Q1.家の中で寝てばかりいます。食べるための体力をつけたいのですが、何から始めたら良いのでしょう?

Q1-5:座らせるとずり落ちてしまいます。食べる時の姿勢を維持するには?

A:ずりおちないように姿勢を工夫します

姿勢を保持する機能が低下すると姿勢が不安定になります。主な食事の姿勢であるいす座位では、身体を支えることができない場合、背もたれに身体をもたれさせることが多くなります。その結果、臀部が前方へ動いてずり落ちやすくなります。特に、座位保持時間が長く疲労するとその傾向が強くなります。そのため、座り方や座位姿勢の調整を行います。

ベッド上の対応

座位のために身体を起こす際には、ベッドの曲がる角度と臀部の位置が合わないと骨盤が後方へ傾き、臀部が前方へずりやすくなります。そのため、ベッドのギャッジアップの位置と骨盤の位置を合わせる必要があります(図3)。
また、下肢を伸ばしている状態では、骨盤が後方へ傾き臀部がずれやすくなります。そのため、膝下に枕を入れて膝を曲げて下肢の筋肉をゆるめることにより臀部のずれを防ぎます。場合によってはアグラをかくことも有効になります。
上半身を安定させるためには上肢を支えることが有効になります。例えば、ベッドの上にテーブルを置き、その上に上肢を乗せることで姿勢が安定します。特に上肢に麻痺のある場合は、麻痺側上肢をテーブルにのせることが姿勢の安定には有効になります。また、ベッド上は通常除圧のためのマットがあり、身体を支える面が軟らかく座位姿勢が不安定になり易い状況です。可能であれば、車いすやいす座位が望ましくなります。

図3 ベッド位置と姿勢の関係
図3 ベッド位置と姿勢の関係
ギャッジアップする際、ベッドの曲がる位置と対象者の骨盤の位置を合わせる(A)
曲がる位置が骨盤より頭側に位置すると身体を起こす際に身体がずれやすくなる(B)

車いす上での工夫

車いすは対象者の身体寸法や身体機能に合わせて選択する必要があります。対象者の身体寸法と車いすの大きさが合わない時には姿勢が崩れやすくなります。介護保険利用者の場合、車いすはレンタルが可能です。最近はレンタルでも様々な種類や寸法が選択できます。車いすが合ってないと感じた場合には、専門家に相談することをお勧めします。
車いすには原則クッションを使います。特に高齢者では臀部の軟部組織が減り、骨が突出してくる場合があります。そのため長く座ろうとすると臀部に痛みが生じます。この痛みが姿勢を崩す原因になります。自分で姿勢を変えたりできる方は座布団のような物でも対応できる場合もありますが、除圧が可能なクッションを選択することが望ましいです。 また、クッションに円座を使う場合もみられますが、円坐は姿勢が不安定になりやすいためにおすすめできません。
臀部が前方へずりおちないためには、車いすの座り方や姿勢調整が必要になります。 車いすの座り方では、可能な範囲で臀部を深く(奥に)座らせることが必要です。浅く座ると骨盤が後傾し、いわゆる「ずりおちた姿勢」になり易いです(図4)。車いすーベッドの移乗に介助が必要な場合にはできるだけ深く座らせる介助が必要になります。

図4 車いすの座り方
図4 車いすの座り方 
臀部が浅い座り方だと、臀部が前方へずれてずっこけ姿勢になりやすくなる(A)
臀部が深めの座り方だと、臀部がずれにくい(B)

車いすの姿勢調整では、座位姿勢を安定させる必要があります。最近の車いすはレンタル品も含めて背もたれがベルクロ調整可能なタイプがあります。このタイプは、弯曲のある背骨の形状に合わせて、ベルクロの張りを調整することで、座位姿勢の安定を図ります(図5)。

図5 ベルクロ調整タイプ車椅子例
図5 ベルクロ調整タイプ車椅子例
背中の形状に合わせて、ベルクロの張りを調整し身体の安定化を図る。

また、車いす姿勢で上半身が側方へ傾きやすい場合には、テーブルを利用し上肢をテーブルの上で保持することにより身体の側方への傾きを調整することが可能な場合があります(図6)。その際は、上肢を支えられるテーブルの大きさや高さが必要であり、テーブルだけで不十分な場合は腋窩にタオル等を挟み姿勢を安定させます。

図6 テーブル例
図6 テーブル例
テーブルで上肢を支え、上半身を安定させる。

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