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Chapter1 PEG
6.合併症・トラブル 1.造設時
③腹膜炎


南奈良総合医療センター 松本昌美

松本昌美
記事公開日 2011年9月20日
2015年10月27日改訂

1.診断

腹膜炎は腹腔内臓器の穿孔や炎症などに起因する腹膜の炎症であり、PEG関連の手技および管理において最も重篤な合併症の一つである。また、第2回コンセンサスミーティング報告の「Complicationについて」の定義では、major complicationの一つとされている1)。汎発性腹膜炎を発症した際には、急速な転帰をとることが多く、緊急手術を含めた迅速な対応が必要であるため、的確な診断が重要である。

PEG造設に起因する急性腹膜炎は、消化管穿孔や腹腔内臓器損傷などにより炎症が波及して発症すると考えられる。腹痛、発熱、腹膜刺激症状や頻脈、血圧低下などの循環動態の変化など臨床所見が重要であるが、PEG患者では自覚症状が乏しいことが多く、血液・画像検査も必須である。一般に消化管穿孔の診断には、腹部単純X線やCTなどの画像検査で腹腔内遊離ガス像を認めることが有用である。しかし、PEG造設後では気腹の存在を考慮する必要があり(図1)、画像診断においては注意を要する。

図1 PEG後の気腹症例
図1 PEG後の気腹症例
PEG後24時間の腹部CT検査で胃壁外の腹腔内に遊離ガス(→)を認める。
a: 少量例(上腹部腹壁下のみ)  b: 大量例(腹部全体にガス貯留)

PEG後の気腹とは、造設時に内視鏡で送気して胃内に貯留した空気が、PEGの瘻孔から腹腔内へ漏れた結果としてみられる腹腔内遊離ガスであり、約20%から60%に合併したとの報告がある2,3)。腹膜炎を併発することなく、気腹量が少量ならばほとんど臨床的問題はない。したがって、造設後の腹膜炎の診断では、画像検査における腹腔内遊離ガスは有意な所見ではなく、脂肪織混濁などの炎症所見や腹水貯留像が有用で、白血球数増多などの血液検査所見や臨床症状を組み合わせ経時的に観察し、総合的に判断する必要がある。

2.原因

造設手技自体が原因となるケースとしては、カテーテルによる胃壁裂創や、腸管、肝臓などの他臓器損傷を合併し、それがもとで炎症が腹腔内に波及することがある。特に、結腸誤穿刺では穿刺部位から腹腔内へ便汁が漏出する症例が報告されており、注意を要する4)

一方、腹膜炎の合併は、造設時より造設後早期に発症することが多い。すなわち、PEG後瘻孔が形成されるまでに、瘻孔形成不全やカテーテル事故抜去などのため胃壁・腹壁間の乖離が生じ、胃内容物や注入した栄養剤が腹腔内へ漏れて発症することがある5,6)

3.予防

PEG患者はCompromised hostが多く、全身状態が万全でない場合が多い。したがって、腹膜炎を発症すると致命的になることもあり7)、予防を徹底することが最も重要である。腹膜炎の原因は、上述のごとく様々であり、それぞれについて対策を要する。

造設手技自体による胃壁裂創の予防には、後述の胃壁固定術を併用すること、Introducer変法ではガイドワイヤーを適正に使用すること、などがある。なお、他臓器誤穿刺の予防については他稿に譲る。

造設後瘻孔形成前に腹膜炎を発症するケースでは、胃壁・腹壁間の乖離が原因となっており、予防には胃壁と腹壁の密着が必要である。特に、極度の栄養障害症例や認知症など事故抜去のリスクがある症例では、PEGの前処置として胃壁固定術を行うことで腹膜炎の併発を予防しうる8)。胃壁固定術とは、PEGカテーテル留置部付近の胃壁と腹壁を縫合固定する手技であり (図2)、詳細は他稿に譲る。

図2 胃壁固定
図2 胃壁固定

4.対処法

急性腹膜炎に対しては、迅速な対応を要する。直ちに全身管理下に、輸液、感染対策、胃管留置による消化管減圧などを行うが、汎発性腹膜炎に進展した場合や保存的治療で改善しない場合、緊急手術が必要になることもある。

5.症例提示

著者らがPEG造設後早期合併症として経験した急性汎発性腹膜炎症例を提示する。

50歳代女性、脊髄小脳変性症。200X年Pull法でPEG造設(胃壁固定術併用なし)。術後5日目に栄養剤注入後、突然発熱、腹痛が出現、腹膜刺激症状と白血球数高値(19710/μL)を認め、また腹部CTで腹腔内遊離ガスの増量と中等量の腹水を認めた(図3)。

図3 PEG後早期に合併した汎発性腹膜炎症例
図3 PEG後早期に合併した汎発性腹膜炎症例
腹部CTで腹腔内(a:肝周囲, b:PEGカテーテル周囲)に
中等量の腹水貯留(⇒)と遊離ガス(→)を認める。

汎発性腹膜炎と診断し、緊急開腹術を施行、腹腔内洗浄ドレナージにて回復した。本症例は、瘻孔形成不全により栄養剤が腹腔内に漏出したことが原因の急性腹膜炎と考えられた。以後、著者らはPull法においても全例胃壁固定術を併用することで、同様の合併症を予防できている。

文献

  1. 髙橋美香子ほか:在宅医療と内視鏡治療 8: 60-62, 2004
  2. Gottfried E et al: Gastrointest Endosc 32: 397-399, 1986
  3. 大浦 元ほか:在宅医療と内視鏡治療 8:8-12, 2004
  4. 高村 和人ほか:広島医学53: 769-71, 2000
  5. 蟹江治郎:Gastroenterol Endosc 45: 1267-1272, 2003
  6. 鳴尾 仁。PEG手技の実際と適応。経皮内視鏡的胃瘻造設術と在宅管理、日本医学中央会(メディカル・コア)、東京、 p11-20, 1996
  7. Haslam N et al: J Parenter Enteral Nutr 20:433-4, 19968) 中澤俊郎ほか:日老医誌 37: 613-18, 2000

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