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Chapter1 PEG
6.合併症・トラブル 3.カテーテル管理
①バンパー埋没症候群


イオンタウン田崎総合診療クリニック 城本和明

城本和明
記事公開日 2011年9月20日
2024年6月24日改訂

1.バンパー埋没症候群とは

胃瘻カテーテルの内部バンパー(内部ストッパー)が胃壁瘻孔内に埋没することで生じる有害事象をバンパー埋没症候群(Buried Bumper Syndrome;以下BBSと略)と呼ぶ。

2.発症機序と原因

瘻孔部胃粘膜に内部バンパーが一定の強さ・一定の時間以上接触すると、局所の胃粘膜は血流障害を起こして脆弱化する。内部バンパーの接触圧迫が解除されない限り、胃粘膜~胃壁の破たんは確実に進行し、内部バンパーは創傷治癒機転を伴いながら胃壁瘻孔内に徐々に迷入埋没してゆくことになる(図1)。

図1 発生機序
図1 発生機序
(「PEGのトラブル A to Z」p81の図1を引用)

内外のバンパー(ストッパー)による強すぎる締め付け、ガーゼやスペーサーによる過度の固定、短すぎるシャフト長のボタン留置、腹壁厚の増加(肥満や腹水)による相対的なシャフト長の短縮化、体位や姿勢による慢性的なカテーテルの牽引などがBBSの原因となる。いずれも、内部バンパーと胃粘膜・胃壁の接触圧迫が一定時間持続することが共通の要因である。

3.特徴

BBSの初めての報告は1988年である1,2)。頻度は0.6~1.9%3)と報告により差がある。

BBSは術後早期であれ慢性期であれ、胃瘻管理のどの時期にも発生しうる。以前は慢性期に多い合併症とされてきたが、PEG施行数の増加とカテーテルキットの多様化に伴い、最近は造設後早期にも認められる4,5)図2、図3)。

図2 交換後の気腹例
図2 バンパーボタンで造設後、1週目に胃瘻瘻孔周囲に発赤・圧痛・排膿を認めた。
図2 交換後の気腹例
図3 バンパーボタンで造設後4日目に出血が出現。
   出血性胃潰瘍を認めた。 バンパー埋没の初期像と思われる。

BBSを生じるPEGカテーテルの種類としては、内部ストッパーがバンパータイプであるものが圧倒的に多いが、バルーンタイプでも生じうる6)ため注意が必要である。

ボタンタイプでは、造設時に短すぎるシャフト長のカテーテルを留置したことが原因として多い5)図2、図3)。

チューブタイプでは慢性的な外部ストッパーの締め付けが原因となる例が多い。さらに、患者の体型や日常の姿勢・体位変換によっても発生しうる。

<Pitfall①>

慢性期には、体型、姿勢、体位の変化次第でBBSが生じうることに注意。

4.分類

埋没の程度によって、「完全型」と「不完全型」に分ける。胃内腔に内部バンパーが全く確認できず、完全に瘻孔が消失したものを「完全型」、内部バンパーの一部が確認でき、かろうじて瘻孔が保たれているものを「不完全型」と呼ぶ(図4)。

図4 完全型(左)と不完全型(右)
図4 完全型(左)と不完全型(右)

5.症状

カテーテルからの血性逆流、カテーテルの可動性不良~不可、栄養剤の注入困難、瘻孔からの漏れ・逆流、瘻孔からの膿汁分泌、皮膚の発赤・腫脹・びらん、圧痛、筋性防御、皮下膿瘍、脂肪織炎、疼痛、発熱など多彩である。

もっとも客観性が高い徴候は、カテーテルの可動性の不良~不可である。埋没の進行にしたがって、カテーテルの回転と上下動に抵抗が生じてくる。

BBSが発生しても必ずしも患者が「痛み」を訴えるとは限らないことに注意する。

同時に外部ストッパーが皮膚を圧迫し、皮膚障害を併発しているケースも多い。

埋没の初期に粘膜からの出血を伴えば、カテーテルからの血性逆流で気づくこともある(図3)が、必ずしも出血を伴うとは限らない。

瘻孔が開通している限りは、栄養剤の注入困難が生じない場合もある(不完全型)。逆に注入困難が生じればバンパー埋没の程度は強いといえる(完全型)。

埋没が進行すれば創傷は漿膜、腹膜、腹壁、皮膚に及び、多彩な症状が出現することになる。

6.診断

確定診断は、内視鏡、造影、EUS、CT等で行う(図5、図6)。

図5 バンパーチューブで造設後9日目に、胃瘻周囲に腫脹と発赤が出現。
図5 バンパーチューブで造設後9日目に、胃瘻周囲に腫脹と発赤が出現。
   透視で胃壁内にバンパーを認めた。
図6 バンパーボタンで造設後5ヵ月でBBS発症。
図6 バンパーボタンで造設後5ヵ月でBBS発症。
   腹壁の脂肪織炎、膿汁排出、筋性防御、発熱、不良肉芽あり。
   栄養剤の滴下は可能であった。

<Point>

カテーテルの動きは、滑らかに「くるくる回る」、軽やかに「上下に動く」のが正常。(図7)

抵抗がある場合は、バンパー埋没を疑う。

図7 予防
図7 予防
(「PEGのトラブル A to Z」p85のイラストより引用)

7.治療処置

埋没したバンパーの除去、創部の手当て、カテーテルの再留置・再造設を行う。

(完全型の場合)

多くは経皮的に抜去可能である。オブチュレーターで内部バンパーを伸展させて抜去するが、皮膚に小切開を加えなければならない場合もある。さらに、内部バンパーと組織が固着して抜去が困難な場合は、外科的処置、腹腔鏡を用いた処置7,8)が必要となる。カテーテル除去後は、ガイドワイヤー等で瘻孔が確保できれば新たなカテーテルを再留置する(図8)。この際十分なシャフト長を維持することに留意する。瘻孔が確保できない場合はあらためて再造設を行う。

図8 瘻孔確保⇒直ちに再留置
図8 瘻孔確保⇒直ちに再留置

(不完全型の場合)

チューブタイプの場合はオブチュレーターで内部バンパーを伸展させて胃内腔に押し戻したり、内視鏡でバンパーを把持し引っ張って整復を試みる。組織の損傷や周囲の炎症が小さく、かつ、十分なシャフト長を確保できれば、整復後は同じカテーテルを再利用できる。

ボタンタイプの場合は、シャフト長にゆとりがないため、オブチュレーターで内部バンパーを伸展させて経皮的に抜去するか、内視鏡下に内部バンパーを切離回収する事が多い。内部バンパーと組織が固着している場合には、スネア、針状メス、ITナイフ等を使用して粘膜切除を行い、バンパーをフリーにした後、回収する(図9)。

図9 造設3年後に、胃瘻カテーテルが抜去出来ず交換不能となった。前回から4ヵ月と20日ぶりの交換であり、その間胃瘻カテーテルの回転は行っていなかった。
図9 造設3年後に、胃瘻カテーテルが抜去出来ず交換不能となった。
   前回から4ヵ月と20日ぶりの交換であり、その間胃瘻カテーテルの
   回転は行っていなかった。

完全型であれ不完全型であれ、重症のBBSでは瘻孔部の胃壁、腹壁、皮膚の感染、炎症を伴っている場合が多い。したがって、局所の安静とドレナージを優先し、炎症の消退を待ってカテーテルの再留置、再造設を行うことが多い(図10)。

図10・1 ワンステップボタンにて造設11日目にBBS発症。
図10・1 ワンステップボタンにて造設11日目にBBS発症。
図10・2カテーテルの再留置は急がず、創傷の手当てを優先する。
図10・2カテーテルの再留置は急がず、創傷の手当てを優先する。
図10・3 創傷の改善後にカテーテルを再留置した。
図10・3 創傷の改善後にカテーテルを再留置した。

<Pitfall②>

栄養剤の注入が可能でも油断禁物。瘻孔が少しでも開通していれば栄養剤は注入できるから。

8.予防

内部バンパーと胃粘膜との過度の接触圧迫を防止することにつきる。そのためには体表面と外部ストッパーの距離(遊び)は1センチ以上必要である。特に造設直後は胃粘膜に浮腫が生じるため、1センチ未満の遊びでは危険である。ボタン型の場合はシャフト長の調節ができないために、余裕のあるサイズのカテーテル選択が必須である。

<Advice>(図11)

図11 予防
図11 予防
(「PEGのトラブル A to Z」p35の図3を引用)

①造設時、ガーゼやスペーサーの圧迫固定はゆるめに。

②造設カテーテルキットの種類によらず、胃壁固定を併用すれば外部ストッパーの位置をゆるめに設定できる利点あり。

③特にボタン型の場合、「1センチ未満の遊び」ではシャフト長として不足する。「1~1.5センチの遊び」が適正である。

資料提供

(所属は初出当時)

伊東 徹(南薩ケアほすぴたる)、寺倉 宏嗣(熊本赤十字病院)、瀬戸山 博子(熊本労災病院)、髙橋 美香子(鶴岡協立病院)、倉 敏郎(町立長沼病院)

文献

  1. Gluck M et al. Retraction of Sacks-Vine gastrostomy tubes into the gastric wall: report of seven cases. Gastrointest Endosc 34:215,1988
  2. Shallman RW et al. Percutaneous endoscopic gastrostomy feeding tube migration and impaction in the abdominal wall. Gastrointest Endosc 34:367-8,1988
  3. Ahmet ERDİL et al.The buried bumper syndrome:The usefulness of retrieval PEG tubes in its management.The Turkish Journal of Gastroenterology 19(1):45-48,2007
  4. Khalil Q et al.  Acute buried bumper syndrome. South Med J. 103(12):1256-8,2010,Dec
  5. 小川滋彦ほか:PEGのトラブルA to Z 、PDN、東京、P34-35、2009
  6. Kim YS et al. A case of buried bumper syndrome in a patient with a balloon-tipped percutaneous endoscopic gastrostomy tube. Endoscopy, 38: E41-E42,2006
  7. P. Ballester & B. J. Ammori : Laparoscopic Removal And Replacement Of Tube Gastrostomy In The Management Of Buried Bumper Syndrome . The Internet Journal of Surgery.5(2):2004
  8. E. Leung et al. A new endoscopic technique for the buried bumper syndrome.Surgical Endoscopy 21(9):1671-1673,2007

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