Q1.今は食べてはいけない、と言われていますが、また食べられるようになるために、訪問ナースでもできることはありませんか?(看護のテクニックが必要なこと)

Q1-2:実際に飲み込みしなくても、味や香りを楽しむ訓練はありませんか

A:スルメを使用した咀嚼訓練

図5
目的

咀嚼に関連した筋群の使用、咀嚼の意識化 自発的な運動の惹起、口腔器官の協調運動、咀嚼運動の惹起

使用物品

スルメ

方法

実際の咀嚼運動と同様、スルメを使用して口腔内にとり込み、左右に噛んでもらいます。スルメはソフトサキイカのようなものでなく、硬いものが推奨されています。(※文献2)

スルメを奥歯で3回噛んだ後、手を使用せずに舌で反対側の奥歯に持っていき、同じように3回ほど噛む、これを5往復ほど行います(※文献3)。手を使用せずに舌で移動することは、噛むだけでなく、口腔器官の協調運動の練習となります。

図6

スルメが口腔だけで保持できない場合は、重力を除いた条件とします。スルメの先端を支援者が平面的に支えます。スルメは握るのでなく、手掌部に置くイメージで支えます。

スルメの移動だけでなく、口腔周辺の運動も評価します。実際に舌の左右移動を直視するのは難しいですが、下顎の左右運動、赤口唇の使用程度は観察可能です。左右移動だけでなく、口腔内から口外へ送り出す課題も検討し、関連器官の多様な動きを誘導します。

覚醒していても訓練に注意が向けられないために下顎の運動が難しい場合は、咀嚼を食認知からの一連の流れとして意識してもらいます。目の前で包装から出されたスルメをちぎり、手に取って口腔へ取り込むことは、多くの知覚と運動でスルメを認識し、咀嚼という行為を関連づけます。このとき、一連の流れのなかでも、得意、不得意の知覚と運動を評価し、適時、刺激の強調や介助を行います。例えば、手指でスルメを握れても、上腕の運動障害で口腔への取り込みが困難な場合は、支援者が上肢の拳上運動のみ介助し、出来るだけ本人に取り込み動作を実施してもらいます。あるいは、目の前で包装を開け、取り出すことにより視覚刺激を強調したり、嗅覚としてスルメの香りを嗅ぐ、わざと袋の音をクシャクシャとして聴覚刺激からスルメを意識するなどして、咀嚼行為を促進させます。

評価としては、スルメなどの口腔内での左右移動は、移動の時間や回数を計測できます。右から左へ何秒要するのか、あるいは30秒で何往復できるのか、などです。口腔に含んだものを口外へ送り出す課題では、体幹の傾きにより重力の影響が変化するので、これが難易度設定の目安にできます。リクライニング角度が下がるほど、重力の影響をうけるため、口外へ送り出すのは困難となります。角度調整する場合は、まず、頸部を軽度屈曲した姿勢で安定するために枕を置きます。枕だけでは頚部屈曲できない場合は、バスタオルなどで高さを調整します。注意点としては、支援者はスルメなど口腔に含むものが、誤って咽頭方向に落下させないようにします。

口腔内の刺激により唾液が多く貯まる場合、過度の唾液量の嚥下に注意しましょう。適時、唾液嚥下を促したり、ガーゼで唾液を吸収させることがポイントです。また、口腔を刺激する訓練に共通しますが、訓練前には口腔内を清潔にしましょう

質問に設定されている訪問看護師の強みの一つは、バイタルサインを常に確認できることです。SpO2や呼吸音、呼吸回数などを確認し、唾液誤嚥の有無を想定します。当訓練の唾液嚥下が安定していれば、家族による訓練など自主トレーニングの導入も検討しましょう。

嚥下困難者支援食

・ソフト食(あいーと等)   ・ムース食   ・ゼリー食品

リハビリテーション関連製品

口腔リハビリなど

 

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