Ch.4-3.食べられる口づくり①
~感覚を呼び覚ます間接訓練~


医療法人社団悠心会森田病院 言語聴覚士 宮下 剛

宮下 剛
記事公開日 2014年2月

2015年10月21日改訂

Q1.今は食べてはいけない、と言われていますが、また食べられるようになるために、訪問ナースでもできることはありませんか?(看護のテクニックが必要なこと)

Q1-1.口を開いてくれない人には、どうしたらいいですか?

A:まずは顎関節疾患の有無を判断します。

ケア以外でも開口できない場合、例えばあくびやくしゃみでも開口しない場合は顎関節の異常が疑われるので、歯科や口腔外科に相談しましょう。ここでは、顎関節が正常であると想定して、対応例を提案します。

なお、これから提案する訓練については、「Q2-1間接訓練の注意点」 もあわせてご参考ください。

対応例1

図1 リラックスした姿勢により閉口筋の過度の緊張を低下させます

リラックスした姿勢により閉口筋の過度の緊張を低下させます(①②)。身体が不安定だと筋の緊張が高まりやすいので、安定した姿勢にします。

開口目的が口腔のケアであれば、顎を軽く引くなどして、ケアが安全に行える姿勢 で安定化を図ります。

円背の場合、背臥位やリクライニング位では体幹の伸展により筋の緊張が高まる場合があります。本人の背中に合うように、クッションや座布団をベッドの間にはさみます。

頭部から肩も枕の他にバスタオルなどを入れ、支持面(接地面)を広くして安定させます。

対応例2 閉口筋に直接介入する方法

【蒸しタオル】

鼻をふさがないように左右の頬に蒸しタオルをあてます。いきなり顔にあてるのでなく、まずは利用者の手に触ってもらうこともあります。蒸しタオルは、直接頬でなく前額や瞼にあてる方がリラックスする場合もあります。

蒸しタオルは自宅の電子レンジで出来ますから重宝です。

※参考:自宅で作る蒸しタオルの作り方

【徒手で開口1.ストレッチ】
図2

徒手で行う場合は、いきなり顎を触るのでなく、肩から軽く触ります(①)触り方は指先だけでなく、手のひら全体で包むように触ります。あるいは後頭部、前額部(おでこ)から軽く触れます(②)

本人のリラックスを判断する目安として呼吸があります。胸部や腹部を観察し、触る前のゆったりとした動きになるまで手を離さずに当て続けます。

肩や前額部等を触ってもリラックスしているようなら、オトガイ部(あご)を包むように触ります(③)。最初は皮膚面だけ軽く開口方向にずらし、やはりリラックスした呼吸を待ちます。次に下顎骨そのものを開口方向に動かすように、少しずつ力を入れていきます(④)

コツはとにかくゆっくりと動かすこと、リラックスした呼吸を待つことです。逆に注意点としては、急な速度で開口することです。急速な筋の伸張は閉口反射を起こすため、閉口位が強まる恐れがあります。

【徒手で開口2.下顎押し下げ法】(※文献1)
図3 下顎押し下げ法

左右の下顎口腔前庭に指を入れ、ゆっくりと開口方向に力を入れ ます。過剰な力では痛みが出るので注意しましょう。


対応例3 本人の開口運動を促す

【本人の上肢操作を導入】
図4

他人からの刺激で緊張を高める場合は、本人に歯ブラシを把持してもらい、歯磨きを依頼します。上肢の運動障害がある事を理由に全介助と決め付けるのではなく、支援者は上肢の動きのみは介助し、歯ブラシは本人に握ってもらうなど、開口を含めた本人の主体性を期待します。 または、本人の顔と歯ブラシが写るような大きな鏡を利用し、歯磨きを意識してもらう方法もあります。実際に口唇が乾燥している事、不衛生な状態である事を言語的にも視覚的にも提示して、開口の目的に理解を求めます。

参考:リハビリテーション関連製品一覧

▲ページの最初へ戻る

あなたは医療関係者ですか?
この先のサイトで提供している情報は、医療関係者を対象としています。
一般の方や患者さんへの情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承下さい。
いいえ
はい