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Chapter1 PEG
3.造設 1造設手技⑤胃壁固定


津山中央病院内科 平良明彦

平良明彦
記事公開日 2011年10月3日

1.胃壁固定とは

胃壁固定とは、内視鏡的胃瘻造設術(PEG)施行時の本穿刺の前に胃壁と腹壁を数ヵ所で固定する手技であり、本穿刺が安全に行え、瘻孔形成前に胃壁と腹壁とが解離することを防ぎ、より強固な瘻孔を作る目的のため行われる。現在Introducer原法及びIntroducer変法の場合は、手技上は必須となっている(同梱されている物が多い)が、Pull/Push法の場合は現在のところ胃壁固定具は同梱されておらず、使用は任意とされている。(以前の旧ダイナボット社のPush法キットではTファスナーが同梱されていた。)

第1回PEGコンセンサスミーティングでは「世界的にみると全症例に胃壁腹壁固定をするコンセンサスはない」ものの「より安全に造設を行うには必要性あり」としている1)

2.胃壁固定のメリット・デメリット

胃壁固定をPEGの本穿刺前に行うことで、造設直後の事故抜去による腹膜炎を予防できることが報告されており、柴田らの報告では3例の自己抜去例を認めたが腹膜炎は生じなかった2)。当院でも造設直後の事故抜去があったが腹膜炎は生じていない。また面での瘻孔形成が促されるため、チューブ交換時の瘻孔破壊が予防されると言われている。

Pull/Push法においてはチューブが口腔内を通過するため、どうしても創部感染が多いとされているが、バンパーによる圧迫を行わずとも瘻孔形成が可能となるため、過度な圧迫による血流障害からの瘻孔周囲炎の低減に有効である。黒山らの報告では、胃壁固定群285例と非固定群176例出の比較では瘻孔周囲炎の発生率は前者で8.1%、後者で18.8%と有意に固定群で低くなっており3)、柴田らの報告でも胃壁固定群149例と非固定117例で前者は2.0%、後者は7.7%と有意に創部感染低減に有効であったとしている2)

通常腹水貯留例はPEGの禁忌とされるが、胃壁固定併用した場合は少量の腹水の貯留であれば可能となることもあることが報告されている。Wejdaらは鮒田針での3点胃壁固定で2人の腹水貯留患者に安全にPull法で造設可能であり、またPEG直後で腹水増加から胃瘻部より腹水漏出の患者2名で、追加の胃壁固定で漏出を見なくなったとしている4)

デメリットとしては手技が煩雑となり、手技時間が延長することが指摘され、本穿刺前に複数回の穿刺があるため、出血の危険や過度な胃壁固定の締め付けによる虚血での感染が言われているものの、大きな問題は報告されてはいない。

一番のデメリットでは、胃壁固定具が同梱されていない場合、胃壁固定具は病院の持ち出しとなりコストアップする点である。鮒田式胃壁固定具の場合以前は定価12,000円と高額で普及に障害となっており、様々な自作胃壁固定が報告されている3)7)8)

表1 胃壁固定のメリット・デメリット

胃壁固定のメリット

  1. 造設後早期事故抜去時の腹膜炎予防
  2. より強固な瘻孔形成によりPEGチューブ交換時の瘻孔破壊予防
  3. Pull/Push法での瘻孔周囲炎の低減2)3)
  4. 腹水貯留での胃瘻造設が可能4)

胃壁固定のデメリット

  1. 手技の煩雑性
  2. 手技時間延長
  3. 複数回穿刺による出血、腹壁固定糸による虚血、蠕動障害
  4. Pull/Push法ではコストアップ

3.胃壁固定法

胃壁固定法には現在市販されているもので鮒田式固定法5)、Tファスナー法6)があり、コスト削減での自作法が報告されている3)7)8)

鮒田式腹壁固定法は1993年より発売されていたが、Introducer法でのキットに1998年より同梱され、手技上の安全性を高めている。昨年より改良型の腹壁固定具(鮒田2が販売されても鮒田1も継続して販売されており、実際には鮒田1の方がやっぱり使い勝手が良いと評価している術者も多いため)が追加発売されており、片手での操作も可能となり、価格も低下している(図1)。

図1 クリエートメディック社 鮒田式胃壁固定具II
図1 クリエートメディック社 鮒田式胃壁固定具II (→製品ページへ)

Tファスナーは旧ダイナボット社のPush法キットでは同梱されていたものの、同社の発売中止に伴い一時市場から供給されなくなっていたが、昨年よりボストンサイエンティフィック社よりイージータイとして発売されている(図2)。

図2 ボストンサイエンティフィック社 イージータイ
図2 ボストンサイエンティフィック社 イージータイ

自作胃壁固定法では柴田らの報告から種々の固定法が報告されてきたが、当院でも2004年より変法として自作腹壁固定を行ってきた。通常静脈留置針へナイロン糸を折りたたんで挿入する際にはなかなか困難となることが多かったが、加熱変形させたナイロン糸を滅菌使用することで挿入が簡単となり、また胃内では半月型に拡がることによりもう片方のナイロン糸の把持が容易となった9)図3~図6)。

図3 使用具、加熱した鉗子で2.0ナイロン糸を変形
図3 使用具、加熱した鉗子で2.0ナイロン糸を変形
図4 加熱変形後のループ糸は滅菌保存
図4 加熱変形後のループ糸は滅菌保存
図5 胃内で半月形にループを拡張し、他方のナイロン糸を把持
図5 胃内で半月形にループを拡張し、他方のナイロン糸を把持
図6 ループ糸を引っ張り出し、結紮し胃壁腹壁固定
図6 ループ糸を引っ張り出し、結紮し胃壁腹壁固定

4.胃壁固定の現状

鮒田の全国355人の医師へのアンケート調査では、胃壁固定が必須とされないPull/Push法での造設で46%の医師が胃壁固定を全例実施しているとし、症例を選んで実施している例を加えると77%の医師が胃壁固定を施行していた。実際にトラブルを未然に回避し得たと45%の医師がアンケートに回答している10)

世界的には胃壁固定のエビデンスはないものの、造設直後の事故抜去を経験した造設医の私見としては是非とも必要と思われ、今後学会での検討が必要と考えられる。

文献

  1. 鈴木裕 他:第1回PEGコンセンサスミーティング「より安全なPEGを目指して」.在宅医療と内視鏡治療 7:68-70. 2003
  2. 黒山信一 他:瘻孔周囲炎予防のための腹壁固定法に関する検討.在宅医療と内視鏡治療 8:18-21,2004
  3. 柴田早苗 他:経皮内視鏡的胃瘻造設術における早期合併症減少のための胃壁固定併用の有効性とコストを抑える工夫.Gastroenterol Endosc 47:2146-51,2005
  4. Wejda BU,et al. PEG placement in patients with ascites: a new approach. Gastrointest Endosc. 61:178-80. 2005
  5. 鮒田昌貴 他:経皮内視鏡的胃瘻造設術-胃壁固定法の新手技に関する報告-.Gastroenterol Endosc.33:2681.1991
  6. Wu TK, et al. New method of percutaneous gastrostomy using anchoring devices. Am J Surg. 153 : 230-2.1987
  7. 平良明彦 他:内視鏡的胃瘻造設術(PEG)における自作腹壁固定具の有用性の検討.
    Gastroenterol Endosc 47: 2002, 2005
  8. 森昭裕 他:経皮内視鏡的胃瘻造設術における新しい胃壁固定法-カテラン針固定法-の開発.Gastroenterol Endosc 49:1848-53,2007
  9. 平良明彦 :PEGの最近の動向-安全な造設及びその管理-.第17回日本消化器内視鏡学会中国支部セミナー講演要旨.79-86. 2008
  10. 鮒田昌貴 :経皮内視鏡的胃瘻造設術の胃壁固定に関する全国アンケート調査 鮒田式胃壁固定具開発から20年を経過して. 在宅医療と内視鏡治療 15:19-27,2011

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