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Chapter2 経腸栄養
4.経腸栄養に用いられる製剤および食品
3.食物繊維


社会保険中央総合病院栄養科 斎藤恵子

斎藤恵子

記事公開日 2012年11月6日

1.食物繊維とは

食物繊維は、以前は「非栄養素」として扱われていた。近年は研究が進み、その生理作用が明らかになるにつれ、五大栄養素とは違う第6の栄養素ともいわれるようになった。食物繊維の定義はそれぞれの組織により少しずつ異なるが、小腸で消化できない糖質ということは共通している1)

消化され約4kcalのエネルギーを産生する糖質は炭水化物で、小腸では消化されず、大腸で腸内細菌の発酵によってエネルギー(約0~2kcalと推測されている)を産生する糖質を難消化性炭水化物(食物繊維)と呼ばれている2)

2.食物繊維の必要量

2010年に改訂された日本人の食事摂取基準(2010年度版)によると、食物繊維の摂取基準は男性で19g以上、女性で17g以上とされている。またこの食事摂取基準には、食物繊維をはじめとする難消化性炭水化物が生活習慣病と深く関わっていることが明らかになるに伴い、食物繊維や難消化性オリゴ糖等を添加した加工食品が多く市場に出回り、また摂取量が増えてきており、これらを大量に摂取すると大腸内浸透圧が高くなり、浸透圧性の下痢を誘発しやすくなるので、1回の摂取量には十分注意する必要があると記載されている。

3.食物繊維の種類(表1)

食物繊維は、抽出して精製したときの水に対する溶解性で不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けることができる。

表1 食物繊維の種類

不溶性
食物繊維

植物性
由来

細胞壁

セミロース、リグニン、ヘミセルロースA、C

動物性由来

キチン、キトサン、コラーゲン

水溶性
食物繊維

植物性
由来

細胞壁

ペクチン、ヘミセルロースB

ガム質

グアーガム、アラビアガム、コンニャクマンナン

海藻多糖

アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天

微生物

キサンタンガム

動物性由来

コンドロイチン

オリゴ糖

マルチトール、ガラクトオリゴ糖、難消化性デキストリン

合成・修飾多類

ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース

4.食物繊維の生理効果

生理効果は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は異なるものと同じものがある(表2)。便通に関しては、不溶性食物繊維は腸を通過する速度が速く、食品の吸収残渣のかさを増加させ便通改善をする。水溶性食物繊維は便のやわらかさを保ち、水分が必要以上に吸収され過ぎるのを予防し便通を改善する。

表2 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の一般的な生理効果

生理効果

水溶性食物繊維

不溶性食物繊維

発酵性

広範囲で高い

限定的で低い

腸内pHの変化

低下する

変化なし

胃内滞留時間

長くなる

長くなる傾向がある

胆汁酸の結合

結合する

結合しない

糞便重量

寄与しない

増加させる

血清コレステロール

低下させる

不明

食後血糖値の上昇

抑制する

不明

文献3)倉沢新一 食物繊維の定義と分類 臨床栄養 Vol.84 No.3 1994.3より改変

短鎖脂肪酸

食物繊維の生理効果でもっとも重要なものは、腸内細菌によって発酵されることである。食物繊維は種類により腸内で産生されるエネルギー量が異なることがわかっている。水溶性食物繊維のうち、完全に発酵分解を受けるものは2kcal/gで、発酵を受けないものは0kcal/g と規定されている。エネルギー推定値が高いほど、腸内で短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸)の産生量が多い(表3)。発酵分解により各種短鎖脂肪酸が作られるとともに、腸内細菌やpHに変化を及ぼす。

表3 食物繊維素材の有効エネルギー量推定値
食物繊維素材 発酵分解率 エネルギー推定値

グアーガム分解物、小麦胚芽、ペクチン、難消化性でんぷん(湿熱処理でんぷん)等

75%以上

2kcal/g

難消化性デキストリン
アラビアガム等

25%以上75%未満

1kcal/g

ポリデキストロース、セルロース、寒天、サイリウム種皮、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム

25%未満

0kcal/g
ほとんど短鎖脂肪酸を
産生しない

酪酸は、大腸粘膜の重要なエネルギー源であり、必要量の約60~80%が供給されることが知られている。その他、大腸粘膜の増殖促進、血流増加作用、炎症性サイトカインの発現抑制などの報告がある4)

また、酪酸は大腸粘膜細胞のエネルギー源になり5)、絨毛の伸長や運動性の改善、水分、Na、Ca、Mgなどの吸収を促進し、下痢の改善につながる。また腸内のpHが低下するので、クロストリジウムなどの腐敗菌の増殖が抑制され、ビフィズス菌優位の腸内細菌叢となり腸内環境が改善される。プロピオン酸は、吸収され血中に移行し肝臓で代謝され、コレステロール低下作用が報告されている6)。酢酸は大腸粘膜の血流増加、運動促進などの報告があり、便通異常にも効果がある。食物繊維が発酵して産生されたこれらの短鎖脂肪酸は、エンテログルカゴンの分泌を促進し、大腸粘膜や小腸微絨毛を増殖させるといわれている7)

図1 回腸絨毛の形態変化に及ぼすグアーガム分解物の影響
図1 回腸絨毛の形態変化に及ぼすグアーガム分解物の影響

図1は回腸絨毛の形態変化に及ぼすグアーガム分解物の影響を示したものである。無繊維の経腸栄養剤を2週間ラットに与えると、回腸の絨毛が固形飼料を与えた場合①に比べて15%も委縮する②。しかし、グアーガム分解物を1.5%添加した経腸栄養剤を与えると、委縮は見られない③8)。これらのことから、食物繊維の大腸発酵産物である短鎖脂肪酸のひとつである酪酸は腸細胞の増殖作用を有すると考えられる。

小腸機能の客観的な評価方法としてDAO(diamine oxdase)活性が用いられている。小腸の組織中のDAO活性は、血中DAO活性と有意に相関すること、長期絶食や手術などのストレス、抗癌剤等により腸管上皮粘膜の萎縮が引き起こされ、DAO活性が低下することが知られており、血中のDAO活性は小腸粘膜が正常に機能していることを評価する重要なマーカーであると考えられている9)

図2 栄養管理法の相違に伴う血漿中DAO活性の変動
図2 栄養管理法の相違に伴う血漿中DAO活性の変動
Tanaka Y, Kurume Medical J. 50 :131-137, 2003.

田中らは、(図2)栄養管理法により血中DAO活性が変動することを明らかにしている10)。絶食TPN管理期、TPN管理下EN開始期、EN維持期、EN+水溶性食物繊維(0.5g/㎏/日 グアーガム分解物 サンファイバー®)、食事摂取と病態の回復及び食物繊維量が多くなるにしたがって、血中DAO活性は上昇し、特にEN維持期以降は絶食TPN管理期に比べて有意な回復を認めており、腸管が正常に機能していることが示唆された。

図3 DAO値
図3 DAO値

当院では手術を受けるCD患者に、術前から食物繊維(グアーガム分解物)とビフィズス菌含有食品(GFine)を摂取する群とプラセボ摂取群に分けてDAO活性を観察した。血液中のDAO値は、開始前を100%としてGFine群は術後1週目で有意に増加を示し174%、術後2週目で205%となった。一方プラセボ群は術後1週目で127%、術後2週目で119%であった。(図3)食物繊維、ビフィズス菌を摂取することにより、DAOが有意に上昇していることから、小腸粘膜の恒常性が保たれたと考えられた。またそれにより、排便回数の減少及び腹部膨満感が改善したことも認めている。

Bacterial translocationの予防

TPN管理などで絶食期間が長期に亘ると小腸微絨毛が萎縮しBacterial Translocationのリスクが高くなるが、食物繊維を摂取することにより、発酵し産生された短鎖脂肪酸は大腸から吸収され、エンテログルカゴンの分泌を促進し、大腸粘膜や小腸微絨毛を増殖させ、これがBacterial translocation発生を抑制すると考えられている7)

下痢・便秘改善

経腸栄養を施行する際の合併症として最も多くみられるのが下痢・便秘などの便通異常である。下痢の原因として、投与速度、栄養剤の浸透圧、脂肪の消化吸収障害、低栄養、栄養剤の温度、汚染等が考えられる。便秘の原因として、脱水、宿便、閉塞などが考えられるが、これらの便通異常に共通して考えられることは腸内環境の悪化、食物繊維の入っていない栄養剤などがある。主な流動食に含まれる食物繊維量については表4参照。

表4 100kcal中の食物繊維量
製品名 食物繊維量 製品名 食物繊維量

エレンタール

0

リカバリー
ニュートリート

1.5

ツインライン

0

ジェビティEx

1.06

ラコール

0

メイバランス
1.0Wsバッグ

1.0

エンシュア
リキッド

0

メディエフバッグ

1.2

エンシュアH

0

サンエットSA
バッグZ

2.0

メディエフ
プッシュケア

1.2

F2αバッグ

2.0

ハイネゼリー

1.1

ライフロン6バッグ

0.5

カームソリッド

1.26

K-4S

2.0

F2ショットEJ

1.5

アイソカルBag2K

2.0

PGソフトEJ

0.37

L-8バッグ

0.7

表4の通り、薬品扱いの経腸栄養剤で食物繊維の入っている製品はない。これらの経腸栄養剤を長期に使用することによって、小腸の微絨毛が委縮しBacterial translocationや、下痢・便秘などの便通異常のリスクは高まる。これらの栄養剤を使用する際は、食物繊維を付加することを推奨する(食物繊維については表5参照)また、食品扱いの経腸栄養剤でも食物繊維含有量の少ない製品があり、症例によっては付加した方がよい場合もある。

表5 市販されている主な食物繊維
商品名 原材料
1袋
当りの
食物
繊維
量(g)
1日の
摂取
目安
(袋)
発売元 経管栄養
への使用

ヘルッシュ
ファイバー

ガラクト
マンナン


無味無臭 3 1~3

味の素製薬

イサゴール

サイリウム


アセロラ 4 1~3

フィブロ製薬

×

イサゴール
ゴールド

サイリウム


グレープ
フルーツ
4 1~3

フィブロ製薬

×

E・D・F

サイリウム


無味無臭 2.6 1~3

フィブロ製薬

サン
ファイバー

ガラクト
マンナン


無味無臭 5 1~3

太陽化学

REF-P1

ペクチン

液体 無味無臭 1.4 1~3

キユーピー

アップル
ファイバー

ペクチン


りんご 1.1 4~6

キユーピー

キャロラクト

人参末など


微甘味 1.12 4~6

三和化学

オクノス
食物せんい

小麦でんぷん


無味無臭 5 1~3

ホリカフーズ

パイン
ファイバー

難消化性
デキストリン


無味無臭 4.6 1~3

三和化学

フォー

難消化性
デキストリン


さっぱり
10 100ml

ニュートリー

ブイ・
アクセル

人参末など


無味無臭 0.1 1~3

ニュートリー

Gfine

ガラクト
マンナン


顆粒 5 1~3

アイドゥ

グルタミン
F

ガラクト
マンナン


柑橘系 5 1~3

アイドゥ

グルタミン
CO

-


さっぱり味 0 1~3

アイドゥ

オリゴメイト
S-HP

ガラクト
オリゴ糖


甘味 - 6~12g

ヤクルト

オリゴワン

乳糖果糖
オリゴ糖


甘味 - 1~3

H+Bライフ
サイエンス

食物繊維を投与することにより、腸内が弱酸性に保たれ腸内細菌叢が改善され、酪酸などの短鎖脂肪酸が腸内でつくられ(水分調整を担う)腸粘膜状態を改善するなどの作用から、下痢及び便秘を改善することができると考えられている。

便性を整える(特に下痢を予防する)ことは、褥瘡の予防及び悪化防止にもつながるので、非常に大切なものの一つと考える。

血糖及びGI値の改善

食物繊維は血糖の上昇を抑制するという報告も多い。食パンや米飯など「高GI食品」に分類される食品と一緒に食物繊維を付加することで、GI値(グリセミック・インデックスの略で、食後血糖値の上昇度を示す指標のこと)食品のGI値を低下させることが認められている。また、血糖値が上がりやすい11名に、米飯群と、米飯と水溶性食物繊維2.5gを同時に摂取した群とで食後2時間までの血糖値を測定したところ、水溶性食物繊維を摂取した群の方が、食後血糖の上昇を抑制できたことが確認されている(図411)

図4 食後2時間までの血糖値を測定
図4 食後2時間までの血糖値を測定
日本農芸化学学会大会(2004)

食物繊維を摂取すると胃内容物の粘度が増し、移動速度が遅くなり、小腸腔内でのグルコース拡散速度が低下し糖質の吸収を穏やかになり血糖値上昇を抑制されたと考えられる。

また、インスリンの作用増強も示唆されている。

経腸栄養剤の糖質の多くはショ糖、ブドウ糖、デキストリンであるので、投与の速度等によっては血糖値上昇のリスクは高い。食物繊維を経腸栄養剤施行前に投与するあるいは、食物繊維の多い製品を選択することにより、血糖上昇のリスクの低減が図れる。

逆流防止

REF-P1(キユーピー)は、ペクチンを原材料とした食物繊維であり、経腸栄養剤の粘度調整として使用される。流動食や経腸栄養剤の中のカルシウムとペクチンが結合し、とろりとした半固形化が出来る。まず、REF-P1を注入しその後経腸栄養剤を注入すると、経腸栄養剤が胃内でとろりとした半固形化となり、胃食道逆流を防ぐことができる。また、食物繊維の補給にもなる。

5.サプリメントとしての食物繊維

現在市販されている主な食物繊維について、表5示す。

6.食物繊維の投与方法

近年は、衛生面から経腸栄養剤の中には何も混注しないことが推奨されており、食物繊維を注入するタイミングは、経腸栄養剤を投与する直前あるいは直後に注入する方法がある。注入のタイミングでの便性に違いなどの報告はない。

食物繊維は20~30ml程度の水で溶解し、シリンジで投与するとよい。表5中のEDFについては、水に溶かした後短時間でゲル化するため、チューブは14Fr以上の太いものを使用する必要がある。EDFを約100mlの水に溶かし、シリンジで2~3回に分けて注入する。

いずれの食物繊維も投与後は必ず20~30mlの水または酢水でフラッシュし、チューブの内腔を洗い流す必要がある。

文献

  1. Cummings JH,Stephen AM. Carbohydrate terminology and classification. Eur J Clin Nutr 61(Suppl 1):S5-18, 2007
  2. 奥恒之、山田和彦、金谷健一郎、各種食物繊維素材のエネルギー推定値 日本食物繊維研究会 6;81-6, 2002
  3. 食物繊維の定義と分類 倉沢新一 臨床栄養 Vol.84 No.3 1994.3 254-258
  4. Di Sabatino, A, Morera, R., Ciccocioppo, R., et al; Oral butyrate for mildly to moderately active Crohn’s disease. Aliment Pharmacol Ther.,22:789-794,2005
  5. In:Short Chain Fatty Acids : Metabolism and clinical Important.pp67-70 1991
  6. Ann. Nutr. Metabol. 32:97-107 1988
  7. 田中芳明:消化管機能と経腸栄養管理の実際、静脈経腸栄養、15:123-136,2000
  8. M. Komai、F. Takehisa & S. Kimura: Nutr.Rep, Int.69, 225 1982
  9. Luk G.D,. Bayless,T.M., baylin,S.B,; Plasmapostheparin diamine oxdase. Sensive provocative test for quantitaing length of acute intestinal mucosal injury in the rat. J.Clin.invest,71;1308-1315,1983
  10. 田中芳明、他:栄養―評価と治療、18:551-556,2001
  11. 日本農芸化学学会大会(2004)

関連製品情報

経腸栄養に用いられる製剤・食品

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