Ch.4-8.こんな疑問、誰に聞いたらいいの? ~状況判断と情報収集~


横浜市立大学附属市民総合医療センター
リハビリテーション科 若林秀隆

若林秀隆
記事公開日 2014年2月

2015年10月21日改定

Q1.ヒトに必要な栄養量について教えてください。

Q1-1.栄養って、普通、どのくらい必要なんですか?

A:「普通」というのを、現在の栄養状態に問題がなくて今の状態を維持すればいい場合と考えるのであれば、厚生労働省のホームページに掲載されている「日本人の食事摂取基準2015」が参考になります。性別、年齢、活動量によって、必要な栄養量は変わってきます。

また、計算式にあてはめて目安とすることもあります。

基礎エネルギー消費量(BEE)の算出

男性:66.5+13.75W+5.00H-6.76A

女性:655.1+9.56W+1.85H-4.68A

[W:体重(kg)  H:身長(cm) A:年齢]

1日エネルギー消費量(TEE)の算出

TEE=BEE×活動係数(表1)×損傷係数(表2:主要なもの一つ)

表1 活動係数の例
  • 寝たきり(意識障害、JCS2~3桁):1.0
  • 寝たきり(覚醒、JSX1桁):1.1
  • ベッド上安静:1.2
  • ベッドサイドリハビリテーション:1.2~1.4
  • ベッド外活動:1.3
  • 機能訓練室でのリハビリテーション:1.3~2.0
  • 軽労働:1.5
  • 中~重労働:1.7~2.0
表2 損傷係数の例
  • 術後3日間:手術の侵襲度によって1.1~1.8
  • 骨折:1.1~1.3
  • 褥瘡:1.1~1.6
  • 感染症:1.1~1.5
  • 熱傷:深達度と面積によって1.2~2.0

※PDNサイトの栄養アセスメント「PDN栄養管理プログラム」で必要な栄養量が分かります。

Q1-2:「低栄養」と判断された場合は、普通より多く栄養を摂ればいいのですか?

A:一概にそうとは言えません。

低栄養の原因は大きく分けると、単純に食べる量が少ない飢餓、急に熱が出た時のような急性炎症、癌や慢性呼吸不全などの慢性炎症の三つに分類でき、対応が異なります。

①飢餓の場合

「日本人の食事摂取基準2015」に出ている数値では、現在の栄養状態を維持するだけで、栄養状態が良くなるわけではありません。基準量にプラス200~500kcal、場合によってはプラス750kcalくらいを設定することもあります。若年者では1kgの体重増加に約7,500kcal必要ですが、高齢者では8,800~22,600 kcalを必要とするという報告があります。

単に食べ物の量を増やすだけでなく、取り入れる栄養素の量を、バランス良く増やすことを考えましょう。

②急性炎症の場合

急に熱が38~40℃出ているような、急な炎症の病態の時には、食べることよりも、まずは熱を下げることが先決です。熱の原因を明らかにし、その治療をします。

このとき、全く食べないのはよくないのですが、食べすぎもむしろよくありません。食欲も無いことが多いので、無理に食べさせる必要はありません。無理に食べると、脂肪は増えても筋肉は増えず、逆に減るかもしれないという説もあるくらいです。炎症が改善したら、飢餓の場合と同じ対応で考えます1)

1)寺島秀夫,只野惣介,他:周術期を含め侵襲下におけるエネルギー投与に関する理論的考え方~既存のエネルギー投与量算定法からの脱却~.静脈経腸栄養2009; 24: 1027-1043.

③癌・慢性炎症の場合

飢餓の場合同様、必要量は少し多めに設定することもあります。魚の油に多く含まれるエイコサペンタエン酸が、慢性炎症の改善に有効な可能性があります。

ただし、終末期(ターミナル)の場合には、必要量を少なく設定するほうが、浮腫や喘鳴の悪化によるQOLの低下を予防できることがあります2、3)

2)キーワードでわかる臨床栄養 がん悪液質の治療

3)日本緩和医療学会 終末期がん患者に対する輸液治療のガイドライン

<まとめ>

  • 低栄養も過栄養も、様々な疾患を引き起す要因となりますので、個々の状態に会わせ、適正な栄養摂取基準を定める必要があります。
  • 食欲がなくても栄養を摂らなくていい場合と、摂らなければいけない場合、その見極めが重要です。

参考:

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