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Chapter1 PEG
6.合併症・トラブル 4.皮膚
②肉芽


国立病院機構新潟病院 消化器内科医長 今里 真

今里 真
記事公開日 2011年9月20日

2015年10月21日改定

<Point>

肉芽は胃瘻カテーテルという異物があるため、想定される合併症である。しかし、汚染や出血や疼痛を伴う場合には必ず問題となる原因があり、原因別の対処で解決する事が殆どである。また肉芽形成の問題は胃瘻造設時から始まる事もあり、造設医はその点に注意すべきである。また原因別の対処法には内科、外科、皮膚科などの分野をまたぐものもあり、各科の連携も必要となる。

1.肉芽とは

生体が受けた損傷は創傷治癒機能により修復される。この修復過程は3つの同時進行する現象から成り立ち、それぞれ「肉芽形成と線維化」、「収縮」、「上皮化」である。胃瘻造設の際にみられる肉芽形成の多くは、造設時やカテーテル留置に伴う物理的刺激や感染に誘発された炎症反応が誘因となる。ちなみにカテーテル抜去後に上記の「収縮」が優先されると瘻孔はすみやかに閉鎖し、「上皮化」が優先され唇状瘻(皮膚と胃粘膜が連続する)となれば瘻孔閉鎖不全となりディスポーザブルトレパンなどの利用が必要となる1,2)。胃瘻に関連した肉芽を「何とか小さくしたい」と思う方が多いが、一般的に「健常な肉芽」ができる事は栄養状態が良く、免疫応答もできていると考える事ができる。所謂「不良肉芽」とは上皮形成を伴わない浮腫状の肉芽であり、感染や異物反応や壊死組織(消毒薬による細胞障害を含む)に起因するもので、対処法は原因の除去である。胃瘻に伴う肉芽はカテーテルという異物がある以上、全てに対処すべき性質のものではない。しかし、汚染や出血や疼痛など看過できないものは「不良肉芽」に準じて対処する事が望まれる。

<AdviceとPitfall:原因別の対処法>(表1

表1 肉芽の原因と感染の関与および対処法
 

原因

感染の関与

対処

造設時

不充分な皮膚切開

胃壁固定の締めすぎ

特にPull式で関与

充分な皮膚切開
胃壁固定の抜糸

造設後

異物反応・外力

あまり関与しない

外部ストッパーを緩める

カテーテルを垂直にする

ステロイド軟膏と圧迫

硝酸銀焼灼や外科的切除

壊死組織

関与しやすい

トレパンによる除去

カテーテルを細くする

ステロイド軟膏

関与しやすい
(真菌に注意)

真菌検査と抗真菌薬塗布

紫雲膏の塗布

2.肉芽の予防と対処法

(1)造設時の細菌感染コントロール

造設時の皮膚切開を充分にとる。誤解され易いのはカテーテルの直径が1cmの場合に皮膚切開をも1cmとしている医師が稀ではない事である。円周率を3としても皮膚切開は1.5cm必要であり、内腔の出血や浸出液や細菌をドレナージ(排泄)する意味でもT字や十字に切開をする事が推奨される。この様に周囲の組織を減張する事で充分な血流保持による細菌貪食も可能となり、細菌等の排泄効果と併せて、どの胃瘻造設法であっても創感染は起こり難くなる。結果として感染に伴う不良肉芽は生じ難くなる。Pull式の造設で口腔内細菌が創に付着する事(細菌の存在)と創感染の成立(貪食や排泄がなされずに菌が暴れる事)は別問題である。造設時の創感染に対する抗生剤投与はあくまで予防投与であり、局所感染が成立した際は皮膚切開を延長し排膿を促すか、胃壁と腹壁の固定糸を抜糸し患部の血流を増強させると良い。それによって細菌排泄効果や血液の細菌貪食効果が期待できる。抗生剤入り軟膏の塗布には感染抑制効果はあまり期待できないのみならず、耐性菌の出現部位となりうるため推奨されず、皮膚とガーゼの接着予防に使用するとしても2~3日にとどめる。

(2)異物反応の軽減

カテーテルの内部ストッパーと外部ストッパーが近すぎて、皮膚が圧迫されていないかを確認する。「クルクル」回って、1.0~1.5cm「ピコピコ」上下動する事が肝要であり、そうでなければ締め過ぎによるトラブルが皮膚のみならず胃壁側にも生じている可能性がある。「瘻孔が皮膚に対して垂直か?」については造設時の問題、胃の内腔が空か一杯かでも異なる。しかし臨床の現場ではカテーテルが皮膚に対して垂直でない場合(傾きの対側に)異物反応による肉芽増殖が起こり問題となるケースが殆どである。対処法はまず「除圧による異物反応の軽減」であり、これだけでも肉芽が縮小する事は稀ではない(図1)。

図1 外部ストッパーを緩めるだけで肉芽の発赤や滲出液が改善した(左から右)
図1 外部ストッパーを緩めるだけで肉芽の発赤や滲出液が改善した(左から右)

化粧用のパフやスポンジなどによるカテーテルの垂直化が推奨されているが、当院ではホームセンターなどで売っている手芸用の発泡ウレタンを使用している(図2)。これは厚さ1cm、広さ60cm×100cm程度で400円前後の価格であり実用的である。

図2 カテーテルを垂直化しただけで肉芽は退縮した(左から右)
図2 カテーテルを垂直化しただけで肉芽は退縮した(左から右)

なお除圧のみで肉芽が縮小しない場合はステロイド軟膏(ストロングタイプ)を患部に塗布し、上記のスポンジなどで圧迫すると数日で縮小するケースが殆どである(図3)。

図3 ステロイド軟膏塗布しスポンジ圧迫後1週間で肉芽は退縮した(左から右)
図3 ステロイド軟膏塗布しスポンジ圧迫後1週間で肉芽は退縮した(左から右)

患部にのみ塗る事、短期間にとどめることが大切であり、1週間程度で縮小傾向がみられない場合は中止する。

(3)壊死組織の除去

瘻孔内腔の場合はディスポーザブルトレパン1,2)で除去し(図4)、その後の圧迫壊死を予防する意味でもカテーテルのサイズを小さくする事が望まれる。漏れがひどいからとカテーテルのサイズを大きくすると更に瘻孔は大きくなる。また一般的に消毒薬はそれ自身が細胞障害性を持ち瘻孔の細胞にとっては不利である。外科一般の分野でも創部の消毒は治癒を阻害するため石鹸洗浄が推奨されている。胃瘻をもつ方にも入浴や石鹸洗浄が推奨されているのはこの様な理由からである。

図4 ディスポーザブルトレパンによる処置
図4 ディスポーザブルトレパンによる処置

(4)ステロイドジレンマ(真菌感染と薬剤性皮膚炎)

上記(2)で稀ならず遭遇するのが皮膚障害の悪化である。ステロイド軟膏は肉芽を縮小させるが、その作用機序は免疫反応抑制作用による。局所の免疫が抑制されると真菌(カビ)が水虫同様に繁殖するため、原則として皮膚の角質採取を予め行い真菌感染を除外する必要がある。しかしながら臨床の現場では皮膚科専門医が常勤する施設は少なく、ステロイド軟膏と抗真菌薬を混合して塗布されているケースもみられる。だが、この場合には更に塗布された薬剤による接触性皮膚炎(ただれ)及びその原因薬剤にも鑑別が必要となる。当院には皮膚科の専門医は常勤していないため疑わしい症例には紫雲膏を塗布している。紫雲膏は江戸時代に華岡青洲があみ出した和漢薬である。植物油が配合され消化液などをはじき、コーティングする事が特徴で、生薬には抗炎症作用、抗菌作用のみならず、抗真菌(カビ)作用があり3,4,5,6) オムツかぶれにも有用である。ゴム手袋を装着し体温で握り軟らかくする必要がありこれは一手間ではあるが、業務担当するコメディカルスタッフの評価でもこの和漢薬の効果は、他の塗布薬に比べ圧倒的な効果があると支持されている(図5)。注意すべきは生薬の紫根(シコン=ピオクタニン)の色調で表皮が紅色になり炎症が解り難くなる事である(石鹸洗浄でとれる)。なお紫雲膏は口内炎にも使用されるため胃ろうから多少胃内に入る事も問題にはならない。

図5 真菌感染(左)に紫雲膏を塗布し(中)、2週間で健常に上皮化した(右)
図5 真菌感染(左)に紫雲膏を塗布し(中)、2週間で健常に上皮化した(右)

(5)肉芽の外科的除去

上記で改善しない肉芽で汚染や出血や疼痛を伴う場合、硝酸銀で焼灼する方法も行われているが取扱いが煩雑(40%程度で肉芽以外の部分に付着しない様に注意し、処置後は生理食塩水で緩衝させる)であるため慣れが必要である。最近の電気メスは止血しながら切除可能なものが多く病院レベルであれば電気メスによる切除が簡単である(図6)。いずれにしても皮膚科医や外科医との連携が推奨される。瘻孔部に悪性腫瘍ができている事がまれにあるからである。

図6 電気メスで肉芽を切除したが出血はガーゼに付着したのみである。
図6 電気メスで肉芽を切除したが出血はガーゼに付着したのみである。
(電気メスはエルベ社VIO300Dのドライカットモードを使用)

文献

  1. 今里 真:(倉 敏郎、髙橋美香子:)PEGのトラブルA to Z、PDN、東京、p108-110,2009
  2. 今里 真:(合田文則:)胃ろうPEG管理のすべて、医歯薬出版株式会社、東京、p214-215,2010
  3. 尾崎幸雄ほか:薬誌110:268, 1990
  4. 田中康雄ほか:薬誌92:525,1972
  5. 田端 守ほか:薬誌95:1376,1975
  6. 小菅卓夫ほか:薬誌105:791,1985

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