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Chapter1 PEG
6.合併症・トラブル 1.造設時①出血


原土井病院消化器内科 久野千津子

久野千津子
記事公開日 2011年9月20日

<Point>

  1. 出血は起こりやすい合併症であるが、多くの症例では圧迫止血が可能
  2. 止血困難な症例への内視鏡的止血手技、胃壁固定などの止血手技を持っておく
  3. 造設後はカテーテルを開放して、出血の早期発見につなげる

1.診断基準

PEGが観血的手技であることから、造設時の出血(ここでいう出血は、2004年の第2回PEGコンセンサスミーティングにおいて、「出血による死亡、止血術を要する出血、輸血が必要な出血、血圧低下や頻脈を伴う出血、出血に対する補液が必要、入院期間の延長が必要な出血」と定義されている)および血腫は避けて通れない合併症である。段階別には、送気過剰によるMallory-Weiss裂創、穿刺針による対側粘膜損傷、バンパーの食道内通過に伴う裂創、カテーテル周囲粘膜の過剰裂創、カテーテル挿入部の粘膜下血腫(図1a)、瘻孔内壁からの出血(図1b)があり、その他カテーテル挿入部の皮膚表面からの出血などがある。

カテーテル挿入部の粘膜下血腫(図1a)、瘻孔内壁からの出血(図1b)

2.原因

胃壁内の血管は網状に繋がっており、血流が多いため出血の危険性は高い。栄養動脈は小弯に沿って走行する左胃動脈、大弯に沿って走行する左右の胃大網動脈の末梢である(図2)。造設時は内視鏡で観察し、胃小弯、大弯を避けて血管の少ないところから穿刺するが、穿刺部位によっては血管を損傷し、出血が生じる。

図2 胃の動脈分布
図2 胃の動脈分布3)

3.予防

PEGの対象患者は高齢者が多く、ワーファリン等の抗凝固薬を服用していることも多いため、必ず休薬後、術前に出血傾向をチェックする。

造設時はできるだけ血管を避けるように、胃体下部前壁に穿刺部位を決定する2)

4.対処法

瘻孔内壁からの出血の場合、通常は自然止血するが、内部ストッパーと外部ストッパーで瘻孔を挟む圧迫止血が有用である。但し、瘻孔周囲の圧迫が長時間にわたると、瘻孔壁が虚血のため周囲炎や瘻孔壊死に陥るため、圧迫の早期解除を忘れてはならない。

圧迫止血で不十分な場合、トロンビン散布や内視鏡的止血(HSE、クリップ、APCなど)を行う。また、胃壁固定による止血部近傍の結紮(胃壁固定糸は瘻孔の小弯側や大弯側、あるいはその両方に掛けると止血効果が大きい)、これが無効な場合には、輸血や手術(外科的結紮、外科的切除)が必要になることがある。

カテーテル周囲粘膜が大きく裂けてしまった場合(図3a)、後出血の危険性を考慮して、トロンビン散布やクリッピングなどの止血処置(図3b)を行うことが望ましい。

カテーテル周囲粘膜が大きく裂けてしまった場合(図3a)、後出血の危険性を考慮して、トロンビン散布やクリッピングなどの止血処置(図3b)を行うことが望ましい。

カテーテル挿入部の皮膚表面からの出血には、トロンビンを含ませたガーゼや止血効果のあるアルギン酸塩ドレッシング材(ソーブサン®)等による圧迫止血が有用である。

造設直後よりカテーテルを開放すること(インフォメーションドレナージ)は出血の早期発見に有用である。術後のタール便や血液検査によるチェックも不可欠である。Introducer法ではPull/Push法より出血が生じやすいので注意を要する。

文献

  1. 小川滋彦:PEGのトラブルA to Z、PEGドクターズネットワーク、東京、p14-18,58,2009
  2. 嶋尾仁:胃瘻造設(PEG)患者のケア・マニュアル改訂版、東京、p31, 2005
  3. 磨伊正義:胃・十二指腸の解剖、南山堂、東京、 p480-482, 1998

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