Ch.4-4.食べられる口作り②
~食べ物を使って直接訓練~


小田原市立病院 摂食・嚥下障害看護認定看護師 小澤公人

小澤公人
記事公開日 2014年2月

2015年10月22日改訂

Q1.食べ始める時の注意を教えてください。

Q1-1.すぐに眠ってしまいます。誤嚥しないかと不安です。

A:直ぐ眠ってしまうから駄目なのではなく、「食べられるかの評価」をする時は覚醒状態の良い時を狙います。

人によっては午前中駄目だが午後がいいとか、リハビリの後がいいとか、家族が来ている時は起きているとか、その人の生活状況の全体を見て食べられる時間だとか、食べるタイミングとか、その患者の生活習慣やリズムに合った時期を狙います。 そのためには患者の全体の生活が分からないとその人の本来持っている力の評価にならない。評価する時期を決めるには入院中だけでなく、在宅でも何時に起きて、どんな生活していたのか等の情報を得ることが必要となります。

コラム:患者が食べたい時に食べられるように

病院や施設では三度の食事が決まった時間に出てきますが、自宅での生活とはかけ離れている場合もあります。病院や施設ではみんなで食べられるという良さもありますが、それで食べる、食べないを評価されては理不尽な面があります。

感染管理でやり難い面もありますが、患者が食べたい時に食べられるように、家と同じタイミングのいい時に調整出来れば好ましい。

Q1-2.経口摂取を開始する基準は何ですか。

A:食べられる為の口作り、食べ物を使った摂食訓練(直接訓練)、食事介助をどう進めていくかについては、基準があります。

図1 経口摂取を開始する基準

看護・介護スタッフにも、経口摂取を開始する基準に照らし合わせて、条件を満たしていれば、経口摂取開始の検討をするように説明しています。

また、実際に行ってみて色々な物を食べさせたり、物を見せたりするとそこに興味が湧き、食べたいと云う意識が芽生えます。「食べたい」いう意思表示がなくても、食べ物を見せたり、持たせたり、においをかいでいただくなどの刺激を行ってみてください。

この基準が満たしている患者は摂食嚥下の基本的なフィジカル・アセスメントをした上で評価をして「食べよう」と開始します。

●むせたからと言ってすぐに「食べること」を諦めてしまうのではなく、食べ物を変えたり、姿勢を変えたりすることで食べられることがありますので、摂食・嚥下機能の評価を行い、食べられる形態、姿勢、一口量、摂取方法などの対処方法の選択までを行っていきます。

● ご飯を食べていく上でしっかりと起きている事が非常に大切です。人間は起きないと食べられません。逆に云うと食べることは頭全体を使っていますし、後頭葉で食べ物を見たことを認知し、側頭葉で記憶を呼び起こし・頭頂葉で食べ物の位置やそこまでの距離などの空間認知を行い、前頭葉で、それらの情報を統合して使って食べようと判断します。

● 更に、始めるのに当たって大切なのは、座れるかです。つまり、食べる時の姿勢が作れるかが非常に大事です。摂食・嚥下障害の程度によっては、30度リクライニングして食べた方が良い場合もありますが、まずは、その人がどんな状態の時に覚醒状態が良くて、どんな姿勢だったら食べられるかを把握します。その患者が普段している姿勢も把握しておく必要があります。

図2 経口摂取開始フローチャート
経口摂取開始フローチャート(拡大する

Q1-3.昨日まで熱がありました。訓練はしない方がいいですか?

A:全身状態が安定(バイタルサイン安定)していれば訓練します。

熱だけではなく、呼吸状態や意識状態などの観察を行い、訓練ができるかを判断します。

●多少の熱があっても熱の原因が何かを検索して、嚥下に関わる発熱でない場合は訓練します。ただ、熱が余りにも高かったり、それによって体力を消耗していたり、疲れやすくなっている場合は、訓練を疲労度の軽い時にやりますが、熱があるからという理由だけで訓練を止めることはありません。

●全身状態はその時によって大分、変わります。例えば肺炎で入ってきた患者で重篤な場合は口腔のケアのみにし、他の訓練は行いません。
末期の癌患者でも食べたいという意欲がある時には、誤嚥・窒息のリスクを評価してから、多少の熱があっても、口腔ケアや食べ物を使わない基礎訓練(間接訓練)を実施し、経口摂取を開始する場合もあります。食べたいと云う時は筋力を上げる為に熱があっても、口腔ケア・基礎訓練を実施します。

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