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Chapter3 静脈栄養
2.中心静脈栄養法(TPN)
4.皮下埋め込み式CVポートとその留置法


大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター 
栄養ディバイス未来医工学共同研究部門  井上善文

井上善文
記事公開日 2012年11月27日
2015年10月26日版

1.皮下埋め込み式CVポートとは

まずは、呼称についての統一が必要な器具である。ここでは「CVポート」と呼称することにする。

CVポートとは、皮下に埋め込まれる「ポート」と、これに接続して血管内に留置するカテーテルから構成されている。ここで呼称が問題となるのであるが、図1に示すCVポートの「ポート」自体が呼称となっているので、構造の説明が難しいことになる。英語では、totally implantable central venous access deviceという用語もあり、CVADという略語を用いると理解しやすい。しかし、本邦においては、とにかく「ポート」という用語が定着してしまっている。この状況を変えることは極めて難しいと思われるので、せめて「CVポート」と呼称するべきではないかと考えている。

図1 CVポートの構造
図1 CVポートの構造
CVポートは、中心静脈内に挿入するカテーテルとポートから構成されている。セプタムを貫通すると内室にヒューバー針の先端が到達するが、この内室からカテーテルを介して血管内に輸液・薬剤を投与することになる

2.CVポートの構造

ポート自体の大きさには様々なものがある。高さは8mm~13mm程度、底部の直径は2cm~3cm程度、セプタム(天井隔壁という日本語が用いられているが、あえてこの用語を使用する必要はないであろう。圧縮シリコーン製)の直径(上面全体の直径はこれより大きい)は10mm~13mm程度のものがよく使われる。ポートの断面は、ほぼ台形となっている。ポート自体の材質はポリアセタール(強度、弾性率、耐衝撃性に優れたエンジニアリングプラスチック)、シリコーン、チタンなどで構成されている。当科で現在使用しているバードX-ポートisp(図2)は、重量5.2g、高さ11.7mm、底部28.2×22.6mm、セプタム径12.7mm、ポートの内室(chamber)容量0.3mLのもので、4ケ所、固定用の穴が空いている(実際にはシリコーンで覆われている)。カテーテルはポリウレタン製、外径6.0Fr(2mm)、内径1.3mmである。セプタムの耐用穿刺回数は、22ゲージのヒューバー(Huber)針で万遍なく穿刺した場合に2,000回とされている。

図2 バードX-ポートisp
図2 バードX-ポートisp
ポートには4ケ所、縫合固定用の穴が空いているが、ポートが皮下ポケット内で回転しないように2ケ所を縫合固定することにしている。

3.CVポート専用穿刺針

CVポートは、セプタムを針で刺してポートの内室に接続しているカテーテル内に輸液を注入することによって使用する。セプタムは圧縮シリコーンゴムで構成されているため、針で穿刺するたびにシリコーンが削り取られることになる。通常の針では、シリコーンゴムが削られるコアリング(coring)という現象が起こるが、これを最小限に抑えようとする発想で作成された、ヒューバー針(図3)を使わなくてはならない。

図3 ヒューバー針
図3 ヒューバー針
通常の針(A)とヒューバー針(B)は針先の構造が明らかに異なる。針を刺入する場合のセプタムのシリコーンを削りとる量が少ないような工夫が施されているのがヒューバー針である。針を刺入し、固定する必要があるため、左図のように翼付き延長チューブが装着されている。

輸液・薬剤投与中の針の固定のため、さまざまな形の固定器具(多くは翼状)と延長チューブが取り付けられている。また、近年、針刺し防止のための工夫が施されたヒューバー針が広く用いられるようになっている(図4)。

図4 針刺し防止機構付きヒューバー針
図4 針刺し防止機構付きヒューバー針
抜去時、針の先端がプラスチックで覆われて針刺しが起こらない機構になっている。種々の工夫が施された製品が販売されている。医療従事者や介護者の針刺しを防止するために有用である。

4.CVポート留置の適応

CVポートの適応は、もともとは長期間の静脈栄養が必要な症例に限られていた。特に、年余にわたる静脈栄養が必要な短腸症候群やクローン病などの良性疾患で、夜間のみで一日に必要な栄養輸液を投与する周期的輸液法(cyclic TPN)を実施している症例が最もよい適応であった。しかし、FOLFOX療法を始めとする化学療法を実施するために使用されることが多くなり、その適応は大きく拡大されている。

CVポートの特徴として、間歇的あるいは周期的な使用に際して、使用しない期間には体外部分がないカテーテルであるため、完全にカテーテル管理から開放される、という利点がある。従って、持続的ではない、静脈栄養、化学療法、種々の薬剤投与がよい適応となる。

しかしながら、このような適応拡大によってCVポート自体の適切な使用方法が理解されないまま、安易に使用されるようになり、さまざまな合併症が発生していることが危惧される。化学療法目的に留置されたCVポートを、食事摂取量が減少した場合に、「ついでに」静脈栄養のために使用する、という安易な使用は、厳に慎むべきで、輸液ラインを始めとする無菌的管理を徹底した上でCVポートは使用されなければならない。

5.CVポート留置方法

CVポートの留置部位としては、前胸部と上腕が主なものである。前腕部に留置する方法もあるが、カテーテルが2関節(肘関節、肩関節)にわたって留置されるため、腕の動きによるカテーテル先端の移動が大きい、前腕部はポートの隆起が目立つ、などの理由で、採用していない。 CVポートは、手術室において、無菌的環境において留置しなければならない。高度バリアプレコーションも標準的に実施する。抗菌薬の使用についてのガイドラインはないが、筆者はこの手技を小手術と考えて術前に1回、抗菌薬を投与することにしている。

5.1 前胸部ポート(図5

一般的なポート留置部位である。鎖骨下穿刺、内頸静脈穿刺、橈側皮静脈切開、外頸(内頸、顔面)静脈切開などの方法でカテーテルを挿入し、前胸部にポートを留置する。ポートの留置部も、在宅静脈栄養法において患者自身が針を刺入して管理する場合と、患者家族や介護者、医療者が管理する場合では異なる。

図5-1 前胸部ポート(本人以外が針刺しなどの管理を行う場合のポートの位置) 図5-2 前胸部ポート(本人が針刺しを行う場合のポートの位置)
図5 前胸部ポート
左図は、本人以外が針刺しなどの管理を行う場合のポートの位置。鎖骨下部の前胸部にポートを埋め込む。カテーテルは橈側皮静脈切開で挿入されている。
右図は、本人が針刺しを行う場合のポートの位置。座った状態で、自分の目で見てポートの位置および針を刺入することができる位置にポートを埋め込まなければならない。

(a)鎖骨下穿刺:鎖骨と第一肋骨の間で持続的にカテーテルが圧迫されて(pinch off)断裂する(catheter fracture)危険があるため、通常よりも外側から穿刺することが薦められている。最近はエコーガイド下で腋窩静脈を穿刺するようにしている施設が増加しつつある。手順は、①局所麻酔下に鎖骨下静脈を穿刺し、ガイドワイヤーを挿入する、②刺入部皮膚を5~10mmほど切開し、③ダイレーターとシースをガイドワイヤーに沿わせて血管内に挿入する。④ガイドワイヤーとダイレーターを抜去し、血管内に残したシース内にカテーテルを挿入する。⑤レントゲン透視下でカテーテル先端位置を確認する。⑥前胸部に皮下ポケットを作成し、皮下トンネルを介してカテーテルとポートを接続する。⑦ポートを2針、皮下脂肪組織あるいは大胸筋筋膜に縫合固定する。⑧皮下組織、および皮膚縫合を行う。カテーテルが屈曲しないよう、必ず血液の逆流を確認しておくことが重要である。

(b)内頸静脈・外頸静脈穿刺、切開:手順は鎖骨下穿刺と同じである。重要なのは皮下トンネルの作成方向、カテーテルの走行で、カテーテルが屈曲しないよう、皮下トンネルを頸部の外側または内側方向へ作成する。外頸静脈切開でカテーテルを挿入する場合も同様で、皮下トンネルの作成方向が極めて重要である。

(c)静脈切開:橈側皮静脈は上腕の橈側を走行して三角筋胸筋溝(deltopectoral groove)を通り、鎖骨胸筋三角を経由して鎖骨下静脈に合流する。三角筋胸筋溝部分を切開し、静脈を露出する。この後、静脈壁を切開してカテーテルを挿入し、先端位置をレントゲン透視下に確認し、カテーテルを固定する。皮下トンネル、皮下ポケットを作成してポートとカテーテルを接続する。橈側皮静脈が細い、などの問題がある場合には、外頸静脈切開に変更することもある。

5.2 上腕ポート(図6

ポートを埋め込む位置が重要で、筆者は上腕外側に埋め込む方法を開発して実施している。女性では皮下脂肪が豊富なため、ポートの隆起が目立たないという利点がある。前胸部に埋め込むことに抵抗がある女性では非常によい適応である。上腕のほぼ中央でエコーガイド下穿刺または静脈切開法にて尺側皮静脈または上腕静脈からカテーテルを挿入する。レントゲン透視下で先端位置を確認する。上腕外側に皮下ポケットを作成する。皮下トンネルは、カテーテル挿入部からU字型に作成するのがコツである。

図6 上腕ポート
図6 上腕ポート
上腕の内側で尺側皮静脈または上腕静脈からカテーテルを中心静脈内まで挿入し、U字型の皮下トンネルを作成し、上腕外側に作成した皮下ポケット内にポートを埋め込む。女性では皮下脂肪組織が厚いので、ポートの隆起が目立たないという利点がある。

6.CVポート使用方法

CVポート使用期間中、最も注意すべき合併症は、カテーテル関連血流感染症(catheter-related bloodstream infection: CRBSI)である。ポートは感染しないという考えの下に無菌的管理が徹底できていない場合があるが、容易に感染する。静脈栄養を行う場合は、特に無菌的管理を徹底させなければならない。

  1. 輸液は薬剤部において無菌調製しなければならない。混注して投与する薬剤は可能な限り少なくする。病棟において種々の薬剤を混合することは汚染の機会を増やすことになる。
  2. 輸液ラインは一体型を用いる。筆者は、HPNを実施する場合にはインラインフィルター、フローチェッカー、側注用Y字管が一体化した輸液ラインを用いている(図7)。これは、携帯用輸液ポンプ専用の輸液ラインとして、在宅静脈栄養用に開発されたものである。
  3. 図7 CVポートを用いて在宅静脈栄養を実施する場合の輸液ライン
    図7 CVポートを用いて在宅静脈栄養を実施する場合の輸液ライン
    フローチェッカー、インラインフィルター、側注用Y字管が組み込まれた一体型輸液ラインの先端にヒューバー針を接続して用いる。周期的輸液法を行う場合、ヒューバー針の延長チューブをアイプラグで蓋をし、輸液ラインの先端に接続したアイセットを用いて接続する場合もある。
  4. できるだけ接続部の数を少なくすべきで、三方活栓は組み込んではいけない。できるだけ側注の機会も減らすべきである。安易なニードルレスシステムの使用も、逆に側注の機会を増やすことになって感染の危険が高くなる場合があることに注意すべきである。インラインフィルターの使用も推奨する。
  5. ヒューバー針と輸液ラインの接続時の汚染にも注意すべきである。輸液を満たしながら接続するのではなく、輸液を満たす前に接続するという方法が無菌的管理という面からは推奨される。
  6. ヒューバー針を刺入する場合の皮膚の消毒は、クロルヘキシジンアルコールまたはポビドンヨードを用いる。筆者は、酒精綿で軽く皮脂を除いた後、ポビドンヨードを用いて皮膚を消毒し、2分以上待ってからヒューバー針を刺入するよう指導している。
  7. セプタムに刺入したヒューバー針は、絆創膏で固定してからドレッシングで被覆する。さらに、輸液ライン自体も固定して事故抜去が起こらないような工夫をする。
  8. 輸液方法は、24時間持続投与と、一定時間(多くは夜間睡眠中)に必要輸液量を投与する周期的投与に分けられる。24時間持続投与の方が管理としては簡便になるが、一定期間、患者を輸液ラインからも開放するというQOLを考慮した場合には、周期的投与の方が有利である。CVポートの利点は周期的投与において生かされる。長期間、持続的投与を行う場合は、在宅においても、ブロビアックカテーテルやヒックマンカテーテルを選択するべきである。
  9. カテーテルロックは、プレフィルドシリンジのヘパリン加生理食塩水(100単位/mL)を用いる。ヘパリン加生理食塩水を側注用Y字管から10mLを注入し、陽圧をかけた状態でヒューバー針を抜去する。
  10. ヒューバー針抜去後は、圧迫して止血した後、ドレッシングを貼付する。数時間以内に入浴する場合にはフィルム型ドレッシングを貼付する。

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