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Chapter3 静脈栄養
2.中心静脈栄養法(TPN)
2.12 微量元素製剤の種類と特徴


荻窪病院 薬剤科 吉見 猛

吉見 猛
記事公開日 2012年7月19日

2015年10月23日改訂

1.はじめに

微量元素の定義、各微量元素の特徴(生理作用、欠乏症、過剰症など)などは、「PDNレクチャーChapter2 4.2 微量元素製剤」、あるいは各成書を参考にしていただきこの場では割愛することとし、現在市販されている高カロリー輸液用微量元素製剤の特徴などを記載する。

2.現在市販されている高カロリー輸液用微量元素製剤

鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ヨウ素(I)の5種類の微量元素が含まれている製剤(以下、マンガン含有製剤)と、マンガンを含有しない鉄、亜鉛、銅、ヨウ素の4種類の微量元素が含まれている製剤(以下、マンガン非含有製剤)があり、アンプル製剤とシリンジ製剤の2種類がある(表1)。

なお、現在市販されているTPN基本液及びTPNキット製剤には亜鉛が含有されており、エルネオパにはマンガンを含む5種類の微量元素が含まれている。

表1 1日あたりの微量元素必要量と微量元素製剤1個あたりの含有量
1日あたりに必要とされる微量元素の量
[成人] マンガン 亜鉛 ヨウ素
AMA
(1995年)

0.18~0.91
10~50
0.77~76.9
50~5,000
0.3~5
20~300
0.1~0.55
(μmol 12~70(μg)
ASPEN
(2004年)
日常的に投与しない 1.1~1.8
60~100
38~76
2,500~5,000
4.7~7.9
300~500
-(μmol)
(μg)
日本人の食事摂取基準
(2010年)
7,000~7,500※1)
吸収率
15%
4,000※2)

吸収率
約3~5%
11,000~12,000※1)
吸収率
約30%
800~900※1)
吸収率
44~67%
130※1)(μg)

吸収率ほぼ100%
※1)成人男性の推奨量で記載  ※2)成人男性の目安量で記載
微量元素製剤1個あたりの含有量
製品名 会社名 マン
ガン
亜鉛 ヨウ素 pH 容量 形態

エレメンミック注

味の素

↓μmol
35
1950
↑μg

1
55

60
3920

5
320

1
130

4.5~6.0

2mL

エレメンミック注キット

ミネラリン注

日・武

ミネラリン
注シリンジ

エレジェクト
注シリンジ

テルモ

メドレニック

大洋

ボルビックス注

富・ヤ

ミネラミック注

東和

シザナリンN注

日新

ミネリック-5
注シリンジ

ニプロ

ボルビサール注

富・ヤ

↓μmol
35
1950
↑μg

60
3920

5
320

1
130

ミネリック-4
注シリンジ

ニプロ

エルネオパ(1L)

大塚

↓μmol
17.5
975
↑μg

0.5
27.5

30
1960

2.5
160

0.5
65

1号:約5.1

2号:約5.3

4mL

エルネオパ(1.5L)

↓μmol
26.25
1462.5
↑μg

0.75
41.25

45
2940

3.75
240

0.75
97.5

6mL

エルネオパ(2L)

↓μmol
35
1950
↑μg

1
55

60
3920

5
320

1
130

8mL
会社名==>『味の素』 味の素製薬、『日』 日本製薬、『武』 武田薬品工業、『テルモ』 テルモ、『大洋』 大洋薬品工業、『富』 富士薬品、『ヤ』 ヤクルト、『東和』 東和薬品、『日新』 日新製薬、『ニプロ』 ニプロファーマ、『大塚』 大塚製薬工場

形態==> 『ア』アンプル、『シ』シリンジ、『バ』バック製剤
上記製品すべての添加剤==> コンドロイチン硫酸エルテルナトリウム、 pH調節剤

3.微量元素の主たる排泄経路

  • :出血を除き、主として消化管粘膜の剥離・脱落に伴って便中に排泄され、皮膚、尿中、汗、毛髪、爪等にも少量排泄されると考えられる。静注用鉄剤では、殆どは体内ヘモグロビンの合成や鉄貯蔵に利用されるが、一部は尿中、爪、毛髪、糞中、汗に排泄されると考えられる1) 2)
  • マンガン:胆汁から腸管に分泌されてそのほとんどが糞便中に排泄される3)
  • 亜鉛:未吸収の亜鉛や腸管粘膜の脱落、膵液の分泌などに伴う体内亜鉛(内因性亜鉛)の糞便中への排泄によって主に行われている。尿中への亜鉛の排泄は少ない3)
  • :約85%が肝臓から胆汁を介して糞便へ、5%以下が腎層を介して尿中へ排泄される3)
  • ヨウ素:甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素、及び血漿中ヨウ素は最終的にその90%以上が尿中に排泄される3)

4.添付文書に記載されている内容4)(抜粋)

4.1 禁忌事項

【マンガン含有製剤、エルネオパ®
  1. 胆道閉塞のある患者[排泄障害により、マンガンの全血中濃度、及び銅などの微量元素の血漿中濃度を上昇させるおそれがある]
  2. 本剤又は本剤配合成分に過敏症の既往歴のある患者
【マンガン非含有製剤】
  1. 胆道閉塞のある患者[排泄障害により、銅などの微量元素の血漿中濃度を上昇させるおそれがある]
  2. 本剤又は本剤配合成分に過敏症の既往歴のある患者

4.2 用法及び用量

【マンガン含有・非含有共通、エルネオパ®を除く】

通常、成人には1日2mLを高カロリー静脈栄養輸液に添加し、点滴静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する

4.3 用法及び用量に関連する使用上の注意

【マンガン含有製剤】

黄疸がある場合、又は本剤投与中にマンガンの全血中濃度の上昇が認められた場合には、マンガンが配合されていない微量元素製剤の投与を考慮すること。また、銅などの微量元素の血漿中濃度の上昇が認められた場合には、休薬、減量もしくは中止等を考慮すること

【エルネオパ®

黄疸がある場合又は本剤投与中にマンガンの全血中濃度の上昇が認められた場合及び銅などの微量元素の血漿中濃度の上昇が認められた場合には、投与を中止し、他の高カロリー輸液療法を考慮すること

【マンガン非含有製剤】

本剤投与中に銅などの微量元素の血漿中濃度の上昇が認められた場合には、休薬、減量若しくは中止等を考慮すること

4.4 使用上の注意

4.4.1 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

【マンガン含有製剤、非含有製剤、エルネオパ®
  1. 肝障害のある患者 [微量元素の血漿・全血中濃度を上昇させるおそれがある]
  2. 腎障害のある患者 [微量元素の血漿・全血中濃度を上昇させるおそれがある]

4.4.2 重要な基本的注意

【マンガン含有製剤、エルネオパ®

本剤を長期連用する場合には、以下の点に注意すること。

  1. 臨床症状の推移を十分観察したうえで、慎重に投与すること。また、必要に応じ、マンガンの全血中濃度、及びその他の微量元素の血漿中濃度を測定することが望ましい。
  2. 特に、マンガンについては、マンガン20μmol配合微量元素製剤※)の投与により全血中濃度の上昇がみられたり、脳内蓄積によって脳MRI 検査(T1強調画像)で高信号を示したり、パーキンソン様症状があらわれたとの報告がある。このような所見がみられた場合には、マンガンが配合されていない微量元素製剤の投与に切りかえる等適切な処置を行うこと

※)マンガン20μmol、鉄35μmol、亜鉛60μmol、銅5μmol、ヨウ素1μmol配合製剤。

【マンガン非含有製剤】

本剤を長期連用する場合には、以下の点に注意すること。

  1. 臨床症状の推移を十分観察したうえで、慎重に投与すること。また、必要に応じ、微量元素の血漿中濃度を測定することが望ましい。
  2. 本剤はマンガンが配合されていないため、マンガンの全血中濃度が基準値以下になるおそれがあるので、必要に応じマンガンの全血中濃度を測定し、マンガン配合微量元素製剤の投与を考慮すること

4.5 副作用

【マンガン含有製剤】
  • 0.1~5%未満:発疹、肝機能異常(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、Al-P上昇等)、血中マンガン上昇
  • 頻度不明※1):ビリルビン上昇、パーキンソン様症状

※1)マンガン20μmol配合微量元素製剤で認められた副作用

【マンガン非含有製剤】
  • 0.1~5%未満:発疹、肝機能異常(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、Al-P上昇等)
  • 頻度不明※2):発疹、ビリルビン上昇

※2)マンガン配合微量元素製剤で認められた副作用

なお、ミネラック-4注シリンジ®及びミネラック-5注シリンジ®は、いずれも副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないので、上記いずれの副作用も頻度不明となっている

【エルネオパ®
  • 0.1~5%未満:発疹、肝機能異常(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、Al-P上昇、総ビリルビンの上昇) 、血中マンガン上昇、等
  • 頻度不明:パーキンソン様症状※3)、等

※3)高カロリー輸液用微量元素製剤でみられる副作用

4.6 適用上の注意

【マンガン含有製剤、マンガン非含有製剤】

4.6.1 調整時

  1. 本剤は光により濁る場合があるので、液の性状を観察し、液が澄明でないものは使用しないこと。
  2. 本剤は直接高カロリー静脈栄養輸液に添加すること(他の注射剤との直接混合は、沈殿等の配合変化を起こすことがある)。なお、本剤とビタミン剤(B2及びC剤、配合剤)をシリンジ内で直接混合した場合、沈殿によりフィルターの目づまりが生じることがあるので、シリンジ内で混合しないこと(図1~8)。

(以下、ビタミンをVと表記する)写真は、VB2製剤、VC製剤、VB1・VB6・VB12製剤+整理食塩液、及びTPN用総合ビタミン製剤+注射用水と、マンガン含有製剤のシリンジ内の配合の様子。実際にTPN基本液などに配合していないのであくまでも参考だが、配合直後は肉眼では沈殿は認められなかったが、6時間後はVB2及び高カロリー輸液用総合ビタミン製剤と配合した場合は肉眼で沈殿が認められた。VCと配合した場合は、配合後、黒色の溶液となり沈殿の生成を確認することが困難であった。

図1 混合直後 図2 6時間後
図1 混合直後                     図2 6時間後

VB(20mg/1mL)とマンガン含有製剤(2mL)をシリンジ内で直接混合した写真。

混合直後(図1)では肉眼では沈殿は認められなかったが、6時間後(図2)では、肉眼ではっきりと沈殿を確認することができた。

図3 混合直後 図4 6時間後
図3 混合直後                     図4 6時間後

VC(100mg/1mL)とマンガン含有製剤(2mL)をシリンジ内で直接混合した写真。

混合直後(図3)から褐色に変色して肉眼での沈殿の生成の確認が困難であった。

6時間後(図4)ではほぼ黒色になり、肉眼で沈殿を確認することは困難であった。

図5 混合直後 図6 6時間後
図5 混合直後                     図6 6時間後

VB1・VB6・VB12製剤+生理食塩水液20mLとマンガン含有製剤(2mL)をシリンジ内で直接混合した写真。

混合直後(図5)、及び6時間後(図6)どちらも肉眼で沈殿を確認することができなかった。

図7 混合直後 図8 6時間後
図7 混合直後                         図8 6時間後

TPN用ビタミン製剤+注射用水20mLとマンガン含有製剤(2mL)をシリンジ内で直接混合した写真。混合直後(図7)では肉眼では沈殿は認められなかったが、6時間後(図8)では、肉眼ではっきりと沈殿を確認することができた。また、溶液の色が赤褐色から黄色に変化していた。

4.6.2 投与経路

高カロリー静脈栄養輸液に必ず添加して使用し、直接静脈内に投与しないこと。

5.その他

5.1 微量元素とビタミンの相互作用

糖質・電解質・アミノ酸のバック製剤に、微量元素製剤と総合ビタミン剤を混合調剤した後のビタミンの経時的安定性を検討した報告では、微量元素存在下ではビタミンCの含量低下が報告されている5)。エルネオパ®は、製造時の溶存酸素量を除去するとともに、高いガスバリア性を有する輸液バックを採用することで、混合調剤後のビタミンCの安定化が図られている6)

5.2 静脈用鉄製剤について

体内における静脈用鉄製剤の鉄の代謝は閉鎖性回路であり、長期の投与になると鉄過剰症を引き起こす可能性がるため、貧血のない患者への長期鉄製剤投与は常に鉄過剰症の可能性を考えておき、血清鉄のみではなく血清フェリチンの測定も鉄過剰症の予防に必要であるという報告がある7)

また、アルカリ性かつコロイド製剤なので、酸性側に移行させると混濁・沈殿がみられる、混濁・沈殿がみられなくてもコロイドが不安定になり吸収されない遊離鉄イオンが生じる、などの配合変化が起こりやすいので、側管から投与する場合は、ライン内での配合変化を避けるためメインの輸液を止めて、静脈用鉄製剤の投与前後はフラッシュするべきである。

5.3 シリンジ製剤の特徴

ガラスアンプル製剤は、アンプルカット時のガラス片の混入や、アンプルから吸引するときに手指の接触による汚染や怪我などが考えられる。プラスチックアンプル製剤でもプラスチック片の混入が報告されている8)。また、いずれも針刺し事故の危険性もある。シリンジ製剤の場合、プレフィルドシリンジおよびプレフィルドシリンジ専用ホルダーを使用することで、上記の危険性が軽減できると考える。

文献

  1. フェジン®静注40mgインタビューフォーム
  2. フェリコン®鉄静注液50mgインタビューフォーム
  3. 日本人の食事摂取基準2010年版
  4. 高カロリー輸液用微量元素製剤 各社添付文書
  5. 清水弘子ほか:新薬と臨牀J.New Rem.&Clin.57:732-740,2008
  6. 松原肇ほか:医療薬学36:10-17,2010
  7. 東海林徹:静脈経腸栄養26:1077-1083,2011
  8. 正岡康幸ほか:医療薬学37:643-648,2011

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