図 栄養補給の投与経路
表 PEGの禁忌
栄養補給の投与経路
(ASPENガイドラインより)
PEGの禁忌

●PEGの手技
PEGは通常、内視鏡医と術者の二人の医師に看護婦1~2名が補助して行います。慣れれば外科医だけではなく内科医でも行うことができます。内視鏡を胃に入れて、胃壁と腹壁を密着させて、おなか側上から指先で造る場所を決めます。
内視鏡を入れたりPEGの処置(小切開など)に伴う苦痛を和らげるために、軽いセデーション(薬を使用して意識をボーっとさせる)を併用します。ルート確保(点滴をとる)と術中モニターは必須で、定期的に血圧を測ったり、パルスオキシメーター(指にサックのようなものをはめて、患者さんの心拍数と酸素飽和度-血液の中に溶けている酸素濃度-をリアルタイムに表示する)のチェックは必要です。看護婦は、患者さんの口腔内吸引と温かい励ましを行います。
手技は、プル法、プッシュ法、イントロデューサー法の3通りがあります。

●PEG管理とキット選択

PEGは低侵襲手術ですが、患者さんが高齢者で栄養状態の不良な併存疾患(高血圧や糖尿病などの合併症)を持っていることが多いので、日本では原則として入院治療が行われています。欧米では医療費の問題から、日帰り手術(外来手術)が多くなっています。
患者さんの全身状態が押しなべて悪いことから、術前評価は入念に行うべきで、もし全身状態の低下が著明な場合には、まずその状態を改善してからPEGに臨むべきです。絶対的な禁忌例(表)は減少してきており、癌性食道狭窄例には内視鏡的な拡張術や化学・放射線療法の併用、胃食道逆流症には胃瘻を介して小腸にチューブを留置するPEJが試みられています。

感染(化膿)防止に、術後2~3日間の抗生物質投与を行い、術前絶食期間が長く(術前に食べていなかった期間が長い)、おなかからの栄養が早期に増やせない場合には、経腸栄養と高カロリー輸液(TPN:Total Parenteral Nutrition)を併用しながら、徐々に経腸栄養に移行させていきます。PEGの管理で重要なことは、患者さんの多くが高齢者で全身状態が低下していることから、個々の症例に見合ったきめ細かい術前・術後管理をすることです。
  施行後、瘻孔が完成する約3~4週以降のPEG管理は、PEGキットの改良により大きく変化しました。従来の胃瘻は尿道バルーンなどの既存の医療品を流用したものであったために、創部への親和性、耐久性、自然抜去などのトラブル、交換の繁雑さなど多くの管理上の問題点を抱えていましたが、胃瘻専用のキットの開発によってそれらの問題点はほとんどが改善されました。とりわけ創部ケアは、材質がシリコンやポリウレタンに変わったために感染や臨床上問題となる肉芽形成は少なくなり、消毒やガーゼ交換のケアから積極的にお風呂に入ったり、蒸しタオルで清拭する創部ケアに変化してきました。

また、近年開発されたボタン型胃瘻は、従来の胃瘻の欠点であった体外に露出したチューブがなくなることで、患者さんの使い勝手は格段に改善しました。具体的には、栄養剤の付着によるチューブ内の汚染や外見的な問題、さらには意思疎通の得られない患者さんへの自己抜去防止の名の下で行われる四肢抑制などが大幅に解決されました。それらは、どれも軽視できない(すべきでない)重要な問題なので、ボタン型胃瘻の開発は、胃瘻チューブの革命的改良といえます。
患者のニーズに応えた製品開発がなされるため、患者と医療者と各企業が情報を共有する場となるよう、このPEGドクターズネットワークを大いに利用してほしいと思います。

「PEGへのご案内」(2001年6月30日発行)より


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