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Chapter3 静脈栄養
2.中心静脈栄養法(TPN)
5.PICCとその留置法


大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター 
栄養ディバイス未来医工学共同研究部門  井上善文

井上善文
記事公開日 2012年11月20日
2015年10月26日版

1.はじめに

PICC(peripherally inserted central venous catheter:末梢挿入型中心静脈カテーテル)は、肘または上腕の静脈を穿刺して上大静脈内に先端を留置させるCVCである(図1)。欧米ではCVCの第一選択となっている。肘から挿入する場合は、肘正中皮静脈や尺側皮静脈などの、見える、あるいは触知できる血管を穿刺してCVCを挿入するので、極めて安全かつ確実に静脈穿刺を行うことができる。解剖学的にも気胸、血胸などの重篤な合併症が起こりえないCVC挿入経路である。しかし、肘の静脈から挿入するPICCは、肘を曲げることによってカテーテルが屈曲して滴下不良となる、静脈炎の発生頻度が比較的高い、などの管理上の問題がある。現在は、これらの問題も解決できる方法として、上腕の静脈を穿刺して挿入する上腕PICC法を実施している。

図1 PICC
図1 PICC
肘または上腕の静脈を穿刺して上大静脈まで挿入する。挿入時の安全性は極めて高く、患者の恐怖心も軽減できるという利点がある。挿入部位としては、肘から挿入した場合には肘の屈曲による滴下不良、静脈炎の発生頻度が高いという問題があることを考慮すると、上腕からの挿入の方が有利である。

2.PICC挿入の適応

上腕PICCを導入して以来、鎖骨下穿刺によるCVC挿入はほとんど行っていない。重症症例に対してはエコーガイド下の内頚静脈穿刺法によってdouble/triple lumen catheterを挿入して管理し、安定すればできるだけ早い時期にPICCに変更することにしている。

PICC挿入の適応は、通常の胸部や頚部からのCVC挿入の適応と同様で、TPNの実施、血管作動性薬剤・化学療法剤などの刺激性薬剤の投与、末梢静脈路の確保が困難な場合、などである。ただし、Groshong catheterは先端がオープンではないためCVPは測定することができない。CVP測定が必要な病態の症例に対しては、エコーガイド下の内頚静脈穿刺でdouble/triple lumen catheterを挿入している。

禁忌となる状態は、胸部・頚部からのCVC挿入よりも明らかに少ない。特に、人工呼吸管理、呼吸不全、胸郭の変形や胸部手術の既往などは胸部・頚部からのCVC挿入のリスクファクターであるが、PICCではそうではない。安静が保てない、体位がとれない、出血傾向を有する症例以外は、PICC挿入の禁忌とはしていない。

3.筆者が用いているPICCとその特徴

筆者が用いているPICCはBARD社製Groshong® catheter(グローションカテーテル:外径 4 French、全長 60 cm)である(図2)。挿入長の調節は体外部分を切断することによって行う。材質はシリコーンで、生体反応が弱く、柔軟である。先端がround tipになっているために挿入時の血管内皮の損傷が少ないだけでなく、留置期間中にも血管壁への刺激が少ない。最大の特徴は先端近くに圧に反応するスリット状のバルブを有することである。輸液投与時には陽圧によりバルブが外側へ開き、血液採取時には陰圧によりバルブが内側へ開く、という機構を有している。輸液を投与しない期間にはバルブは閉鎖状態となり、通常の中心静脈圧の範囲内ではカテーテル内に血液が逆流することはない。従ってカテーテルを使用しない期間にもカテーテル内に血液が逆流して閉塞することはない。また、トラブルにより輸液ラインの接続がはずれても血液の逆流や空気塞栓の危険がない。但し、長期間になるとバルブの機能が低下することがあるので注意すべきである。

図2 グローションカテーテルNXT
図2 グローションカテーテルNXT(製品詳細
カテーテル、固定器具(スーチャーウィング)、カテーテルコネクター、スタットロックから構成されている。カテーテル先端はスリット状のバルブ構造となっている。

穿刺用エコー装置は、血管アクセス用超音波診断装置、SITE RITE 5(サイトライト5)を用いている(図3)。目標とする静脈の深さに適合するニードルガイドを用いて穿刺する。エコーによる静脈の同定は容易で、プローブで軽く圧迫することにより静脈が虚脱するという所見で判断することができる。動脈はプローブで圧迫しても虚脱することなく、また、拍動を認めるため、容易に鑑別することができる。

図3 血管アクセス用超音波診断装置、サイトライト5を用いた静脈穿刺
図3 血管アクセス用超音波診断装置、サイトライト5を用いた静脈穿刺
プローブで圧迫することにより、静脈と動脈の鑑別は容易である。プローブで圧迫することにより静脈は虚脱するが、動脈は虚脱せず、拍動を確認することができる。PICC挿入は、CRBSI予防のため、高度バリアプレコーションで実施する。

穿刺はSeldinger法で行う。末梢静脈穿刺で用いる20ゲージ針で穿刺し、ガイドワイヤーを挿入し、ピールアウェイイントロデユーサーを用いる方法である。

4.穿刺およびPICC挿入手順

挿入は病室または病棟の処置室において施行している。可能であるなら、X線透視が可能な部屋で施行し、先端位置異常という合併症を予防したいところである。エコーを用いる手技であるので、できるだけ広いスペースのとれる場所で実施すべきである。頚部・胸部におけるCVC挿入と同様、高度バリアプレコーションを採用した清潔操作で行う。超音波プローブを安定して固定するため、椅子に座って施行している。

  1. 体位:上腕を外転させた体位が望ましい(図4)。
  2. 図4 エコーガイド下、上腕PICC挿入時の体位
    図4 エコーガイド下、上腕PICC挿入時の体位
    肩関節を外転させた姿勢が穿刺時の体位として適切であり、この体位が確保できると内頚静脈への誤挿入の頻度が低くなる。カテーテル挿入時には、内頸静脈への誤挿入予防のために、顔を穿刺側に向け、顎を同側の肩にくっつけさせる。
  3. 穿刺部位の決定:上腕を駆血し、エコーで静脈の走行、太さを確認する。穿刺する静脈を決定したら、深さを測定し、使用するニードルガイドを決定する。穿刺部位から同側の鎖骨頭までの距離+鎖骨頭から第3肋間までの距離を計測してカテーテル挿入長とする。
  4. 穿刺部位を中心にポビドンヨードで消毒する。ほぼ全周、肘まで消毒する。
  5. プローブ先端にエコーゼリーを塗布し、清潔なプローブカバーを装着する。
  6. 上腕を駆血し、エコーゼリーを塗布してプローブで穿刺する静脈の位置を確認する。
  7. ニードルガイドをプローブに装着し、穿刺針をニードルガイドに嵌め込む。エコーで観察しながら静脈を穿刺し、穿刺針の外套を静脈内に挿入する。外套が確実に静脈内に挿入されていることを確認し、ガイドワイヤーを挿入する(図5)。
  8. 図5 エコーガイド下での上腕の静脈(尺側皮静脈または上腕静脈)の穿刺
    図5 エコーガイド下での上腕の静脈(尺側皮静脈または上腕静脈)の穿刺
    静脈は細いことが多いので、エコーガイド下に静脈を貫通させ、カテーテルを引きながら血液が逆流する部位でガイドワイヤ-を挿入する。ガイドワイヤーは細く柔らかいので、挿入時の微妙な感覚で挿入することになる。
  9. 局所麻酔を行い、メスで穿刺部の皮膚を1~2mm切開する。穿刺針の外套を抜去し、ガイドワイヤーに沿わせてピールアウェイイントロデューサーを挿入する(図6)。
  10. 図6 ダイレーターとシースの挿入、カテーテルの挿入
    図6 ダイレーターとシースの挿入、カテーテルの挿入
    ガイドワイヤーに沿わせてダイレーターとシースを挿入する。シースの中にカテーテルを挿入するが、下顎を穿刺部の肩にくっつけるような体位をとって内頚静脈への誤挿入を予防する。スムースに逆血することを確認する。
  11. イントロデューサーとガイドワイヤーを抜去し、グローションカテーテルを挿入する。患者には穿刺側の肩に下顎をつけるようなイメージで顔を穿刺側へ向けさせる。スムースに目的とする長さまでカテーテルを挿入できたら、血液の逆流を確かめる。陰圧をかけた状態で数秒間保持して、血液が逆流することを確認する。ピールアウェイシースを割いてカテーテルだけを血管内に残す。
  12. カテーテルを固定器具(ウィングスーチャー)に用いて縫合固定する。
  13. カテーテル内のスタイレットを抜去し、輸液ラインを接続して管理するのに都合のよい長さにカテーテルを切る。カテーテルコネクターにI-plugを装着し、生理食塩水を充填する。カテーテルコネクターとカテ ーテルを接続する。
  14. スタットロックを用いてカテーテルコネクターを固定する。図7
  15. 図7 上腕PICC挿入後の固定
    図7 上腕PICC挿入後の固定
    上腕内側でPICCを挿入し、上腕外側にカテーテルを誘導してスタットロックを用いてコネクターを固定する。カテーテル関連血流感染症予防のため、上腕PICC挿入時にI-Plug(I-system)でカテーテルのハブは閉鎖状態としてしまう。
  16. 刺入部と固定器具はポビドンヨードで消毒し、ドレッシングで被覆する。
  17. 胸部レントゲン撮影を行ってカテーテルの走行、カテーテル先端位置の確認を行う。

5.PICC挿入後の管理

PICCは、胸部や頸部から挿入したCVCに比べてCRBSIの発生頻度が低いと考えられている。しかし、この考え方は単純に受け入れるべきものではない。CRBSI発生頻度は、PICC挿入後の管理による部分が大きい。すなわち、輸液、輸液ライン、挿入部のドレッシングなどをどのように管理するかにかかっている。輸液ラインは一体型を用いる(図8)、適切な接続システムを用いる、定期的に輸液ラインおよびドレッシング交換を行う、三方活栓は用いない、側注は可能な限り行わない、などの対策を徹底的に実施しなければならない。

図8 一体型輸液ライン
図8 一体型輸液ライン
感染予防の面から、側注用Y字管(A)、インラインフィルター(B)があらかじめ組み込まれた、接続部のない一体型輸液ラインを用いる。接続部の数が少ないほど、輸液ラインを介する感染の機会が減少する。当科では、CVCの接続部はアイプラグで閉鎖し、アイセットを用いて接続する方法(C)で管理しているので、汚染の機会は極めて少ない管理システムである。

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