養剤を半固形化するのは、慣れれば短時間で簡単・確実にできる良い方法であり、現状では病態別の栄養剤を用いる場合はこの方法に限られる。しかし混合・調整の手間がかかり当然作り置きはできず、半固形化剤は別途購入せねばならない。そして半固形化剤を用いて液体栄養剤を半固形化し胃瘻から摂取するには、①液体栄養剤と半固形化剤の配合変化、②シリンジ・ドレッシングポットの使用、胃瘻チューブの通過、消化管の蠕動運動、③胃液など消化液や水分との混和など、化学的・物理的変化をうけることを考慮する必要がある。

4.1 液体栄養剤と半固形化剤の配合変化

既存の栄養剤の組成強化のためにある種の栄養素を配合・調整したところ沈殿物等が生じ回収を行った事例があるなど配合変化はしばしば認められる問題である。しかし現場では分かりにくく、現状では各メーカーから提供される情報や液体栄養剤と半固形化剤の一般的な組み合わせを守ることでしか配合変化への対策を講ずることができない。

田中ら4)は、イージーゲル、リフラノン、ファセットパウダーをツインライン、エレンタール、アミノレバンEN,エンテルードに添加混合した場合、イージーゲルではいずれの栄養剤も標準量あるいはその半量であっても、半固形化したと報告している。一方リフラノンやファンセットパウダーは標準量では半固形化せず液体のままで、リフラノンを2倍量添加した場合エレンタールとアミノレバンENは半固形化したとしている。

岡田3)は、イージーゲルを用いて各種経腸栄養剤の固形化に関する検討を行い、エンシュアリキッドやインパクトなど一部の栄養剤で半固形化できなかったと報告している。

液体栄養剤と半固形化剤を混和しても半固形化しない場合は存在する。これは各々の成分に原因があると考えられる。たとえばカラギーナンは蛋白質やミネラルと相互作用しゲル化する性質をもつ。したがってカラギーナンを主とする半固形化剤は、蛋白質やミネラルの少ない液体栄養剤であれば半固形化しにくい。またイージーゲルやジャネフREF-P1などの半固形化剤は、水溶性食物繊維であるペクチンからなっていて、遊離カルシウムと結合することで液体栄養剤を半固形化する。したがって遊離カルシウムの少ない液体栄養剤は半固形化しにくいため、牛乳をまぜることがしばしば行われている1)

4.2 シリンジ・ドレッシングポットの使用、胃瘻チューブの通過、消化管の蠕動運動

栢下ら5)は、液体栄養剤に半固形化剤を添加する際、ハンドミキサーなどで強力に拡散した場合は、特にキサンタンガム系の半固形化剤はより強い粘度上昇を起こすとしている。
伊藤ら6)は、寒天を用いて液体栄養剤を半固形化した場合ディスポーザブルシリンジからの投与時の平均離水率は36.6%であったと報告している。ディスポーザブルシリンジは半固形栄養材の注入方法のなかで76%と最も多く使用されている。離水率が高ければ、当然半固形化のメリットは失われる。離水率の高さは物理的な力により、寒天ゲルの規則正しい網目状の三次元構造が破壊されることによると考えられている。

4.3 胃液など消化液や水分との混和

田中ら4)は、イージーゲル、リフラノン、ファセットパウダーを添加混合したツインラインの人工胃液および人工腸液中での固形物残存率を検討し、イージーゲル添加物は人工胃液中では固形物の形状を保持し、人工腸液中では15分後には分散したが、リフラノンおよびファンセットパウダー添加物は2倍量添加しても、人工胃液中で速やかに分散し、形状保持ができなかったと報告している。またエレンタール、アミノレバンEN,エンテルードでも同様の検討・結果を報告し、同時に対象群として0.5%寒天固形物の検討も行い、人工腸液へ注入15分後に固形物が残存していたことを明らかにしている。

イージーゲル添加物における人工胃液と人工腸液での崩壊性の違いは、イージーゲルに含まれるペクチンがPHによりゲル強度が変化し、PHが下がるに従いゲルが固くなるためと推察される。すなわち、PHの低い人工胃液ではゲル強度が増加するが、中性域の人工腸液では比較的弱いゲルを形成していることで攪拌などの物理的力で崩壊し溶解すると考えられる。そのためイージーゲル添加物は腸管内で蠕動運動で液体に変化し、腸管吸収への影響は少ないものと考えられる。一方0.5%寒天固形物は腸管内で固形物として残存する可能性があり、寒天によるイレウス発症例の報告7)があるように、腸管吸収や運動に影響を与える可能性は否定できない。

また丸山ら8)はK-4SPとREF-P1を添加混合し、胃液の酸度ごとの形状変化を検討した。胃液の酸度が強い場合は主に胃液と凝集物を作り、胃内で細かなペクチンゲルが浮遊する不均一な液体状形態となり、粘度も増強する。胃液の酸度が弱い時にはREF-P1は栄養剤中の遊離カルシウムと反応して、均一化した粘度増強液体状態となる。したがって半固形化には胃液の酸度、つまり内服薬が関与することが明らかになった。

5.液体栄養剤の粘度に影響を与えるその他の因子

小沢ら9)は、食物繊維含有経腸栄養剤(ハーモニックF)と食物繊維を配合しない経腸栄養剤のPH2,4,6における粘度変化の検討を行い、ハーモニックFの方が酸性条件下で粘度が有意に高くなることやPH2.5における粘度の経時的変化をみたところ時間とともに粘度は低下するものの、ハーモニックFの方が20分経過しても有意に高いことを明らかにしている。食物繊維の存在や蛋白凝集が起こりやすい蛋白質の等電点への接近も、半固形化の機序に重要な役割を果たすことが原因として考えられている。

6.おわりに

近年半固形化栄養材の有用性があきらかになり、それに伴い多くの半固形化栄養剤や半固形化剤が販売された。一方で半固形化栄養材の粘度により有用性に違いがあるというコンセンサスもできつつある。 半固形化剤により液体栄養剤がどのような半固形化栄養材に変化するか知ることは重要であるが、半固形化剤と液体栄養剤の関係やその他の要素を含めた総合的な検討はあまり多くなされていない。半固形にするメリットを胃瘻患者やその家族、医療関係者などが十分うけることができるように、さまざまな角度から増粘剤等を検討し、多くの情報が発表・周知されるべきである。

文献

  1. 岡田晋吾:病院から在宅までPEGケアの最新技術,照林社,東京,P121,2010
  2. 蟹江治郎:胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践-胃瘻のイロハからよくわかる!,日総研出版,名古屋,133-140,2004
  3. 大石英人:経腸栄養の最新トピック 13:1-4,2013
  4. 田中弥生ほか:静脈経腸栄養 23:255-262,2008
  5. 栢下淳ら:東口高志:徹底ガイド 胃ろう(PEG)管理Q&A,総合医学社,東京,P140-141,2011
  6. 伊藤由紀ほか:静脈経腸栄養 21:77-83,2006
  7. 北東大督ほか:日臨外会誌 67:1567-1571,2006
  8. 丸山道生ほか:癌と化学療法 35:29-31,2008
  9. 小沢浩ほか:静脈経腸栄養 20:59-63,2005

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