Q2-1.食形態を上げるタイミングは
A:病院によって違います。
素晴らしい事例の紹介です。
摂食嚥下リハビリテーションを専門的に実施している病院によっては、3食経口摂取まで持っていくために多職種がタイムリーに評価出来る環境が整っていれば1食毎に変えていきます。勿論、このようなことが実現できるためのスタッフ、設備、運営が前提になります。
●私が勤めていた病院ではスタッフ用にプロトコールを作って3食を7、8割食べられたら食形態を一つずつ上げるようにしています。段階的にゼリー食から嚥下障害食(ゼリーが主体でお粥もゼリー状になっていて、舌で押しつぶせるゼリー状のお粥、普通のお粥、常食)と段階的に上げていきます。これが3食、食べられたら上げていき、そこでむせたらまた戻ります。
●患者によっては「もう、こんな物は食べてはいられない」とか、飽きてしまうことがあります。同じ難易度の物をお膳に全部置くのではなくて、その人にとって簡単なもの(例えばゼリー)と、ちょっと難しい物も置きます。これが食べられたら次がいけるのでは、と云う視点にもなります。この難しい物が食べられたら、一食でも食形態を上げられると判断することもあります。
Q2-2.ゼリーはもう飽きたと言ってます。白ご飯が食べたいと言うのですが。
A:ゼリーは飽きます。ずっとお粥も飽きます。
白いご飯を食べる事が目標ですから、ゼリーは飽きたら何が食べられるかをもう一度、評価し直す必要があります。
●最近は色々な食形態の物があります。
例えばゼリーはL1、L2もL3(Q2-4嚥下ピラミッド参照)の物もあります。
色々な食形態の物や味に変えていく事は必要です。その人が食べられる物をどんどん評価していきます。
ゼリーが飽きたらゼリーの代わりにどれか一個は違う物を用意してあげた方が良いです。ずっと同じものだと誰でも飽きます。
Q2-3.刻み食にして食べ物を小さくすれば食べられるのでしょうか?
A:これによって食べられるようにはなるとは言えません。
●咀嚼とは食べ物を舌で歯の上に載せて、頬で落ちないようにして、歯で噛んだ物をまた戻して唾液と混ぜて食べ易い嚥下食(塊)を作る事です。これを食塊形成と言います。
刻んだだけでは助けにもならない。例えば、クッキーを食べる時、形のある物を食べるより粉になった物を食べる方が食べ難いです。口の中で塊を作る必要があるからです。
食べ易くするために刻むのは一口の大きさにするために刻むことはしますが、ただ単に細かく刻むのは、咀嚼回数が増えてしまうこともあるので柔らかくする事を検討します。
Q2-4.嚥下ピラミッドとは何ですか? どうやって利用するのですか?
A:患者にとって適している食形態はどの辺か、患者に出ている食形態は何か、大まかで良いので患者にとって簡単な物、難しい物等を理解できる事が大事です。嚥下ピラミッドはこのために使います。
●出てきたご飯が、嚥下ピラミッドの中でどのくらいに分類されているのかをスタッフが見て、分かっておく必要があります。嚥下ピラミッドやユニバーサル・デザイン・フードの食分類などがありますが、食事形態の基準を持っておくことが必要です。
その患者にとって適切かどうかは、全部食べ易い物だけでなく、少し難しくチャレンジする物も必要です。普通はそちらの方が美味しいし、患者はそちらの方が目をひき、食べたくなるものです。
このように食事区分の難易度はスタッフが知っておく必要があります。
●その患者はL4とかL5とかの表記の仕方をしますが、出ている食事形態が何処に当てはまるのかを見るのも大事です。
病院で出てくる食事を自然にスタッフが、このような見方する事で対応する事が大事です。
出ている物が嚥下ピラミッドで難しそうだから刻んで柔らかくしてL3をL2にする等の行動をスタッフ皆の共通する表現方法として、嚥下ピラミッドは必要です。
嚥下ピラミッドは情報を共有する意味で非常に大事です。
- (小田原市立病院 摂食・嚥下障害看護認定看護師 小澤公人)
- Q1 食べ始める時の注意を教えてください。
- (→)Q2:ゼリー食なら食べられるようになりました。食形態を上げるタイミングを教えてください。
- (→)Q2-1:食形態を上げるタイミングは
- (→)Q2-2:ゼリーはもう飽きたと言ってます。白ご飯が食べたいと言うのですが。
- (→)Q2-3:刻み食にして食べ物を小さくすれば食べられるのでしょうか?
- (→)Q2-4:嚥下ピラミッドとは何ですか? どうやって利用するのですか?
- Q2-5:認知症状の有無で、出来る訓練は違うのですか?